27 / 39
9-②
しおりを挟む
「っ?!」
その手はロザリアが気配を感じるより早く、後ろから彼女の口元を抑えてしまう。
室内の確認はすでに済ませてもらっていたから、部屋のどこかに潜んでいた可能性はほとんどないはずだ。
全ての出入り口は騎士が張っていて、侵入なんてできないはず。
なのにどうして、こんな状況にロザリアは追い込まれているのか。
口元へあてられた手に布が挟まれているのに気がついて、息を止めようとしたときにはもう遅かった。
ぐっと鼻と口にそれが押さえつけられた瞬間。
布きれに塗布されていた何かの効能で急速に意識が遠のいていく。
「っ……」
-----数分後にミシャが帰ってきた時には、すでにロザリアの姿は王宮内のどこにもなく。
室内に残されていたのは、絨毯の上で踏みつぶされたリフェルトの花だけだった。
*************
「ロザリア様が居ないだと?!」
「は!不審な人物が城壁近くで確認されたらしいのですが、見失ったようです。おそらくその者に…」
「連れ去られたと、言うのか」
緊急招集を受けた重臣たちが、円卓にずらりと並び腰かけている。
「いつものように自ら抜け出された可能性は…」
「この様な状況で場を離れるような無責任な方ではございません。そもそもいつもの城下への外出も遊びで行っているのではありません」
「えぇ…ではやはり、その不審人物に連れ去らわれたと言うのが濃厚ですね」
扉の脇で青い顔押した伝令役に報を受けた彼らは皆、それぞれにため息を吐き、5年前の誘拐事件を思い出した。
王妃が悪意のある者の手に落ちた凄惨な事件。
酷似したこの状況に、もし亡き王妃と同じ状況に第一王女が落とされたならばと、全員が重苦しく厳しい表情で唸る。
もう直系の子どもはロザリア王女しかいないのだ。
通常何十人もの側室を迎え、多くの子孫を作ることが必要であるはずの王族なのに。
直系が一人と言う王家断絶の危機に重臣たちは何年も頭を悩ませていた。
さらに今、その最後の一人さえ失うかも知れない事件に直面している。
彼らの額にはうっすらと冷や汗がにじんでいた。
「…5年前は王妃の第二子懐妊の報がされた直後でしたか」
そして今回は、ロザリアの婚約が正式になったと同時に事件は起こった。
時期からみて王家に何らかの私怨を抱き、王家繁栄を阻止しようとしている者以外に考えられない。
「おそらくあのときと同じ方法で同じ人物が行ったものではないかと」
「そんなこと言わんでも分かっている!」
どんっ、と机に拳が叩きつけられた。
「扉も窓も見張りがいたのだからな」
出入り口には騎士が護衛をしていて、侵入は不可能。
だとすると可能性は一つしかなかった。
「どうして対抗策を講じなかった?!」
「あれについては王族の方々しか詳細を知りません。我々では把握不可能ですし」
「王女が脱走する時の抜け道になっているって噂くらいしか…」
おそらく犯人が使用したのは王族しかしらないと言われている抜け道だろう。
王族が親から子へと極秘裏に受け継がせているもので、5年前に捜査の為だとエリック国王に公表を促しても存在自体を否定されてしまっていた。
建国以来、何十代と言う王族が守り抜いてきた秘密だ。
たった一つの事件の為に表に出すことは出来ないのだろう。
たとえその事件が王妃の誘拐殺人事件であったとしても、エリックは王として絶対に守らなければならない秘密を守ったのだ。
その判断が間違っているとも思えないから、更に詰め寄ることはできなかった。
しかし5年前の事件の解決を望む民の声は未だに大きい。
それほどに王妃は影響力のある人物だった。
「…今度こそ、逃がすわけにはいかん。ロザリア様は必ず無事にお救いする」
唸るような声が室内に響き、誰もが同意するように頷いた。
…王族のみが知りえる抜け道を知っているであろう人物。
直系の血筋が途絶えたあと、利益を得ることが出来る者。
5年前も怪しい行為を繰り返していたが、結局証拠を得られず地方へ追いやるくらいしか出来なかった。
「王弟、トーマス公爵殿から絶対に目を離すな。どこの部屋にいらっしゃる?」
大臣の一人が控えてきた伝令役に、厳しい表情でそう訪ねる。
しかし伝令役の青年は眉を下げ、困惑した表情でうつむいてしまう。
「それが…婚約の義が終わった直後から姿が見えないらしく…」
「なっ…!!」
どうしてそんな大事なことを早く言わないんだ!と、全員が声を張り上げそうになった。
その手はロザリアが気配を感じるより早く、後ろから彼女の口元を抑えてしまう。
室内の確認はすでに済ませてもらっていたから、部屋のどこかに潜んでいた可能性はほとんどないはずだ。
全ての出入り口は騎士が張っていて、侵入なんてできないはず。
なのにどうして、こんな状況にロザリアは追い込まれているのか。
口元へあてられた手に布が挟まれているのに気がついて、息を止めようとしたときにはもう遅かった。
ぐっと鼻と口にそれが押さえつけられた瞬間。
布きれに塗布されていた何かの効能で急速に意識が遠のいていく。
「っ……」
-----数分後にミシャが帰ってきた時には、すでにロザリアの姿は王宮内のどこにもなく。
室内に残されていたのは、絨毯の上で踏みつぶされたリフェルトの花だけだった。
*************
「ロザリア様が居ないだと?!」
「は!不審な人物が城壁近くで確認されたらしいのですが、見失ったようです。おそらくその者に…」
「連れ去られたと、言うのか」
