リフェルトの花に誓う

おきょう

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9-②

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「っ?!」

その手はロザリアが気配を感じるより早く、後ろから彼女の口元を抑えてしまう。
室内の確認はすでに済ませてもらっていたから、部屋のどこかに潜んでいた可能性はほとんどないはずだ。
全ての出入り口は騎士が張っていて、侵入なんてできないはず。
なのにどうして、こんな状況にロザリアは追い込まれているのか。

口元へあてられた手に布が挟まれているのに気がついて、息を止めようとしたときにはもう遅かった。
ぐっと鼻と口にそれが押さえつけられた瞬間。
布きれに塗布されていた何かの効能で急速に意識が遠のいていく。

「っ……」


-----数分後にミシャが帰ってきた時には、すでにロザリアの姿は王宮内のどこにもなく。
室内に残されていたのは、絨毯の上で踏みつぶされたリフェルトの花だけだった。


*************

「ロザリア様が居ないだと?!」
「は!不審な人物が城壁近くで確認されたらしいのですが、見失ったようです。おそらくその者に…」
「連れ去られたと、言うのか」

緊急招集を受けた重臣たちが、円卓にずらりと並び腰かけている。

「いつものように自ら抜け出された可能性は…」
「この様な状況で場を離れるような無責任な方ではございません。そもそもいつもの城下への外出も遊びで行っているのではありません」
「えぇ…ではやはり、その不審人物に連れ去らわれたと言うのが濃厚ですね」

扉の脇で青い顔押した伝令役に報を受けた彼らは皆、それぞれにため息を吐き、5年前の誘拐事件を思い出した。

王妃が悪意のある者の手に落ちた凄惨な事件。
酷似したこの状況に、もし亡き王妃と同じ状況に第一王女が落とされたならばと、全員が重苦しく厳しい表情で唸る。
もう直系の子どもはロザリア王女しかいないのだ。
通常何十人もの側室を迎え、多くの子孫を作ることが必要であるはずの王族なのに。
直系が一人と言う王家断絶の危機に重臣たちは何年も頭を悩ませていた。

さらに今、その最後の一人さえ失うかも知れない事件に直面している。
彼らの額にはうっすらと冷や汗がにじんでいた。

「…5年前は王妃の第二子懐妊の報がされた直後でしたか」

そして今回は、ロザリアの婚約が正式になったと同時に事件は起こった。
時期からみて王家に何らかの私怨を抱き、王家繁栄を阻止しようとしている者以外に考えられない。

「おそらくあのときと同じ方法で同じ人物が行ったものではないかと」
「そんなこと言わんでも分かっている!」

どんっ、と机に拳が叩きつけられた。

「扉も窓も見張りがいたのだからな」

出入り口には騎士が護衛をしていて、侵入は不可能。
だとすると可能性は一つしかなかった。

「どうして対抗策を講じなかった?!」
「あれについては王族の方々しか詳細を知りません。我々では把握不可能ですし」
「王女が脱走する時の抜け道になっているって噂くらいしか…」

おそらく犯人が使用したのは王族しかしらないと言われている抜け道だろう。
王族が親から子へと極秘裏に受け継がせているもので、5年前に捜査の為だとエリック国王に公表を促しても存在自体を否定されてしまっていた。

建国以来、何十代と言う王族が守り抜いてきた秘密だ。
たった一つの事件の為に表に出すことは出来ないのだろう。
たとえその事件が王妃の誘拐殺人事件であったとしても、エリックは王として絶対に守らなければならない秘密を守ったのだ。
その判断が間違っているとも思えないから、更に詰め寄ることはできなかった。

しかし5年前の事件の解決を望む民の声は未だに大きい。
それほどに王妃は影響力のある人物だった。

「…今度こそ、逃がすわけにはいかん。ロザリア様は必ず無事にお救いする」

唸るような声が室内に響き、誰もが同意するように頷いた。


…王族のみが知りえる抜け道を知っているであろう人物。
直系の血筋が途絶えたあと、利益を得ることが出来る者。
5年前も怪しい行為を繰り返していたが、結局証拠を得られず地方へ追いやるくらいしか出来なかった。

「王弟、トーマス公爵殿から絶対に目を離すな。どこの部屋にいらっしゃる?」

大臣の一人が控えてきた伝令役に、厳しい表情でそう訪ねる。
しかし伝令役の青年は眉を下げ、困惑した表情でうつむいてしまう。

「それが…婚約の義が終わった直後から姿が見えないらしく…」
「なっ…!!」

どうしてそんな大事なことを早く言わないんだ!と、全員が声を張り上げそうになった。

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