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第一章:ギルド加入編

#9.コウジのステータス

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 「おはようございます」
 「おはよう。よく来たな」

 すでにマスターとヴァンがスタンバっていた。
 マスターの隣にいる虎の獣人は誰だろうか?
 なんか、すごいゴツゴツしてるけど……

 「ライクウちゃん、もしかしなくても彼?」
 「ああ、よろしく頼む」

 んん?なんか、嫌な予感が……

 「ハァーイ、コウジちゃん!アタシ、ニノシルっていうの!よろしくね♡」

 うわ……オネェだ。ゴツゴツした虎のオネェがおる……!
 しかも、ご丁寧に語尾にハートまでつけて……!
 正直きこの人……じゃなくて獣人は苦手だなぁ……
 漫画やアニメだったら面白いキャラとして思えるんだけど、リアルでくるとこれはなかなかキツイ。ゾワゾワして毛皮なのに鳥肌が……

 「どうだ、コウジ。なかなか濃い奴だろう?」
 「知ってたのに何で言ってくれなかったの!?」
 「そりゃあ、お前の反応が見たかったからさ」

 ふんぞり返ってドヤ顔で何言ってるの?
 なんというか、ヴァンに軽くいじめを受けているみたいな気分だ。
 そんなことを思っていたら、シーナが今度は回し蹴り……もとい、飛び回し蹴りをヴァンに放ち、壁に激突させた。
 あれ、シーナって癒し担当だよね?
 癒し担当……回復してくれる獣人が仲間を何度も蹴り飛ばしてるよ?
 いいのかな?かな?
 まぁ、それは置いといて……マスターによると、ニノシルって虎獣人は解析屋の主人らしく、僕のステータスを調べるために呼んだらしい。
 ステータスかぁ……レベルは1で間違いないだろし、他のも子供だから低いんだろなぁ……
 くぅ……わかっててもちょっと残念感が……

 「それじゃ、早速調べるわよ~!」

 取り出したのは水晶のようなガラス玉。
 それを通して僕をジロジロと見始めた。

 「ふんふん、なるほどー……へぇ、これは……」

 なにかブツブツ言いながら紙に何か書いていく。
 いや、何かってステータスに決まってるが。
 しかし、調べてるときに一瞬驚いた顔をしたのは気のせいだろうか?
 みんなも気にしているようだけど、ニノシルさんはなぜか隠しながら書いているため、わからずにいる。 あぅ……気になる……

 「はい、終わったわよぅ」

 書かれた紙を渡され、みんなが一斉に僕の後ろへ回ってきた。
 僕もジッと見始めた。 文字なら昨日勉強したし、わかる……はず!

 名前:タクト 種族:狐獣人 レベル:1 属性:空 所有スキル:暗闇耐性・衝撃耐性・温度変化耐性・貫通耐性・気絶耐性

 ん?レベルはわかってたけども、属性ってのはなんぞ?
 あと、名前が違うんですが?

 「なぁ、この名前って……」
 「ああ、おそらく元々の身体の名前なんだろうな」

 この身体、タクトって名前なのか……知れてよかったのかもしれない。
 だってもし、この身体……タクトのこと知ってるのがいたら色々教えてもらえるし。
 そして、この属性。
 これは一体何だろうか?

 「珍しいですね、空の属性なんて……」
 「え、そんなに珍しいの?癒の方が珍しく感じるけど……」
 「たしかに癒も珍しいですが、空の属性の方がよっぽど少なくて珍しいんです」

 そうなんだ……そんな珍しい属性を僕が……
 ああ、いけない。なんだか嬉しくてニヤけちゃう!元々はタクトの属性なんだから!
 あれ、気がつけばマスターがいないや。

 「マスターは?」
 「ライクウちゃんなら、ちょっと調べてくるって席を外したわよん。なにせ、珍しい空の属性なら君が住んでた住所が割り出せるからねん」

 なるほど、そりゃ便利。
 とりあえず、今のうちにスキルの事を聞けるだけ聞いとくか……

 「すみません、僕の所持スキルの意味を教えてもらってもいいですか?」
 「いいわよ。まず……」
 「コーウジー!いるかぁー?」

 バ、バルト?
 いきなり扉を開けるからびっくりしたじゃないか!
 しかも、ハイテンションだし……あれ、嫌な予感がするよ?

