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二年目 ~領地編~
気づいてしまった想い <クリスティーヌ視点>
しおりを挟む読んでいた本から顔を上げ、栞を挟む。
白い台紙に張られた薄紅色の花びらが目に入り、ふわふわと落ち着かない気持ちを生んだ。
『まるでクリスティーヌ様の髪を飾るように降ってきましたね』
アラン様の言葉を思い出す。
とてもお綺麗だったのでと言われたことまで蘇り、頬が熱を持つ。
アラン様に他意はないことはわかっている。ただ偶然髪に乗った花びらを綺麗だと言っただけ。
それだけなのに――。
あの日アラン様が私の手に乗せた花びら。
それを大事に持ち返ってしおりにまでしてしまった自分がいたたまれなく恥ずかしい。
学園まで戻る道中、馬車の中で押し花にしてこうして手元に置ける形にして持ち歩いている。
見る度にあの日のことを思い出しては胸をときめかせアラン様のことばかり考えていた。
贋金を使った犯人を捕まえてもクレイルや皆のおかげなんて言うアラン様に、最初に気がついたのはアランでしょうと言いもっと自信を持ってと伝えた。
だってアラン様が気づかなかったらまだ贋金のことに気づいていなかった可能性だってある。
早く気づけたという点でアラン様の果たした役割は大きい。
そう言う私へ侯爵家の皆を守れたことが誇らしいと答えるアラン様に、自分でも驚くほど感情が波打った。
私たちを守れたことが嬉しいと浮かべた笑みの柔らかさ、瞳に宿る誇らしさに魅入られ言葉を失う。
『大切な人が幸せでいてくれる。
それが俺にとっても幸せですから』
淡い茶色の瞳が幸せそうに細められ、綻ぶ口元で瞳に浮かべたままの感情を伝える。
その笑顔の優しさ、温かさにどくんと大きく心臓が鳴った。
唇が震え、何か言いたいのに何も言葉が出てこない。
そんな感覚に襲われながら、ただアラン様の笑顔を見つめていた。
沈黙に気まずさを覚える前に吹いた突風。
屋敷の中に戻りましょうかと言ったアラン様が私を見て口元を綻ばせた表情にまた胸が騒いだ。
風に運ばれた花びらが私の髪に乗っていたようで、付いている場所を教えてくれる。
髪を払い視界の端を薄紅が落ちたかと思えば、花びらはアラン様の手に受け止められていた。
『落ちてしまうのが惜しくなってしまい、つい受け止めてしまいました。
とてもお綺麗だったので』
大切な物のように両手で受け止められた花びらへ手を伸ばすとアラン様は私の手に乗せてくれた。
小さな薄紅色の花びらは風が吹けばどこかへ飛んでしまいそうで、アラン様がしていたように両手で包み込むように持つ。
まるで私の髪を飾るように落ちてきたと語るアラン様に頬が熱くなるのを自覚した。
アラン様に意図がないのはわかっている。
偶然とはおもしろいですねと言っていたしその言葉の通りの意味しかないのでしょう。
けれど、私には違った。
綺麗だと言ってくれたその花びらが、アラン様が手に乗せてくれた小さな花弁が、本当に髪飾りだったらよかったのにと思ってしまった。
髪飾りは特別な物。
婚約者や配偶者にしか贈られない物で。
この花びらが本当に髪飾りでそれをアラン様が贈ってくれたのならと感じた。
そうして今、たまたま飛んできて髪に止まっただけの花びらを大事に持ち歩いている。
アラン様が綺麗と言ってくれた花びらを。
見つめてはあの瞬間を思い出す。
幸せそうな表情で私を見つめるアラン様とその時の胸の高鳴り。
アラン様に対する想いに気づかずにはいられるほど鈍感ではいられなかった。
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