彷徨う亡霊は掃除をする

秋の叶

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これって地縛霊?

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 気が付けば私は路上に立っていた。
 一度も染めた事のないショートカットの髪型に、グレーのパンツスーツ、ローヒールの靴といつもの通勤スタイルだけれど、なんだかふわふわしている。
 自分の体重や重力を感じないのだ。

「あれ?バックは?」
 通勤時に愛用していた鞄が無い。
 昼休みでコンビニに行くために出てきたんだっけ?
 ポケットを確認するが、財布も無ければ通信端末も無い。

 正面から通信端末の画面を見ながら歩いてきた男性が、私の体を通過して去っていく。
 あまりの出来事に驚くと共に、一つの事実に気が付いた。
「もしかして、私って死んでいる?」


 日中の人通りが多い路上でぽつんと佇み、ぼけーっと周りを見る。
 どうしてこうなったんだろう?
 考えたところで思い出せない。
「とりあえず・・・家に帰る?」
 この体で電車に乗る事が出来るのか分からないけれど、駅に向かう。
 が、一定の所から先に進めないと判明する。
 例えていうならアレだ、ゴムのロープで体を縛られているかのように引き戻される感じ。

「じゃあ、職場に行ってみる?」
 次の候補として職場を目指したが、辿り着く事が出来なかった。

「詰んだ・・・」
 元の場所に戻り、またもやぼーっと佇む。
 私が死んだと仮定して、この状況っていわゆる地縛霊のような状態なのでは。
「その場合、どうやって成仏すればいいの?」


 自分の記憶から引っ張り出した念仏で解決する事もなく、誰かにお経をあげてもらうしかないのか?と思いつつ、そばにいる小犬と目が合う。
 そう、ここに居るのは私だけではない。
 片手で持ち上げられそうな小さな犬、たぶん犬種はヨークシャーテリアもいる。
 
 くりっくりの真ん丸な目と立派な髭に見える顔周りの毛、艶々した体毛が愛らしいヨーキーを見て話しかける。
「あなたもここから動けないの?」
 私の言葉に首を傾げる姿がかなり可愛い。
 ぷりぷりと尻尾を振って前足を上げ、抱っこしてと強請る。
 片手でヨーキーのお腹を持ち上げ、片腕に乗せて胸の前で抱える。
 お互い幽霊状態のせいか体温が感じられないけれど、ヨーキーは抱っこの状態に安心したらしい。
 
 成仏が出来ない理由を色々と考えてみたけれど、誰かを恨んでもいないし、死んだら死んだで執着したい物事もないし、別れを惜しむほど深く付き合っている人もいないし、親は悲しんでいるだろうけれどしょうがないと感じているし、自分が死んだと認識したばかりだし・・・うん?これ、本当にこのままなの?
 ぼけーっと過ごすしかないの?
 暇過ぎるでしょう!

 とりあえず、散歩も兼ねてヨーキーと共に歩き回った。
 お互い空腹や疲れを感じる事もないせいか、休むことなく歩いた。が、歩き回るほど広くなかった。
 そこで分かったのは、移動できる範囲が半径十メートルくらいと狭い事。
「移動できないものはしょうがない。暇だし、自分自身のお祓いも兼ねて掃除でもするか」
 私は周辺の道路の掃除をする事にした。
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