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仮眠から目覚めたナギは、すっきり爽快な気分だった。誰かがナギの頭をずっと優しく撫でてくれていたような気がする。
——夢か。
辺りを見回したが、シュテルンが帰ってきた形跡はない。ナギは上半身を起こすと、大きな欠伸をしながら伸びをした。
——さてと、夜も頑張って働こうっと。
朝から晩まで働いている現状は、ナギの感覚では異常だ。学生時代の友人は、飲食店でのアルバイトなら朝10時から夜23時勤務なんて当たり前だと言っていたが、ナギにはその経験はなかった。
だが慌ただしく働いていると、余計なことを考える時間が少ないのは良いなと思う。
「あー、今夜も忙しいかな……」
食堂が繁盛するのは、そこで働くナギとしては嬉しさ半分、面倒くささ半分だ。メランガの食堂利用はタダだから、どれだけ客が増えても利益が増えないということもあるが、ナギが思わずぼやいたのは、最近急激に利用者が増えているからだった。ランチもディナーもバータイムも、着実に客が増えている。
——バータイム、前みたいにセルフサービスにしてもらおうかな。やっぱりもう少し、シュテルンから目を離さないようにしなくちゃ、ダメだよね。
今のところ、ナギが出会った日からシュテルンに変わりはないように感じる。だがナギの見ていないところで、シュテルンに何が起こっているのかナギには知る術もない。生き延びるためには、シュテルンのより近くにいなければならないと、ナギは改めてそう思っていた。
——でももう少し、せめてメニューを作り終えるまでこのまま……。
1番の目的——生き延びることに集中するためには、食堂の仕事自体を辞めるべきだ。そうしてシュテルンにくっついて歩く。幸いにもお金も貯まったことだし、ナギはそれが良策だと思う。
食堂の仕事がいくら楽しくても、ラオン国が爆発してしまえば元も子もないのだ。ナギはそのことを忘れないように、時々自分自身に言い聞かせなければならなかった。
——もう少し、もう少しだけ……。
後ろ髪を引かれるような思いを抱きつつ、ナギのメニュー作りは急ピッチで進んだ。
************
「コ、コレが『すくすく背がノビルランチ』?」
「ワワ」
レシピを見つめるパムとナナの瞳がキラキラしているのを目の当たりにして、ナギはようやく肩の荷が下りた気がした。
『ビュンビュン動ける俊敏ランチ』や『スパスパ切れる知力アップランチ』、『女性にオススメ! 貧血対策ランチ』など、ナギが提案したランチメニューは全部で17個になった。
「いつも言っていることですが、あくまでも食事です。薬でもありませんし、即効性があるはずもないので、過剰な期待はしないでくださいね? 偏りなくいろんなものをバランスよく食べることが一番いいんですからね?」
「ワカタ」
「ワカタ、ワカタ」
首が取れそうなほど首を縦に振っている2人にナギは苦笑した。
「それから、『健康的なヒップランチ』ですが」
「『痔カイフク定食』カ?」
「その名前は却下です、食欲減退しそうなので。それでですね、『すくすく背がノビルランチ』と『健康的なヒップランチ』は裏メニューにしましょう」
「ウラメニュー?」
「そう。日常的に置いとくメニューじゃないから」
「ワカタ」と今度は二人ともシンプルに1回だけ頷いた。
「これで私のメニュー作成は終了です」
「ソウか」
「はい、この前お話していたように、今日で退職させてください」
メニュー作りが半ばほど進み、先が見えたところでナギは二人に退職することを伝えていた。その後すぐにナギの後任も見つかったため、明日からも食堂は平常営業だ。
ナギは後任者に一度だけ会ったが、パムとナナによく似た女の子だった。「二人の子供か」と聞いたら、「こんなオオキイ子供がイル年齢ではナイ」と言ってフハハハと笑われた。やはり二人がいくつなのか、ナギにはさっぱり想像がつかない。
「ナギ、サミシクなる」
「サミシイ」
「え?」
パムとナナ、二人からそんな言葉が聞けると思っていなかったナギは、驚いて言葉に詰まった。
「あ、あの……」
「ナギ、イイ奴。ハタラきもの」
「ノウリョクもタカい。ヤメるのモッタイナイ」
ナギの側にスタタタと駆け寄った二人に、ナギは不覚にも泣きそうになってしまった。自分の仕事に良い評価をしてもらえたことが、本当に嬉しかった。
「ゆ、有能な二人に褒めてもらって本当に嬉しいです。あの、やるべきことが無事に終わったら、また戻って来たい、です」
それはいつになるか分からない。そんな日が来るかどうかすら分からないというのに、ナギはパムとナナにそう伝えた。
「……ソウか」
「ワカタ」
このとき、パムとナナは「待っている」とも「元気で」とも言わずにナギと別れた。そのことを、このときのナギは疑問に思うことすらなかった。
