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12 のどかな村
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馬車に揺られる時間が長いせいかアルフレッドの顔には疲労の色が濃い。
聞いてもソフィアを気にしてか大丈夫としか言わないので、ソフィアは早めに休憩を取るようにしていた。
「アルフレッド、次の村で降りるから」
「え、どうして?」
まだ日が高いのでアルフレッドは不思議そうな顔をする。
「この先宿屋があるような街までちょっと遠いのよ。 その街も近くに宿がないの知ってて少し値段が高めにしてるの」
「へえ…」
ちょっとの差でも積もり重なれば大きな損失となる。
あとあの街は馬車の出発時間が少し遅い。
村から行くのと最終的にはそれほど変わらなくなっている。
そうして説明をしている間に馬車が村に着いた。
簡単な垣根があるだけの村はいかにも長閑だ。
緑が続く大地では家畜がのんびりと草を食み、子供たちが畑の横を走り回っている。
時間の流れまで違うような穏やかな空気が流れていた。
村に一軒だけある宿に向かう。
「…」
都会育ちのアルフレッドは珍しそうに村を見回している。
「珍しい?」
「ああ、見渡しても一軒家しかないって驚きだな」
言われてソフィアも辺りを見回す。
多くの家は一階建てで横に広く場所を取っている。
こういった家は都会ではまず無理だろう。
「そうね、私も初めてこういった村に来た時は驚いたわ」
隣の家まで距離があるというのも驚いた。
話しながら宿に辿り着く。
「こんにちは、部屋は空いてますか?」
にっこり笑顔を浮かべながら受付にいた女性に聞いてみる。
「生憎今は一部屋しか空いてないんだよ。 それでもいいかい?」
当然空いていると思ったソフィアは返ってきた返事に驚く。
一部屋でもかまわないので頷いて驚きを口にする。
「かまいません。 でも、珍しいですね。 ここが一杯なんて」
この宿は広いので満室になったのなんて見たことがない。
「あはは、普段はガラガラなんだけどね。
明日村長の息子の結婚式があるってんで親戚なんかが集まって来てるんだよ」
村長の家や空き家などに振り分けてもまだ足りなかったらしい。
「へえ、おめでたいことですね」
「そうそう、二人も急ぎでないなら明日の宴に参加していきなよ。
食事や飲み物は村長持ちだから気兼ねなく飲み食いできるよ」
それはちょっと魅力的だ。こんな時でなければ絶対に参加している。
「残念ですけれど私たちは明日早い馬車で移動するので、お零れには与れそうにないですね」
「そうかい、それは残念。
はい、部屋の鍵。 部屋は突き当りだよ」
「ありがとうございます」
鍵を受け取って部屋に向かう。
宴会かー、心惹かれるけれど仕方ない。
鍵を開けて部屋に入る。
ここまでの旅路でなんとなく入って左のベッドがソフィアで右のベッドがアルフレッドと位置が決まった。
左のベッドに歩み寄って荷物を置く。大きな窓から入る光が心地いい。
アルフレッドも右のベッドに腰を下ろして寛いでいた。
「なんかいいな、ここ。 すごい落ち着く」
本当に。これが旅行だったらもっと気分が良かっただろう。
「でしょ? ここご飯もおいしいんだよね。
この村の家畜から取った乳を使った料理がこの宿の名物だ。
街で食べる物よりも新鮮でとてもおいしい。
後ろに手を付いて足を伸ばしていたアルフレッドが伸びをする。
「しかし街から街への移動って大変だな。 ソフィアはいつもこんなことをしてるのかと思うと尊敬するよ」
「何言ってるの、これでも昔に比べたら楽になったんだからね?」
ソフィアもその時代は知らないけれどそう言っておく。
「ああ、そうだな。 前に王都に行ったときは子供だったからどうやって行ったのかもよく覚えていないんだよな。
ただ建物が大きくて圧倒されたのを覚えてるよ」
アルフレッドが住む街も大きく栄えている街だ。
その街で生まれ育ったアルフレッドが驚くくらいというと王城か大教会のどちらかだろう。
「後で村の外を散歩でもしよっか。 流石に座ってるのも飽きたでしょ」
のんびりするのもいいけれど夜までぼうっと過ごすのはもったいない。
