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第一章:ギルド加入編

#11.初仕事へ。幼馴染登場!(身体の方の)

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 翌朝、シャワーを浴びて(もちろん、尻尾にはテイルシャンプーしたよ)ギルドに行ってマスター室に入る。
 今日から初仕事。どんなことかな?

 「さて、今日からコウジは初仕事なわけだが……隣町のシールスへ行ってもらう」
 「シールスか……なら、例の崖崩れがあった場所を通るし、墓参りしてからいくか」

 あそこに……一瞬だけどドキッとしてしまった。

 「で、だ。シールスの街中に坑道があるんだが、そこの壁が崩れたらしく、そこの調査をしてほしいとのことだ」
 「調査?あそこにゃ魔物はいないだろ?」
 「ああ。いないとは思うが、未知の場所だ。いる可能性もある。実戦で学ぶのもいいだろう。ヴァンはできる限りサポートしてやってくれ」

 実戦か……初めて剣を使ったときなんて、危うくヴァンをチーンと滅するとこだったからな……気をつけねば。
 かといって、注意しすぎたら縮こまって逆にやられるかもしれないし、慣れるまで弱い相手でも気を許すわけにはいかないな。
 ヴァンは唸っていたが、諦めたのか溜息一つ吐いて了承した。
 そして、本物の剣を持ち、軽く買い物のために商業エリアへ。
 買ったのは薬草と毒消し草。
 買い物を終え、街を出ると僕は目を輝かせた。
 だって、目の前には広大な草原が広がっているんだよ!?
 風が気持ちよくて、空気も美味しい。最高!
 ヴァン曰く、道草してると着くのは夜になっちゃうため、いつの間にか前を歩いているヴァンに慌てて着いていく。
 日本じゃ田舎でもこんな空気は味わえないだろうなぁ。
 遠くにでかい虫みたいなのが動いてるけど、あれがモンスターなのかな?
 気づいてないみたいだから大丈夫っぽいけど……どこかで必ず戦うんだよね……ドキドキするなぁ。
 そしてやってきました、崖崩れがあった事故現場。
 崖崩れを直に見るのは初めてなわけだから規模はわからないけど、たぶん大きめだと思う。
 そしてその正面の木の傍には、土が少し山になっていて一本の枝が刺さっていた。
 たぶんここが親の……いや、親とタクトの墓なのだろう。
 僕は膝をついて両手を合わせた。
 どのくらい時間が経ったろうか……僕がゆっくりと目を開けると、いつの間にか目から涙を流していた。
 でも、これは理解している。僕が泣いてるんじゃなく、この身体が泣いてるんだ。
 生みの親である親、そして本当の身体の持ち主の死……それが泣かせてるんだ。
 僕は誓う。絶対にこの命を無駄にはしない。
 できれば近いうちに、このお墓をちゃんとした場所に移したい。
 一度ペコリと頭を下げ、手を合わせてから再び頭を下げる。
 正直、普通なら誰かもわからない奴に身体を使われるのは嫌だろうけど……この身体で生を受けた者として、精一杯生きて仲間の力になりたいんだ。だから……最後まで身体を使わせてね。
 そして、君はできることなら安らかに眠ってね。

 「おーい、そろそろ行かないと到着が遅くなるぞ」
 「あ、うん」

 すでに少し離れてるヴァンに駆け寄る途中で再び墓を見る。
 一瞬誰かに呼ばれた気がしたんだけど……気のせいだよね。
 僕とヴァンは再びシールスの街へと向かう。



 ……しかし、どのくらい歩いたろうか?疲れてきたんだが……

 「大丈夫か?もう少しで着くから頑張れ」
 「わかった……」

 とは言ったものの、ヴァンの「もう少し」は遠くに感じるのは気のせいだろか。
 そして予想通り、街に着いたのは夕方近くなわけで。
 今日は宿で泊まるらしく、早速宿へ向かい、入って部屋へと案内される。
 おおー、広い!
 ベッドも二つあるし、まさに二名様用って感じ!
 ベッドにダイブしたら反発がすごかった。なんか、漫画みたいに跳ねたんだけど!?
 なんてことをしていたら、出発は朝らしく、早めに寝るように言われた。 と言われても……まだ夕方だから寝るにはいくらなんでも早すぎる。少し街探索しよかな。

 「ちょっと街探索してくるよ」
 「ん、遅くなるなよ?」
 「あいさ」

 武器の手入れをしていたヴァンに一言言って起き、宿を出て夕日で赤くなった街並みを歩いていく。
 やはり人間は一人もいなく、いろんな所属の獣人が歩いている。
 夕方でも結構賑やかなんだなぁ。
 あれ、なんかいつの間にか住宅街っぽいとこに入ったよ?
 なんかこう……日本の家と違うのを見ると新鮮だなぁ。
 そう思いながら歩いていたら、とある一軒家で足が止まった。
 何だろう、この感じ?なんだか自然にここへ足を運んだ気がするんだけど。

 「……ト~……」

 ん?何か聞こえた?

 「タ~ク~ト~!!」

 え、なんかすごい勢いでこっちに走ってくるんですけど!タクトってこの身体の元の名前だよね!?
 走ってくる何かがその勢いのまま飛び蹴りを放ってきたため、僕はサッとしゃがんでかわす。
 ゆっくり振り返って見ると、ユラリと立ち上がってこっちを見る。怖いんですけど!?
 そして、いつの間にかガバッと僕の胸倉を掴んでいた。

 「アンタねぇ!帰ってきたのなら連絡しなさいよ!!事故があったって聞いて色々大変だったんだから!あんたの親はどこよ?」

 その子は犬のパピヨンみたいで……僕より小さいから、なんというか迫力が足りない。っていうか……誰ですか?

