うり坊、浄化で少女になった

秋の叶

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教会の下宿人

北の開拓

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 夏休みの準備に必要な物として、大きな袋を真っ先に作らなくてはいけない。
 用意する。と、購入する。がイコールじゃないのが悲しい所。
 準備するには作らなくてはいけないのだよ。
 工事現場で使用するような重機で持ち上げる巨大な土嚢。あれ位のサイズの袋が大量に欲しい。
 布地が粗くてもいいから、購入しやすいものを大量に仕入れて縫わなくてはいけない。
 形は簡単だけど、大きいから縫製機が使いたくなる。
 学院に忍び込んで勝手に使うわけにもいかないので、せっせと手芸魔法で縫いますとも。

 更に個人で使用するための冷暖房スカーフを魔石と一緒に十~二十枚。
 パンツを男女共に数十組縫う。
 この前まで『付与をするだけだから私はそんなに大変じゃない』なんて言っていたのが嘘のように、驚くほどの量の仕事が積みあがった。
 いや、自分で積み上げてしまったんだけどね。

 学院帰りにソーギにいる蓮と合流し、付与の仕事をする。
 縫い物の話をしていたら、蓮が頬に手を当てて沈黙したあと嬉しい提案をしてくれた。
「しのちゃん、今後の為にもミシンを一つ作っちゃいましょうよ。しのちゃんが使う物だったら、この世界の物に合わせなくても良いでしょう?」
 良いんですか?
 本当に良いんですか?
 甘えちゃいますよ?
 ということで、ちゃっかり刺繍機能や布に合わせて糸の調子を自動で整えてくれる機能なども付けてもらい、糸の部分だけはこの世界の縫製機用に作られている糸を設置できるように仕上げてもらった。
 
 やった!やったよ!
 文明を手に入れた!
 圧倒的な作業時間の短縮になると小躍りしながら大喜びする。
「私がいるのに『ミシンを作って。』と言い出さないのが不思議だったのよ?よっぽど縫い物が好きなのかと思ったら違うんでしょう?」
 私は深ぁ~く頷く。
「作るより選びたい派です。」
「それなのに言わなかったのよね?何か理由があったの?」
 言われてみれば確かにそうだ。
 なんで頼まなかったんだろう?
 うーん?蓮が人間になったばかりで大変そうだったから?仕事が積み上がっていたから?
 でも他の物はあっさり依頼して作ってもらっていたよね?

「貴女・・・他の人が使うものは頼めるのに、自分だけが使う物を頼むのが凄く苦手なんじゃない?」
「えっ?」
 パンツも靴も自分の為だったよ?マッサージ機も自分が使いたかったし・・・。
「今回のミシンはしのちゃん専用で、今のところ他には出さないつもりでしょう?」
 うん。
 蓮はふふっと笑っていた。

 たまたまお願いするタイミングが無かったんだよ。そう言う事で納得した。


 ソーギでの作業が終わる頃、蓮と私の文字伝達魔道具に颯からメッセージが届いた。
『明日、朝から夕方まで時間をもらえないか?』
 普段の仕事以外に用事が無いので、二人揃ってOKの返事をする。
 いつも会う時は半日程度だけれど、今回はどうしたんだろうね?
 そんな話をしてその日は教会に戻る。


 翌朝、教会での付与が終わってからソーギに移動し、蓮を連れてハマのアパートへ移動する。
 そこで颯と合流して話を聞くと、ホテル建築のための資金集めを兼ねてエゾチへ行くと言い出した。

 なんですって?

 ホテルの建築で関わっている人から、北海道開拓の手が足りないと話を聞き、ある程度の道を整える事、魔獣と人の境界を設ける事、先に行く人員のための住居を整える事が颯は一気に出来る上に、報酬が良いからという事でホテル建築を少し休んで請け負う事にしたらしい。
 既に区画についてはある程度話し合われているという。

 なんというか、今回もとんでもない規模の話を持ってきたな。
 でも私、北の方に行ったことが無いよ?
 今から三人で歩いて行くの?
 そう聞いたら、私が移動出来る北限まで転移して、そこから颯の飛行魔法で飛ぶという。

 まずは転移でコーズケに移動。
 前はそこからシナノに行ったので、今回はここから日本海側の沿岸沿いを北進する。
 颯の背中におんぶして、蓮は颯と腕を組んで上空に浮き上がる。
 休憩と、私が今後転移できるように時々地面に下りるけれど、時速70㎞はありそうなスピードで音もなく飛んで行く。
 北の地域はまだ寒いし、更に上空はもっと寒いのでしっかりと保温結界を使ってます。

