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卒業後
短い誓詞
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滞在中のわずかな時間では全部を見切れないとわかったので興味のある物に絞って見せてもらう。
「…すごいです」
数々の魔道具を見て溜め息を零す。
道具として利用できる物も飾りとして楽しむための物もあり、使用方法がわからない物もいっぱいある。
指に嵌った魔道具も貴重な物だけど、それ以上に珍しい物が多い。
「これも珍しいと思うよ」
先生が渡してくれたのは本型の…、魔道具?
中等部時代に見せてもらったのとは違うけれどかなりの年代物みたい。
すべすべした濃緑の表紙に手を振れる。
「…!」
表紙に手を触れると本が発光した。
手を離すと光が消える。何度か繰り返して先生を見上げた。
「これは…?」
先生の手が表紙を捲る。
一番初めのページは白紙。
ページを繰ると誰かの名前が二つ、書かれていた。
Lister…。
先生の名前?
ページをずっと捲っていく。一つのページには必ず二名の名前が書かれている。
先生の指が開いていたページを叩く。
「これは私の家の家系図…に近いものかな」
「家系図…」
開いたページを見つめて首を傾げる。
不思議に思ったのは、どう見ても後ろのページに行くほどに古く見えたからだった。
本はそこまで厚くない。
後ろから書くにしても、もっとページが多くないとおかしいような気がする。
「先生の名前も書いてあるんですか?」
ページを戻って見てみるけれど、無いみたい。
「私の名前はまだないね、これは父と母の名前だ」
二ページ目にあった名前を指して言う。
「先生の…」
リシアが言い淀んだ先を先生が口にする。
「二人ともずいぶんと前に亡くなった」
「そうなんですか…」
姿を見ないから可能性として考えていたけれど実際に聞くと気分が沈む。
俯いて文字を見つめると先生の手がぽんぽんと頭を撫でる。
「そんな顔をしないで、昔の事だし…、二人とも結構な年齢だったからね」
相槌にも困ってページを繰る。初めのページに戻ると真っ白なページが目に飛び込んできた。
もしかして…。
「これは次に先生の名前を書くんですか?」
一枚だけある白紙のページは新しく誰かの名前を書くためにあるように見えた。
「うん、ご名答。 いずれは私の名前が載るだろうね」
「最後のページですね」
何も書かれていないページは一枚のみ。これでは先生の代で終わってしまうみたいだ。
「そうだね。 これは魔道具の一種みたいでね、新しくページが生まれるようになっているんだ」
そんな魔道具初めて聞いた。
リシアの知識ではどんな技術で出来ているのか想像もつかない。
世に出たら技術を読み解こうと躍起になる人が現れると予想できた。
ページに書かれている名前は必ず二名、男性の名前と女性の名前が並んで書かれている。
「ようやく名前を書けそうだよ」
先生が呟く。
声に宿った万感に思わず顔を見上げる。
刹那見えた感情はリシアの瞳と交わると綺麗に霧散した。
触れることも出来ずに消えた感情の色は複雑でリシアには捉えられない。
どうしても捕まえたくて探すようにじっと見つめると先生は困ったように笑う。
「リシア?」
宥めるような声音に聞いても答えてはくれないと直感した。
代わりに言葉を探す。
「いつか、私の名前も書いてくれますか?」
リシアの言葉に先生が目を瞬く。
微かによぎる不安は先生の笑顔に打ち消された。
「近いうちに、きっと」
短い言葉に宿った想いに胸が震える。
胸を掠めた小さな不安を消したのは、それに遥かに上回る喜びだった。
「…すごいです」
数々の魔道具を見て溜め息を零す。
道具として利用できる物も飾りとして楽しむための物もあり、使用方法がわからない物もいっぱいある。
指に嵌った魔道具も貴重な物だけど、それ以上に珍しい物が多い。
「これも珍しいと思うよ」
先生が渡してくれたのは本型の…、魔道具?
中等部時代に見せてもらったのとは違うけれどかなりの年代物みたい。
すべすべした濃緑の表紙に手を振れる。
「…!」
表紙に手を触れると本が発光した。
手を離すと光が消える。何度か繰り返して先生を見上げた。
「これは…?」
先生の手が表紙を捲る。
一番初めのページは白紙。
ページを繰ると誰かの名前が二つ、書かれていた。
Lister…。
先生の名前?
ページをずっと捲っていく。一つのページには必ず二名の名前が書かれている。
先生の指が開いていたページを叩く。
「これは私の家の家系図…に近いものかな」
「家系図…」
開いたページを見つめて首を傾げる。
不思議に思ったのは、どう見ても後ろのページに行くほどに古く見えたからだった。
本はそこまで厚くない。
後ろから書くにしても、もっとページが多くないとおかしいような気がする。
「先生の名前も書いてあるんですか?」
ページを戻って見てみるけれど、無いみたい。
「私の名前はまだないね、これは父と母の名前だ」
二ページ目にあった名前を指して言う。
「先生の…」
リシアが言い淀んだ先を先生が口にする。
「二人ともずいぶんと前に亡くなった」
「そうなんですか…」
姿を見ないから可能性として考えていたけれど実際に聞くと気分が沈む。
俯いて文字を見つめると先生の手がぽんぽんと頭を撫でる。
「そんな顔をしないで、昔の事だし…、二人とも結構な年齢だったからね」
相槌にも困ってページを繰る。初めのページに戻ると真っ白なページが目に飛び込んできた。
もしかして…。
「これは次に先生の名前を書くんですか?」
一枚だけある白紙のページは新しく誰かの名前を書くためにあるように見えた。
「うん、ご名答。 いずれは私の名前が載るだろうね」
「最後のページですね」
何も書かれていないページは一枚のみ。これでは先生の代で終わってしまうみたいだ。
「そうだね。 これは魔道具の一種みたいでね、新しくページが生まれるようになっているんだ」
そんな魔道具初めて聞いた。
リシアの知識ではどんな技術で出来ているのか想像もつかない。
世に出たら技術を読み解こうと躍起になる人が現れると予想できた。
ページに書かれている名前は必ず二名、男性の名前と女性の名前が並んで書かれている。
「ようやく名前を書けそうだよ」
先生が呟く。
声に宿った万感に思わず顔を見上げる。
刹那見えた感情はリシアの瞳と交わると綺麗に霧散した。
触れることも出来ずに消えた感情の色は複雑でリシアには捉えられない。
どうしても捕まえたくて探すようにじっと見つめると先生は困ったように笑う。
「リシア?」
宥めるような声音に聞いても答えてはくれないと直感した。
代わりに言葉を探す。
「いつか、私の名前も書いてくれますか?」
リシアの言葉に先生が目を瞬く。
微かによぎる不安は先生の笑顔に打ち消された。
「近いうちに、きっと」
短い言葉に宿った想いに胸が震える。
胸を掠めた小さな不安を消したのは、それに遥かに上回る喜びだった。
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