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第二章:ライバルギルドバトル編

#33.第一勝負の勝者!そして第二勝負へ

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 「どこだ、どこだぁぁぁぁ!!!」

 バルトは走りながら草木を見定めていた。
 動体視力が抜群なため、全力疾走さえしなければハッキリと見ることができる。
 しかも、普通の馬と同じく広範囲を見ることができるため、首を左右に大きく曲げて見渡さなくとも確認することができる。
 もちろん、戻りやすいように木を傷つけながら。
 しかし、一向に目的の薬草は見つからず、あるのはただの雑草や花、強いて言えば下位である薬草や毒消し草くらいなもの。
 やはり走り回って見ているだけではレアな薬草は見つからないようだ。
 そしてバルトは焦るあまり気が付いていない。どんどん音がする方へ近づいていることに。

 「どわっ!!とっとっと……ふぅ~」

 走っていたら急に視界が開け、そこは崖になっていた。
 走っていたバルトは急ブレーキをするが、崖のギリギリで止まった上にバランスを崩しかける。
 なんとか耐性を整えて、安心の深い溜息を一つ吐いてからソッと崖下を覗いてみた。
 そこは深い崖で、向こう岸までは約15メートルくらいあり、崖下には激流の川がすごい音をたてて流れている。
 バルトの属性は水。
 ある程度の水を操ることはできるが、あそこまでの激流だと、落ちれば確実に操れずに溺れ死んでいただろう。
 それはバルトにも理解していて、背中にヒヤリとした汗が少し流れた。
 その場をソッと離れ、再び薬草を探そうとすると、何かに気が付いたみたいに足がピタッと止まる。
 汗がダラダラと流れ始め、振り返ってもう一度崖下を覗いてみる。
 すると、下のほうにメクラゲ草らしきモノが見えた。
 本当にメクラゲ草ならば、ここを降りていけば手に入って戻ることができるが、もし全然違う薬草だったり、滑らして落ちたりすれば……ショックを受けるだけでなく、命の危険もある。
 バルトは少し悩むが、こうしてる間にもジョルガはさっさと見つけて戻り始めてるかもしれない。
 そう思ったバルトは意を決して慎重に降り始めた。
 こういう時は下を見ずに、上か手元を見て、足元は感覚で確認しながら降りるのが鉄板だが、どうしても下が気になってチラッとでも見てしまうもの。
 バルトもそれをしてしまい、あまりの高さに寒気が走り、身を縮めてしまう。
 その時に手で掴んでいた部分が崩れ、バルトは落下してしまう。
 途中の出っ張りになんとか掴み、川への落下は阻止された。

 「ビックリした……あービックリした……」

 あまりのことに高鳴ってる胸を押さえながら荒く呼吸するバルト。
 何とか少し落ち着き、再び慎重に降り始めた。
 やがてメクラゲ草の横まで辿り着き、落ちないように慎重に引き抜く。
 本来はここで喜びたいとこだが、今はまだ崖に掴まってる状態。
 薬草を口で咥え、登り始めた。
 行きはよいよい帰りは恐いの逆と言わんばかりにヒョイヒョイと登っていき、あっという間に登り切ったバルト。

 「取ったどー!!」

 薬草を掴んで頭上に掲げて喜ぶ。
 全身泥まみれで、擦り傷もできてるけど、苦労して取ってきた達成感がバルトの心を躍らせた。
 しかし、まだ終わってはいない。取れても勝てないと意味がないのだから。
 バルトは木の傷を頼りに戻り始め、ついに元の道に戻ってきた。
 すると、ジョルガが丁度戻ってきているのが見え、慌てて道に入ってダッシュする。
 バルトがリードしてはいるが、距離がある上に、ジョルガの方がバルトより身体能力が上なため、状況的には悪い。
 現に、徐々に距離が縮まっている。
 バルトも全力で走ってはいるが、コロシアムの入り口が見えたとこで遂に横に並ばれた。

 「へぇ、メクラゲ草を見つけたんやな。正直ナメとったわ。けど少し遅かったな。身体能力の差でワイの勝ちや!」

 遂にジョルガが前に出始め、バルトに焦りが生じる。
 二人は入り口に入り、残りはあとわずか。
 バルトは負けじと最後の力を振り絞り、若干ではあるがスピードを上げ、ジョルガとの距離を縮める。
 しかしその健闘もむなしく、コロシアムのステージに辿り着いてしまい、僅かな差でジョルガが先にゴールした。                 

            ~~~~~~~

 バルトが負けた。
 僅かな差でジョルガが先にゴールした。
 力を出し切ったんだと見てわかるくらい、バルトの身体は全身ボロボロで、薬草を握りしめたまま倒れてしまった。
 呼吸を荒くしてマスターが支えに入る。

 「す、すみま……せん……」
 「バルト、お疲れ」
 「頑張ったみたいですね」
 「結果は残念だったがよくやった」

 ヴァン、シーナ、マスターがバルトに言葉を発し、バルトがコクンと頷く。
 僕はそれを見て、やっぱり仲間っていいなと心から思った。

 「よくやったな、ジョルガ」
 「はいな」

 ギルテシムの方から声が聞こえ、振り返ってみるとジョルガがマスターと話しているとこらしい。
 ふとジョルガが持っているメクラゲ草を見ると、バルトが持っていたメクラゲ草と若干違和感を感じるんだよね。
 なんだろう……?
 もう少し近づいて見てみると、違和感の招待が判明した。

 「ジョルガが持ってるの、人工的に乾燥させたドライ草じゃない!?」

 僕の言葉で、その場にいた全員が注目する。

 「コウジ、どういうことだ?」
 「ジョルガが持ってるの、野草じゃなくて長持ちさせるために乾燥させたドライ草だよ!きっとギルドへ行って持ってきたんだ!」
 「おい、どういうつもりだ!ルール違反だろう!」

 マスターが叫ぶと、ギルテシムのマスターのアムルスとジョルガが顔を見合わせ、ヤレヤレといったポーズをする。
 うっわ、あれは地味にイラっとするわ。

 「ようわかったな……が、何いちゃもんつけとんねん?ルール違反なんてしてないで?勘違いしとるのはお前さんらや」
 「は?」
 「言っただろう?メクラゲ草を取ってこいと。野草のを採ってこいとは言っていない。すなわち、野草でもドライ草でもどちらでもいいわけだ」

 な、なんてズルい…… 

「ま、要は頭(ココ)の使い方だ。残念だったな?これでこっちが一勝でリーチだ」
 「次のパワーでベアルグが勝てば二勝でウチらの勝ちや。残念やったな」

 高笑いしながら戻っていく二人を見て、怒りよりも悔しさが勝ってるからか、体がワナワナと震える。
 くそぅ……セコイやつらに負けてたまるもんか!
 あの鼠獣人の特徴らしき小さな体を思いっきり踏みつけてやりたい!
 次はパワー……狼獣人のヴァンと熊獣人のベアルグか……。
 種族もそうだけど、体格的にも圧倒的にヴァンに分が悪い。
 でも、勝つためにはヴァンと僕が二連勝する必要があるから、まずはヴァンに勝ってもらわないと意味がない。
 負けたりすれば、僕はギルテシムの奴隷だ。
 そんなのは絶対に嫌だ!

 「ヴァン、頑張って!」
 「おう!もうあんな奴らに負けるもんか!」

 お、こんなにやる気になってるヴァンは初めて見るな。
 いつもと違って頼もしく見えるよ。

 「俺、勝つ。ギルテシム、勝利」

 後ろから片言な言葉が聞こえ、振り返ってみるとベアルグが近くまですでに来ていた。
 改めて近くで見ると、なんてでかさだ……腕の太さもヴァンの二倍以上あるんじゃないかな?
 ヴァンを見てみれば、表情は強がってはいるけど、足が少し震えているのを見て……正直、これは覚悟をしたほうがいいのかもしれないと思ってしまう。

 「さて、今回のパワー対決だが、押し合いをしてもらう」

 押し………合い?

 「この線の前に立ち、二人には手と手を合わせ、押し出してもらう。そして、足が線を越えたり、体が倒れたりしたら相手の勝利だ」

 あ、今回はシンプルな勝負だ。さっきみたいなズルはできなさそうだ。
 気が付けば、二人の体の大きさに合わせた幅の線がすでに用意されていた。
 押し合い……なんかのゲームに似てるな?
 だったら……

 「ヴァン、ちょっと耳貸して」

 僕はヴァンにちょっとしたある作戦を伝える。
 うまくいけば、一瞬で終わるけど、こっちの勝ちだ。
 ヴァンが親指を立てて、ニヤッとして牙を見せて線の前へ向かう。
 僕達は離れ、ヴァンとベアルグは線の前に立って対峙し、構えをとる。
 木枯らしが吹き、緊迫感が増す中で遂に……

 「はじめ!」

 第二勝負が始まった。
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