——夢か。
辺りを見回したが、シュテルンが帰ってきた形跡はない。ナギは上半身を起こすと、大きな欠伸をしながら伸びをした。
——さてと、夜も頑張って働こうっと。
朝から晩まで働いている現状は、ナギの感覚では異常だ。学生時代の友人は、飲食店でのアルバイトなら朝10時から夜23時勤務なんて当たり前だと言っていたが、ナギにはその経験はなかった。
だが慌ただしく働いていると、余計なことを考える時間が少ないのは良いなと思う。
「あー、今夜も忙しいかな……」
食堂が繁盛するのは、そこで働くナギとしては嬉しさ半分、面倒くささ半分だ。メランガの食堂利用はタダだから、どれだけ客が増えても利益が増えないということもあるが、ナギが思わずぼやいたのは、最近急激に利用者が増えているからだった。ランチもディナーもバータイムも、着実に客が増えている。
——バータイム、前みたいにセルフサービスにしてもらおうかな。やっぱりもう少し、シュテルンから目を離さないようにしなくちゃ、ダメだよね。
今のところ、ナギが出会った日からシュテルンに変わりはないように感じる。だがナギの見ていないところで、シュテルンに何が起こっているのかナギには知る術もない。生き延びるためには、シュテルンのより近くにいなければならないと、ナギは改めてそう思っていた。
——でももう少し、せめてメニューを作り終えるまでこのまま……。
1番の目的——生き延びることに集中するためには、食堂の仕事自体を辞めるべきだ。そうしてシュテルンにくっついて歩く。幸いにもお金も貯まったことだし、ナギはそれが良策だと思う。
食堂の仕事がいくら楽しくても、ラオン国が爆発してしまえば元も子もないのだ。ナギはそのことを忘れないように、時々自分自身に言い聞かせなければならなかった。
——もう少し、もう少しだけ……。
後ろ髪を引かれるような思いを抱きつつ、ナギのメニュー作りは急ピッチで進んだ。
************
「コ、コレが『すくすく背がノビルランチ』?」
「ワワ」
レシピを見つめるパムとナナの瞳がキラキラしているのを目の当たりにして、ナギはようやく肩の荷が下りた気がした。
『ビュンビュン動ける俊敏ランチ』や『スパスパ切れる知力アップランチ』、『女性にオススメ! 貧血対策ランチ』など、ナギが提案したランチメニューは全部で17個になった。
「いつも言っていることですが、あくまでも食事です。薬でもありませんし、即効性があるはずもないので、過剰な期待はしないでくださいね? 偏りなくいろんなものをバランスよく食べることが一番いいんですからね?」
「ワカタ」
「ワカタ、ワカタ」
首が取れそうなほど首を縦に振っている2人にナギは苦笑した。
「それから、『健康的なヒップランチ』ですが」
「『痔カイフク定食』カ?」
「その名前は却下です、食欲減退しそうなので。それでですね、『すくすく背がノビルランチ』と『健康的なヒップランチ』は裏メニューにしましょう」
「ウラメニュー?」
「そう。日常的に置いとくメニューじゃないから」
「ワカタ」と今度は二人ともシンプルに1回だけ頷いた。
「これで私のメニュー作成は終了です」
「ソウか」
「はい、この前お話していたように、今日で退職させてください」
メニュー作りが半ばほど進み、先が見えたところでナギは二人に退職することを伝えていた。その後すぐにナギの後任も見つかったため、明日からも食堂は平常営業だ。
ナギは後任者に一度だけ会ったが、パムとナナによく似た女の子だった。「二人の子供か」と聞いたら、「こんなオオキイ子供がイル年齢ではナイ」と言ってフハハハと笑われた。やはり二人がいくつなのか、ナギにはさっぱり想像がつかない。
「ナギ、サミシクなる」
「サミシイ」
「え?」
パムとナナ、二人からそんな言葉が聞けると思っていなかったナギは、驚いて言葉に詰まった。
「あ、あの……」
「ナギ、イイ奴。ハタラきもの」
「ノウリョクもタカい。ヤメるのモッタイナイ」
ナギの側にスタタタと駆け寄った二人に、ナギは不覚にも泣きそうになってしまった。自分の仕事に良い評価をしてもらえたことが、本当に嬉しかった。
「ゆ、有能な二人に褒めてもらって本当に嬉しいです。あの、やるべきことが無事に終わったら、また戻って来たい、です」
それはいつになるか分からない。そんな日が来るかどうかすら分からないというのに、ナギはパムとナナにそう伝えた。
「……ソウか」
「ワカタ」
このとき、パムとナナは「待っている」とも「元気で」とも言わずにナギと別れた。そのことを、このときのナギは疑問に思うことすらなかった。
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