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第48話
しおりを挟む今まで何度も詰め所や工房の近くを歩く事はあったが、実はこの町での外食は初めてだ。
正確にはお昼に工房長のダニーさん達と昼食をとった事はあるが、ヴィルヘルムとの外食は初めてだった。てっきり彼はあまり食事には興味がないのかと思っていたが、オレの思い違いなのかもしれない。
騎士団の行きつけだという酒場風のお店に入ると、中は活気のある定食屋のような雰囲気だった。愛想の良い女将さんがすぐに席に案内してくれた。メニューのような物はなく、その日にある材料で好みを伝えて注文をするようで、女将さんの話とヴィルヘルムの補足説明を聞きながらなんとか唐揚げと煮魚のセットを注文した。
早速運ばれてきた薄いワインのような飲み物で乾杯をすると、今回の一連の事件の打ち上げをしているような気分になり、調理をするカウンターの向こう側を期待の眼差しで眺めた。
「どうしてそんなに機嫌が良いんだ?」
いつの間にかグラスを置いたヴィルヘルムが頬杖をついてこちらを面白そうに見ている事に気が付いて、思わずキッチンに向けていた身体を正面に戻した。
「どんな料理が来るのか楽しみだろ」
「ああ、そうかイツキは食べる事が好きだからな」
「うん、まぁいや普通じゃないかな?ヴィルヘルムこそ……」
ここまで言って世話になっている自分から”外食の回数が少ない”と言うのは、彼に対してまるで不満を言っているように聞こえないだろうかと一瞬頭を過ぎったが、一度口に出してしまったからには引っ込みがつかない。
「外食に行きたがらないから、あまり食には興味がないのかと思った」
やや軌道修正を加えたオレの言葉に、目の前の男は整った顔をやや困ったような表情に崩した。
「それは……」
なにか言おうとしたヴィルヘルムとの間に大皿に乗った料理が次々と運ばれてきて、テーブルの上は一瞬で埋まってしまった。
この店の表に到着した時から胃袋を刺激する香りに強く空腹を意識していたので、美味しそうな料理を目の前に一瞬で手を合わすと手始めに目の前の煮魚から手をつけた。思えばここ数日は食事も味気なく、口の中に広がるバランスの良いスパイスの香りと魚本来の旨味が新鮮で、やはり自分で用意する食事よりも格段に美味しいと感じた。
ヴィルヘルムの傍に取り皿があったようで、受け取りながら唐揚げと野菜のソテーを盛り付けて口の中に放り込んだ。
「どれも美味い!」
硬めの根菜も出汁の味が効いていて美味しいし、面倒な揚げ物も高温でカラリと揚げられていて素人には再現出来ない味だ。
向かいのヴィルヘルムを見るとどの皿にもバランスよく手を付けているが、なにか言いた気な目でこちらを見ている事に気が付いて持っていた食器を置いた。何か苦手な物でもあったのだろうか?
「すまないイツキはもっと色々な店で食事をしたかったのかもしれないな」
「あっいやそんな事ないんだけど」
一拍置いて予想した通りの意図していない意味で言葉が伝わってしまったようで、慌てて首を振る。
「もともと結構自炊してたし、それにこっちの食材面白いから料理するのも楽しいから」
だから気にしないでくれと言うのも一層言い訳をしているようで、何と言ったら良いのかと思わず唸るとヴィルヘルムが思わずといった感じで不意に笑った。
「私はイツキの作ってくれる料理が一番美味しいと思うから、あまり外での食事に気が向かなかった」
「えっいや、そんな凝った物作ってないし……」
少し申し訳なさそうに下がった眉でヴィルヘルムに穏やかに微笑まれると、台詞が台詞なだけに新婚夫婦の定番ともいえる”君の料理が世界一”とか”毎朝君の作った味噌汁が飲みたい”というようなベタな言葉が連想されて、勝手に顔に熱が集中するのが自分でも分かった。
恥ずかしい事をサラッと言った彼にこれ以上なにか言って褒め殺しに合ったら、それこそどんな顔をして良いのか分からなくなると思いひとまず”ありがとう”とだけ答えた。
「こちらこそ、ありがとう」
それでもたまには外食も良いかもなと笑い合い、酒を求める客で店内が騒がしくなる頃には全て食べ終わり宿舎への道をのんびり歩いた。