 「え、だ、だれ?」
 「へぇ……幼馴染の顔を忘れるなんて……いい度胸してるじゃない?それより、こっちが先に質問してるんだけど?」

 やっぱり怖い怖い!!
 って、ちょっと待てよ?幼馴染ってことは……知り合いってことだよね!?
 もしかしたら、タクトの事がわかるかも!

 「あの!ちょっと聞いてほしいんだけどいいかな?」
 「な、なによ!」

 僕は話した。
 僕も聞いただけで、事故の崖崩れのことはよくわからないけど……できる限り。
 話したけど……「ハァ?何言っちゃってんの?」みたいな顔をされた。
 さすがにこの顔はイラっとしたよ?

 「あんた、頭おかしくなっちゃった?ただでさえドジで泣き虫なのに……幼馴染として恥ずかしいわ」

 ……言ってくれますね。
 この身体ってそんなに可哀想な子だったんだね。
 しかし……どうしたもんか。一旦、ヴァンもとこに連れてって説明してもらう?
 でも、それで理解してくれるかどうか……あー、もう!考えてたって仕方ない!

 「信じてくれないなら着いてきて!!」
 「は?どこによ」
 「今の僕の仲間のとこ!!」

 ほぼ、無理矢理みたいな引っ張りで連れていく。
 だけど、ほんとに納得してくれるかな……なんていうか、強気で頑固っぽいからなぁ……
 まぁ、らちが明かない気がするし、今はこれしかない。

 「お、おかえりー……って、誰だ?その子」
 「タクト……この身体の幼馴染だよ。信じてくれなかったからヴァンに説明してもらおうと思って連れてきた。で、こっちはヴァンといって、エスクリプスっていうギルドのメンバーだよ」

 あ、ヴァンを見てる見てる。

 「よろしくな。えっと……?」
 「あたしはシルフィーっていうの。よろしくね、お・じ・さ・ん」
 「お、おじ……」

 おじさんって言葉にショックを受けたのか、固まってしまったヴァン。
 まぁたしかに、若いうちにおじさんなんて言われればショックを受けるのはわかる。
 だけど、今はそんな場合じゃ……

 「ヴァン?とりあえず今は……」
 「……ああ、わかってるさ……」
 「で?タクトが言ってたのはほんとだっていうの?」
 「ああ……崖崩れで埋まってたのを俺が助けたんだよ。たぶん、通りかからなかったらコイツはまた命を落としたろうな。それに、コイツとお前が知ってるタクトは性格が違うだろ?」
 「そうねぇ。タクトは臆病で泣き虫で何もにところで転ぶほどドジだし、雌服が似合いすぎるし、とてもギルドに入るほどの度胸もないしね」
 おおう……また言いたい放題言ってくれますね……
 ま、とりあえずは信じてくれたみたいでよかった。……のかな?

 「アンタたちは何しにここに?仕事なんでしょ?」
 「ああ、この街の坑道を調べにな」
 「ああ、あそこね。大丈夫なの?最近、変な唸り声が聞こえたって噂よ?」

 唸り声? てことは、何かがいるのだろうか。
 まぁ、それは間違いなくモンスターだよね。
 さて、何かブツブツ言ってるヴァンをスルーして、あと聞きたいことがもう一つ……
 「ね、タクトの家ってどこにあるの?服とか回収できたらなって思ってるんだけど」
 「アンタとあたしが会ったとこがそうよ。ていうか、知っててあそこにいたんじゃないの?」

 そっか、あの家がそうなのか。
 なんか自然に行ったけど……この身体の記憶だったのだろうか?

 「シルフィー、ありがとね」
 「べ、別にお礼を言われることじゃないわよ!タクトの身体に入ったアンタが二重の意味で可哀想だから教えただけ!勘違いしないで!」

 おお……古典的なツンデレだ。
 てか、二重ってなに?
 一つは……まぁ、シルフィーがボロクソ言ってたことだろうけど、あと一つは?

 「コウジ、とりあえずその子を送ってやれ。もう夜だ」
 「いいわよ、あたしの家はそんなに遠くないし」

 そう言って靴を履いて扉を開けるシルフィー。

 「そうか。じゃ、情報ありがとな」
 「いいわよ、それくらい。アンタ、気をつけなさいよ?」
 「あ、うん、ありがと」

 そう言うと頷いて出て行った。
 ほんと、強気で心配してくれるいい子なんだから。

 「お前どうすんだ?聞いた感じだとモンスターがいるっぽいが」
 「行くよ?もともとこれが僕の初仕事なわけだし……ここで放り出したら、きっと後悔するから」
 「そうか。んじゃ、明日のために寝るか」

 そう言って寝る準備をするヴァン。
 しかし、なんだろう……この感じ。
 なんというか、大変なことが起こるような。
 気になったけど歩き疲れたのか、僕はいつの間にか眠りについていた。
 そして次の日、僕達は例の坑道前に来ていた。
 さて、いよいよ僕の初仕事が始まる!

 「いいか?弱い敵なら戦わせてみるが……決して無理はすんなよ?無理なら俺の後ろにいろ」
 「うん、わかった」

 なんか、初めてヴァンがたくましそうに見えた。
 にしても、この嫌な感じは何だろう?
 ……とりあえずいきますか!
 僕達は坑道内へ入っていった。
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