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もう1人のらっかさん
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ラオン国の使者がナギを迎えに来たのは、3日後の夜のことだった。
使者はブルとピクで、メランガからはユトとトシェがナギに付き添うことになった。シュテルンは「久しぶりに急ぎの討伐が入った」と、前日の夜に出かけたまま、まだ戻ってきていなかった。
ナギが黒のワンピースを選んだのは、ショルダーバッグの色と合わせたこともあるが、何となくメランガっぽい気がしたからでもある。だがユトはオレンジで、トシェがグレーを基調とした色合いの服だったので、まとまりがない印象だ。
ブルとピクが白の軍服なのに対し、何ともいい加減な気がしたが、ナギはそれがメランガらしい気もしてきた。
ブルの隣にいるからか、珍しくピクが静かな分、ユトとトシェの軽口がやけに響く道中だ。
「なんでわたしが、あんたなんかと一緒にラオン国くんだりまで来なきゃなんないのよ」
ドスッと鈍い音がしたのは、ユトがトシェの背中を靴底で蹴ったからだ。
ブルが目を見張ったのは、オレンジのロングTシャツにほぼ隠れていたデニムのショートパンツ、そこから伸びたユトの長い足に見惚れたからではないだろう。
「いやだなー。そうやってすぐ暴力に訴える。だから、ぼくも一緒に行くようにミナハさんに言われたんだと思うんだけど?」
トシェが呑気に話しているあいだも、ドスドスというユトの蹴りは止まらない。他国への視察という名目のためか、まるでサラリーマンのようなスーツを着ているトシェの背中にいくつもの靴跡がついてしまった。
その背中の汚れを払ってあげないと、とぼんやりと思いながらも、ナギは手を動かすことが出来なかった。
「ナギちゃん、緊張してるんですか?」
器用に背中の汚れを自身の手で払いながら、ナギを気遣うトシェに視線を上げると、それにもユトが「あんたはもうちょっと緊張しなさいよ」と噛みついた。
「えー、それはユトも同じじゃないですかー?」というトシェの不満そうな顔に、ナギの頬が少しだけ緩む。トシェとユトが、ナギを和ませようとしてくれていることに気が付いたからだ。
「ここだ」
一瞬で移動したラオン国の城内は、メランガの未来的なものとは異なり、中世ヨーロッパを思わせるものだった。
巨大なシャンデリアもステンドガラスも、女神をモチーフとした絵画も、元の世界のテレビの中で見たことがありそうな風景だとナギは思う。それらは、以前ナギがラオン国に来たときには、見られなかったものだ。
そしてブルが示した地下へと続く階段は、螺旋状に深く続いていた。
レドが多忙のため、先に落下さんに会わせると言われたナギたちは、地下へ向かって階段を下り始めた。
ブルとピクに続いて、ようやく静かになったユトとトシェを後ろに従えて歩きながら、ナギは気になったことを呟いた。
「血の匂いがする……」
ユトとトシェの応じる声がないのは、ナギが気付くよりも早く、状況を察していたからだろう。
「着いたぞ」
薄暗い地下のひんやりとした空気の中で、唐突にブルがそう言った。
——え? 着いた?
1メートル先も見えない、生臭い血の匂いのこもった部屋。たどり着いたここが、まともな部屋ではないことは明白だ。
「明かりを点けてください。これではナギちゃんには、まともに見えないですよ」
「……ゔぃ」
「え?」
部屋の奥からかすかに呻き声が聞こえた。トシェの言葉から察するに、ナギ以外には室内の様子が見えているということなのか。
ため息を吐いたのはブルだ。そうナギが思ったと同時、カチッという音とともに、次第に明るくなった照明が、室内を照らし出した。
使者はブルとピクで、メランガからはユトとトシェがナギに付き添うことになった。シュテルンは「久しぶりに急ぎの討伐が入った」と、前日の夜に出かけたまま、まだ戻ってきていなかった。
ナギが黒のワンピースを選んだのは、ショルダーバッグの色と合わせたこともあるが、何となくメランガっぽい気がしたからでもある。だがユトはオレンジで、トシェがグレーを基調とした色合いの服だったので、まとまりがない印象だ。
ブルとピクが白の軍服なのに対し、何ともいい加減な気がしたが、ナギはそれがメランガらしい気もしてきた。
ブルの隣にいるからか、珍しくピクが静かな分、ユトとトシェの軽口がやけに響く道中だ。
「なんでわたしが、あんたなんかと一緒にラオン国くんだりまで来なきゃなんないのよ」
ドスッと鈍い音がしたのは、ユトがトシェの背中を靴底で蹴ったからだ。
ブルが目を見張ったのは、オレンジのロングTシャツにほぼ隠れていたデニムのショートパンツ、そこから伸びたユトの長い足に見惚れたからではないだろう。
「いやだなー。そうやってすぐ暴力に訴える。だから、ぼくも一緒に行くようにミナハさんに言われたんだと思うんだけど?」
トシェが呑気に話しているあいだも、ドスドスというユトの蹴りは止まらない。他国への視察という名目のためか、まるでサラリーマンのようなスーツを着ているトシェの背中にいくつもの靴跡がついてしまった。
その背中の汚れを払ってあげないと、とぼんやりと思いながらも、ナギは手を動かすことが出来なかった。
「ナギちゃん、緊張してるんですか?」
器用に背中の汚れを自身の手で払いながら、ナギを気遣うトシェに視線を上げると、それにもユトが「あんたはもうちょっと緊張しなさいよ」と噛みついた。
「えー、それはユトも同じじゃないですかー?」というトシェの不満そうな顔に、ナギの頬が少しだけ緩む。トシェとユトが、ナギを和ませようとしてくれていることに気が付いたからだ。
「ここだ」
一瞬で移動したラオン国の城内は、メランガの未来的なものとは異なり、中世ヨーロッパを思わせるものだった。
巨大なシャンデリアもステンドガラスも、女神をモチーフとした絵画も、元の世界のテレビの中で見たことがありそうな風景だとナギは思う。それらは、以前ナギがラオン国に来たときには、見られなかったものだ。
そしてブルが示した地下へと続く階段は、螺旋状に深く続いていた。
レドが多忙のため、先に落下さんに会わせると言われたナギたちは、地下へ向かって階段を下り始めた。
ブルとピクに続いて、ようやく静かになったユトとトシェを後ろに従えて歩きながら、ナギは気になったことを呟いた。
「血の匂いがする……」
ユトとトシェの応じる声がないのは、ナギが気付くよりも早く、状況を察していたからだろう。
「着いたぞ」
薄暗い地下のひんやりとした空気の中で、唐突にブルがそう言った。
——え? 着いた?
1メートル先も見えない、生臭い血の匂いのこもった部屋。たどり着いたここが、まともな部屋ではないことは明白だ。
「明かりを点けてください。これではナギちゃんには、まともに見えないですよ」
「……ゔぃ」
「え?」
部屋の奥からかすかに呻き声が聞こえた。トシェの言葉から察するに、ナギ以外には室内の様子が見えているということなのか。
ため息を吐いたのはブルだ。そうナギが思ったと同時、カチッという音とともに、次第に明るくなった照明が、室内を照らし出した。
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