「王都は海がないなら海鮮料理は少ないかな?」
「そうだな、肉か野菜か魚はこちらより値が張る」
店を出てからもうすぐ宿舎に着くというのにずっと食べ物の話を続けるオレと、そんなオレの何が面白いのかヴィルヘルムは要所要所で笑い出しそうになりながらオレの質問に答えてくれる。
先程オレに酒を控え目にと2杯目からはお茶を勧めてきた彼だったが、ヴィルヘルムの方こそ酔っているのではないかと思う。きっと笑い上戸だ。
いつか盛大に酔うヴィルヘルムを見てみたいが、そういえば食事会をした時に自分の方が先に酔いつぶれてしまって彼の世話になった事を思い出し、同じ量の酒を呑むのは賢明ではないようだ。
「食べ物で何処に住みたいか決まるかもしれないだろ」
海に近いなら海鮮が美味いし、内陸でも地形や気候で主食も違ってくるだろう。だからそんなに笑う事ないじゃないかと斜め後ろを歩く彼を振り返ると、思ったよりも素面のその瞳と目が合った。
「イツキは自由で良いな」
少し寂しそうに笑った彼の言葉に、今この瞬間はこうして自分と一緒にいても彼には王都での騎士としての生活や、家族や友人との繋がりもあるのだと漠然と実感した。
当たり前の話だが、もし自分が逆の立場だったとして急にそれまでの生活を全て手放して”魚が美味いから港町に住もう”とか”もっと米の美味い土地へ移ろう”なんて思い切れる人はどれだけいるだろう。
自分の発言が少し恥ずかしくなり、今のは忘れてくれとヴィルヘルムに言った。
オレにはまだ王都でヴィルヘルムとの”守護騎士の誓い”を解除してもらうという大きな仕事が残っている。それを果たすまでは彼はオレから自由になれない。
団長さんの話では今回の事件での活躍もあって、珍しく王都で全ての騎士団長が揃うらしい。それ自体でも珍しいそうだが、事件の当事者であるオレ達の報告も兼ねて国王に近い人物との謁見も決まっているそうなので、その場で誓いの解除をお願いするしかない。
事前に団長さんからある程度の事情は伝わっているそうなので、どんなお咎めがあるかは分からないが話が聞き入れられる可能性は高いそうだ。
”護るべき相手を護り切れなかった時、その責務を果たせなかった騎士の命も共に終わる”はじめてこの誓いの内容を聞いた時は、そんなものは”呪い”だと怖くもなった。
後に守護対象者から一方的に誓いを立てさせて騎士の命を握るような事は出来ないシステムであり、両者の合意がないと結ばれない契約であると分かったが、それでも言葉が通じていない時の自分の生返事がその”合意”に繋がっていたとすると、目の粗い契約条件だと思う。
「王都に着いて”守護騎士の誓い”を解いてもらったら、ヴィルヘルムも自由だよ」
面倒ばかり見てもらって悪いなと思う反面、彼にとっても少しは自分と共にした時間が楽しい物であったと思って欲しかった。
騎士である彼が強引に誓いを立てたと知った時の団長さんの反応を考えると、王都での他の騎士団長の反応も気になる所ではあるが、オレはなるべくヴィルヘルムを庇って穏便に話を進めるつもりだ。
ヴィルヘルムにとってこの交渉は憂鬱かもしれない、それでも心臓を縛る誓いと上司に怒られる事を天秤に掛ければ明らかに後者が軽い筈なので、そんなに不安そうな顔をしないでほしい。
「あの時ヴィルヘルムが助けてくれてなかったら、今オレはここに立てていないって説得するから」
だから少し安心してほしい、たまには年上らしい所も見せたくて任せてくれと笑って言った。
宿舎に着いて手早く翌日の準備と就寝の準備に取り掛かる。
もともと片付けは終わっていたのでこの家に置いて行く物と持って行く物の仕分けくらいだ。ベッドに入る頃にやっとこの家で過ごすのも最後かと思うと名残惜しい気持ちになった。
ヴィルヘルムはもしかしたら今後も遠征などあった時にこの町やこの家に立ち寄るかもしれないが、自分はどうだろうか。今更になって王都に行く事が少し不安になってきた、ここまで自分の将来が見通せない事は初めてだった。
隣のベッドから規則正しい寝息が聞こえてきて、誘われるよう来た眠気にそっと目を閉じた。
朝珍しく同じ時間に起きたオレ達はそれぞれに朝食の準備と朝の鍛錬に取り掛かった。