 『熟練度が一定に到達……《危険予知》を獲得しました』

 あ、新しいスキルだ。危険予知ねぇ……
 ん?バルト相手に危険予知を獲得したってことは……

 「焼肉丼作ってみた!コウジ、食べてみてー!」

 やっぱりだぁ!! くそぅ……見た目美味しそうだし、僕だって食べられれば食べてるさ!
 問題は、劇的なマズさだよ。
 なにせ、気絶しかけるほどだからね?
 っていうか、朝からなして焼肉丼なんか作るかな?
 サンドイッチとか軽めの方がいいよ。

 「断る!……どうして僕を指名するのさ?」
 「そりゃ、コウジが美味いと言えば料理担当に戻れるでしょー?」

 ……バルトは何のためにギルドに入ったの?
 いや、まぁ今はそれを置いておこう。

 「味見はしたの?」
 「するわけないじゃーん。したら誰が作って片付けるのさ?」
 「味見してよ!バルトが自分で美味しいと思うまで食べないからね!?」

 味見しないで食べさせてたの!?
 そりゃ、味がわかんないや。
 でも、手順も調味料もバッチリだったと思うんだけどなぁ……
 きっと、僕が見てないとこで変なことしたんだろうか?
 そうだ、きっとそうに違いない。そう思っておこう。
 しぶしぶとパクッと食べた瞬間、短い毛が逆立ったのがわかるくらいビクッとし、次の瞬間には固まってしまった。
 これで、僕達が食べた時の衝撃がわかったろうね。
 ……五分くらい経ったけど、いつまで固まってるんだろ?もしかして気絶してる?

 「う~ん……おかしいな……」

 あ、マスターが戻ってきた。
 なにやら、書類見ながら唸っている。

 「ライクウ……どうかしたのか?」
 「ああ……タクトって名前はいくつかあったんだが……空属性の者がいないのだ……」

 え、なに?どゆ事?
 つまり、タクトと空属性で検索して一人も見つからなかったってこと?
 それっておかしくない?

 「それってつまり……どういうことですか?」
 「これは私の憶測になるが……空の属性はコウジ自身が元々持っていたものだろう」

 バッとみんな(バルト以外)が一斉に僕を見た。
 うっわ、これ苦手だ…… でも、それほど空の属性はすごいんだね。
 さて、気絶しているバルトをよそに、僕達は地下へやってきた。
 これから僕が使う武器を選ぶんだとか。
 片手剣、両手剣、短剣、槍、鞭、鎖鎌、斧、爪、俸、ブーメランと色々ある。
 この中から選ぶのか……

 「武器が手から離れた時の体術も覚えてもらうが……まぁ、まずは実際に手に取って振ってみようか」
 「はい」

 まずは俸。
 縦に振ったり振り回したりしてみるけど、どうもしっくりこない。
 次にブーメラン。
 実際に投げてみると帰ってくることはなく、壁に刺さったり、床に落ちたりしてしまっって戻ってこない。
 続いて斧。
 重くて振り回せない。両手剣も同じ理由。
 お次は爪。
 かぎ爪みたいな感じで、力とスピードがない分攻撃力にかける。
 短剣は軽くて扱いやすいけど、もろいらしく折れやすいらしい。
 槍は長いから、僕じゃ引きずるし地面にあたる。
 そして片手剣。
 シンプルだけど扱いやすくてなぜだかしっくりくる。
 うん、これだ。

 「この片手剣にします」
 「よし、じゃヴァンと戦ってみろ。ただし、ヴァンは攻撃するなよ?止めるか受け流すだけだ」
 「ったく……あいよ」

 ヴァンは両手剣を取り出し、構えてきた。
 僕も慣れない構えで対峙する。
 さて、これが初めての武器だ。
 とにかく思いっきりやってみますか!
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