 お昼頃にはアチタに着いたので、一旦お昼ごはんにする。
 適当な空き地でインベントリから食べ物を出して食べる。
「戸建てやアパートを建築して引き渡すのと違って、ホテルはかかる費用が大きいなぁ。」
 苦笑いしながら颯が事情を話す。
 金欠なんですね。
「気持ちはなんとなくわかるけれど、急ぎ過ぎよ。貴方体調は大丈夫なの?過労になっていない?」
「あ、今のうちに二人の回復をしておくよ。」
 蓮が心配し始めたので、二人に回復と治癒の魔法をかける。
「おおー、なんか調子が良くなったぞ。よしっ、この後も二人を抱えて飛ぶぞ。」
 
 飛んでいる間、私は颯の背中で暇なので学院で習っている宗教の本の内容を異国語で話す事にした。
 言語理解の魔法が沸いたと聞いて、颯や蓮も今後のために覚えられたらいいとソワソワしていたからね。
 こんなに長時間暇な時間ってなかなか無いもの。
 
 アンに教えてもらったように一通り異国語で話した後に日本語で話し、また異国語で話すというのを繰り返していた。

 お昼休憩から三時間後、エゾチに到着した。
 
 教会に戻る時間まで一時間ほどしかないけれど、颯に渡されたいくつかの魔石に結界の付与をする。
 蓮は結界の魔道具を作って颯に渡す。
 颯は現地を確認して木材を抜き取り、塀を作っていた。
「俺は今週いっぱいこっちにいると思う。」
 そう言うので、頑張れと手を振ってエゾチを後にし、蓮をソーギに送って急いで魔石に付与をして教会に戻った。

 翌日、学院が終わった後に蓮の所で仕事をしてから一緒にエゾチに転移する。
 海峡を渡る船が到着するための港が出来上がっていた。
 港の奥には大きな倉庫も出来上がっている。
 颯はハマに置いていたアパートを持ち込んで寝起きしている。
 私達はまだ住んでいないからね。

 蓮が街灯の魔道具を作る傍ら、颯は幅の広い車道と歩道を作り区画整備をしている。
 私は魔石に付与をしながら、倉庫の中で縫い物をした。

 更に翌日は倉庫の奥に三階建ての集合住宅が二棟出来上がっており、一階が駐車場、二階と三階が住宅のよく見かける仕上がりになっていた。
 ただし、建物内に魔道具は照明以外入っていない。
 この照明の魔道具、前に蓮がホテル建築用にと渡していた物だった。
 追加でまた頼むんだろうなぁ。

 寒い地域なので、照明の次に優先されるのが冷暖房の魔道具だ。
 各住居に最低一つずつ設置していくので、これも蓮が頑張って作っている。
 
 一週間経過する頃には港町と、役場、周辺の農地になる土地が綺麗に出来上がっていた。
「なんというか、町づくりゲームを実地で見た気がするよ。」
 私がしみじみと言うと頷いて蓮も同意する。
「新興住宅地を作る時と変わらないぞ?」
 颯はしれっと返事をする。

 建物を解体して更地になって、そこから新しいものが出来る経緯は見た事があるけれど、大規模な住宅地や埋め立てた土地を開発する風景って滅多に見る事が出来なかった私には衝撃です。

 明日には開拓のための人員が支給された物資を持って上陸するそうです。
 え、陸地を移動していた人達ってここの着工をした時には向かってきていたという事?
 ギリギリ過ぎて冷や汗が出る。
 
 颯はこの先の地域まで道路を拡張し、塀を作って開墾する所で業務が終了するらしい。
 後日、しっかりと報酬を受け取ってほくほくしていた。

* * * * *

 エゾチに到着した俺は、しのと蓮が帰った後に塀をせっせと作っていた。
 深い堀のある塀なので、時々魔獣が堀の中に落ちる。
 人口が少ない地域は魔獣がかなり多いから、塀をしっかり作らないと人命に直結する事を実感していた。
 魔獣は魔獣で弱肉強食の世界で生命のやり取りをしているから、相手が魔獣になるか人間になるかだけの違いだ。
 縄張りを広げたり、守ろうとするのは魔獣も人間も変わらないのかもしれない。
 現代日本でも獣害と対処について意見が割れていた。
 同じ陸地に住む者同士では、どうしても避けられない問題だと思う。

 塀一つで住み分けできるなら、お互い遭遇しなくていいだろう。
 といっても、同じ地域で溢れた魔獣は海を渡って別の地域に行く事もあるから油断できないよなぁ。

 開拓第一弾の人員がエゾチに来た頃、食糧確保も兼ねて魔獣を駆除するという話になった。
 俺は穴に落ちている魔獣の場所を伝え、後は現地の人間に任せたが、駆除後に身体に違和感を覚えた。
「なんか、力が増してないか?」
 これってもしかして、間接的にだけれど討伐で経験を得たために力が増したという事になるんだろうか?
 自分を鑑定しても、いわゆるレベルとかステータス表示なんてものが出るわけではないが、基礎能力が上がったのだとすればありがたい話だ。
 まだまだしのに助けられている事が多いから、少しでも能力を上げたいと思う。



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