今日なんて1日中随分と体力を使う事が予想出来るのに、剣が宙を切る音は一定でその手に少しも加減が無い事が分かる。真面目な彼の態度を傍で見ていると心底”騎士”という職業は彼の為にあるような物かもしれないとさえ思える。
およそ30分程度だろうと思い少し時間を掛けて朝食を作ると、ちょうど汗を拭いたヴィルヘルムがリビングに顔を出した。
取り留めのない話をしていると玄関先から鍵を回す音が聞こえて、ヴィルヘルムが席を立つと同時に涼し気なアイスブルーの髪を揺らした青年が現れた。
「シュテファンさん!!」
「ああ、見送りに間に合ったようだ」
思わず席を立ち駆け寄ると感極まって抱き合った。あの森の中でオレと服を取り換えて、オレの代わりにイレーネとして盗賊達の元に戻った彼をずっと心配していた。
「今回はお手柄だったな」
オレの背中を優しく叩いてから隣に立っていたヴィルヘルムの肩も叩いた事が、シュテファンさんの身体から振動で伝わる。やっと離れて改めて彼を上から下まで見てみたが、幸い怪我らしい怪我はしていないように見える。団長さんやローレンツさんからもシュテファンさんは無事だと随時聞かされてはいたが自分の目で確認するまで何処か信じられないでいた。
「良かった!とても心配していたんです」
「君に心配されるようじゃ終わりだな、私は優秀なんだ」
にやりと笑ってそんな事を言えてしまうシュテファンさんはやはり凄い。船に乗り込む際にも彼が内部から合図を出して中で陽動までしたそうで、団長さんをはじめ騎士団の誰も彼の無事を疑わない者はいなかった。
朝食がまだだったらしいシュテファンさんにも残り物で悪いが食事を出し椅子を勧めた。
「調子良く首領の機嫌を取るまでは良かったが、気に入られ過ぎて向こうが私を離さなくてね」
一体どんなやり取りがあったらそうなるのか一切分からないが、山から町に下りて来ると他の人質と離されてしまい特別に馬車に乗せられたという顛末を聞いて頭を抱えたくなった。”男と逃げた”というイレーネの評判はあながち間違いでもないらしい。
「それで最後に人質がどうやって船に乗せられたのかも分からず、船内を言葉通り走り回る羽目になった訳だ」
自称気味に笑ったシュテファンさんにそれでも彼は十分過ぎる仕事をしたと思うのだが、彼は特別自分に厳しい人らしい。ヴィルヘルムが控え目に優秀な諜報部員に賛辞を贈ったが、その言葉も軽く流されてしまった。
「勘が良い人間はうちの部隊に向いているが、イツキ君は目立つから残念だよ」
朝起きたままで少し撫でつけただけの頭に不意に触れられて、これだけ隙も無く身支度を整えたシュテファンさんの前で少し恥ずかしかったなと苦笑いした。
「……まぁ後は人を欺くには素直過ぎるな」
ぐしゃぐしゃと髪を混ぜられて”これからも毎日変装をすると思って気を抜くな”と変装の師匠からの大切な言葉を貰い、気を付けますと答えた。
「シュテファン殿はまだ町に留まるのですか?」
反対側の席から聞こえたヴィルヘルムの言葉に、シュテファンさんとも今日でお別れなのだと思い出した。滅多に姿を人前に出さない諜報部隊の、一番の凄腕の彼にこれから会える機会などあるのだろうか。
「少し予定が変わってな、ここはしばらく離れるがいずれ王都に1度戻るつもりだ」
「それじゃあ!」
王都でまた会えますか?と言いたかったが、騎士でも王国の関係者でもない自分がどんな理由で彼にまた会う口実があるのだろうと口を閉じた。不自然に黙ったオレにシュテファンさんが少し意地悪そうな顔で笑い掛けた。
「なんだ薄情だな、私は友人には会える時はなるべく会いに行く人間だ」
新緑を思わせる緑の瞳が三日月のように細められて、言葉を続けて良かったのだと背中を押された。
「また会ってください、それまでに変装も上達しておきます」
「あぁヴィルヘルムもな、私は熱心な友人は嫌いじゃないぞ」
「楽しみにしています」
穏やかに笑ったヴィルヘルムとも握手をして、見送りに行けなくてすまないという言葉を残してシュテファンさんは帰って行った。
彼の様子から仕事の合間に時間を作ってわざわざ来てくれた事は明白で、きっと王都でも会える日が来るだろうと少し心細さも和らいだ。
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