過介助

ともえどん

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過大

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 だったら、どうする。
「そういう、偏屈な態度を、ほんの少しでもやわらげようとは思わないのですか」
 小太りの女は、こちらを一瞥するとため息をついた。十蔵は柵に囲まれたベッドに横たわったまま、そっぽを向いた。
「かわいげのないじじいだよ、ほんと」
 女は立ち上がると、ぶつくさと呟きながら台所へと消えた。どうせ、いつもどおりのまずい飯が出てくるのだろうと、十蔵は嘆息する。五年前に脳梗塞で倒れてから、手足はおろか、口までも満足に動かすことができなくなってしまった。毎日、身の回りの世話をするために訪ねてくる女は、いわゆる雇われの介護ヘルパーであり、最初こそにこやかにあれやこれやと動いてくれたものの、半年も経つと今のようにただでさえぶさいくな顔をさらに歪めては、悪態をつくようになってしまった。姿を見せなくなった、過去に訪れていた数々のヘルパーの一員となるのも、時間の問題だろう。
 こんな身体になってしまった原因は、医者から散々とやめろと言われていた煙草と酒を毎日のように呑んでいたからだとわかってはいる。普段は強い反論を恐れて、なにも言わなかった周りの人々が、自業自得だ、と口を揃えるさまを見ると、言葉というものは随分とすごい力を持っていたのだなと、今さらながらに感心してしまう。動かぬ目の前の人もどきが、このような思案に更けているとは、誰も考えることはないのであろうが、それを態度で表明したところで、言葉では抑えることのできた悪態を更に生み出す結果となってしまっているのは、なんだか、さみしかった。
「ほら」
 細切れになった肉が、雑に口内へ突っ込まれたスプーンに乗って喉に押しつけられる。とても苦しいのだけれど、もう反射も衰えてしまっているのか、えづくことすらできない。明らかに胃までの道のりとは異なる方へなんとか咀嚼したものが下りてくる感覚はわかっているのだが、如何様にもし難かった。
 どんどん口へ入ってくる、もはや残飯と変わらぬものを胸だか腹だかわからぬところへと収めると、女は帰り支度をさっさとすませて、すっくと立ち上がると「また、きますからね」と無表情のままに出ていってしまった。
 ぱっぽー、ぱっぽー。
 頭上の鳩時計が鳴った。
 気がつくともう、正午だった。
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