身体を動かそうと言ったソフィアに座るのに疲れていたアルフレッドも賛同した。
聞いてもソフィアを気にしてか大丈夫としか言わないので、ソフィアは早めに休憩を取るようにしていた。
「アルフレッド、次の村で降りるから」
「え、どうして?」
まだ日が高いのでアルフレッドは不思議そうな顔をする。
「この先宿屋があるような街までちょっと遠いのよ。 その街も近くに宿がないの知ってて少し値段が高めにしてるの」
「へえ…」
ちょっとの差でも積もり重なれば大きな損失となる。
あとあの街は馬車の出発時間が少し遅い。
村から行くのと最終的にはそれほど変わらなくなっている。
そうして説明をしている間に馬車が村に着いた。
簡単な垣根があるだけの村はいかにも長閑だ。
緑が続く大地では家畜がのんびりと草を食み、子供たちが畑の横を走り回っている。
時間の流れまで違うような穏やかな空気が流れていた。
村に一軒だけある宿に向かう。
「…」
都会育ちのアルフレッドは珍しそうに村を見回している。
「珍しい?」
「ああ、見渡しても一軒家しかないって驚きだな」
言われてソフィアも辺りを見回す。
多くの家は一階建てで横に広く場所を取っている。
こういった家は都会ではまず無理だろう。
「そうね、私も初めてこういった村に来た時は驚いたわ」
隣の家まで距離があるというのも驚いた。
話しながら宿に辿り着く。
「こんにちは、部屋は空いてますか?」
にっこり笑顔を浮かべながら受付にいた女性に聞いてみる。
「生憎今は一部屋しか空いてないんだよ。 それでもいいかい?」
当然空いていると思ったソフィアは返ってきた返事に驚く。
一部屋でもかまわないので頷いて驚きを口にする。
「かまいません。 でも、珍しいですね。 ここが一杯なんて」
この宿は広いので満室になったのなんて見たことがない。
「あはは、普段はガラガラなんだけどね。
明日村長の息子の結婚式があるってんで親戚なんかが集まって来てるんだよ」
村長の家や空き家などに振り分けてもまだ足りなかったらしい。
「へえ、おめでたいことですね」
「そうそう、二人も急ぎでないなら明日の宴に参加していきなよ。
食事や飲み物は村長持ちだから気兼ねなく飲み食いできるよ」
それはちょっと魅力的だ。こんな時でなければ絶対に参加している。
「残念ですけれど私たちは明日早い馬車で移動するので、お零れには与れそうにないですね」
「そうかい、それは残念。
はい、部屋の鍵。 部屋は突き当りだよ」
「ありがとうございます」
鍵を受け取って部屋に向かう。
宴会かー、心惹かれるけれど仕方ない。
鍵を開けて部屋に入る。
ここまでの旅路でなんとなく入って左のベッドがソフィアで右のベッドがアルフレッドと位置が決まった。
左のベッドに歩み寄って荷物を置く。大きな窓から入る光が心地いい。
アルフレッドも右のベッドに腰を下ろして寛いでいた。
「なんかいいな、ここ。 すごい落ち着く」
本当に。これが旅行だったらもっと気分が良かっただろう。
「でしょ? ここご飯もおいしいんだよね。
この村の家畜から取った乳を使った料理がこの宿の名物だ。
街で食べる物よりも新鮮でとてもおいしい。
後ろに手を付いて足を伸ばしていたアルフレッドが伸びをする。
「しかし街から街への移動って大変だな。 ソフィアはいつもこんなことをしてるのかと思うと尊敬するよ」
「何言ってるの、これでも昔に比べたら楽になったんだからね?」
ソフィアもその時代は知らないけれどそう言っておく。
「ああ、そうだな。 前に王都に行ったときは子供だったからどうやって行ったのかもよく覚えていないんだよな。
ただ建物が大きくて圧倒されたのを覚えてるよ」
アルフレッドが住む街も大きく栄えている街だ。
その街で生まれ育ったアルフレッドが驚くくらいというと王城か大教会のどちらかだろう。
「後で村の外を散歩でもしよっか。 流石に座ってるのも飽きたでしょ」
のんびりするのもいいけれど夜までぼうっと過ごすのはもったいない。
身体を動かそうと言ったソフィアに座るのに疲れていたアルフレッドも賛同した。
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