緊急招集を受けた重臣たちが、円卓にずらりと並び腰かけている。
「いつものように自ら抜け出された可能性は…」
「この様な状況で場を離れるような無責任な方ではございません。そもそもいつもの城下への外出も遊びで行っているのではありません」
「えぇ…ではやはり、その不審人物に連れ去らわれたと言うのが濃厚ですね」
扉の脇で青い顔押した伝令役に報を受けた彼らは皆、それぞれにため息を吐き、5年前の誘拐事件を思い出した。
王妃が悪意のある者の手に落ちた凄惨な事件。
酷似したこの状況に、もし亡き王妃と同じ状況に第一王女が落とされたならばと、全員が重苦しく厳しい表情で唸る。
もう直系の子どもはロザリア王女しかいないのだ。
通常何十人もの側室を迎え、多くの子孫を作ることが必要であるはずの王族なのに。
直系が一人と言う王家断絶の危機に重臣たちは何年も頭を悩ませていた。
さらに今、その最後の一人さえ失うかも知れない事件に直面している。
彼らの額にはうっすらと冷や汗がにじんでいた。
「…5年前は王妃の第二子懐妊の報がされた直後でしたか」
そして今回は、ロザリアの婚約が正式になったと同時に事件は起こった。
時期からみて王家に何らかの私怨を抱き、王家繁栄を阻止しようとしている者以外に考えられない。
「おそらくあのときと同じ方法で同じ人物が行ったものではないかと」
「そんなこと言わんでも分かっている!」
どんっ、と机に拳が叩きつけられた。
「扉も窓も見張りがいたのだからな」
出入り口には騎士が護衛をしていて、侵入は不可能。
だとすると可能性は一つしかなかった。
「どうして対抗策を講じなかった?!」
「あれについては王族の方々しか詳細を知りません。我々では把握不可能ですし」
「王女が脱走する時の抜け道になっているって噂くらいしか…」
おそらく犯人が使用したのは王族しかしらないと言われている抜け道だろう。
王族が親から子へと極秘裏に受け継がせているもので、5年前に捜査の為だとエリック国王に公表を促しても存在自体を否定されてしまっていた。
建国以来、何十代と言う王族が守り抜いてきた秘密だ。
たった一つの事件の為に表に出すことは出来ないのだろう。
たとえその事件が王妃の誘拐殺人事件であったとしても、エリックは王として絶対に守らなければならない秘密を守ったのだ。
その判断が間違っているとも思えないから、更に詰め寄ることはできなかった。
しかし5年前の事件の解決を望む民の声は未だに大きい。
それほどに王妃は影響力のある人物だった。
「…今度こそ、逃がすわけにはいかん。ロザリア様は必ず無事にお救いする」
唸るような声が室内に響き、誰もが同意するように頷いた。
…王族のみが知りえる抜け道を知っているであろう人物。
直系の血筋が途絶えたあと、利益を得ることが出来る者。
5年前も怪しい行為を繰り返していたが、結局証拠を得られず地方へ追いやるくらいしか出来なかった。
「王弟、トーマス公爵殿から絶対に目を離すな。どこの部屋にいらっしゃる?」
大臣の一人が控えてきた伝令役に、厳しい表情でそう訪ねる。
しかし伝令役の青年は眉を下げ、困惑した表情でうつむいてしまう。
「それが…婚約の義が終わった直後から姿が見えないらしく…」
「なっ…!!」
どうしてそんな大事なことを早く言わないんだ!と、全員が声を張り上げそうになった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
恋の締め切りには注意しましょう
石里 唯
恋愛
侯爵令嬢シルヴィアは、ウィンデリア国で2番目に強い魔力の持ち主。
幼馴染の公爵家嫡男セドリックを幼いころから慕っている。成長につれ彼女の魔力が強くなった結果、困った副作用が生じ、魔法学園に入学することになる。
最短で学園を卒業し、再びセドリックと会えるようになったものの、二人の仲に進展は見られない。
そうこうしているうちに、幼い頃にシルヴィアが魔力で命を救った王太子リチャードから、
「あと半年でセドリックを落とせなかったら、自分の婚約者になってもらう」と告げられる。
その後、王太子の暗殺計画が予知されセドリックもシルヴィアも忙殺される中、シルヴィアは半年で想いを成就させられるのか…。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。なろうサイトでは番外編・後日談をシリーズとして投稿しています。
天真爛漫な婚約者様は笑顔で私の顔に唾を吐く
りこりー
恋愛
天真爛漫で笑顔が似合う可愛らしい私の婚約者様。
私はすぐに夢中になり、容姿を蔑まれようが、罵倒されようが、金をむしり取られようが笑顔で対応した。
それなのに裏切りやがって絶対許さない!
「シェリーは容姿がアレだから」
は?よく見てごらん、令息達の視線の先を
「シェリーは鈍臭いんだから」
は?最年少騎士団員ですが?
「どうせ、僕なんて見下してたくせに」
ふざけないでよ…世界で一番愛してたわ…
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい
瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。
伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。
---
本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる