魔王のジョブを持っているVRMMOのアバターで異世界へ転移してしまった件

Crosis

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第84話悪戯が成功したかような無邪気な声

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 しかし、そのような光景を前にしても隣りにいる黒竜は悲しむ素振りどころか未だどこか余裕めいた表情をしているように見える。

 確かに黒竜が言うようにクロ・フリートが放った魔術は魔王アーシェの魔術を打ち破った。しかし、魔王アーシェよりもクロ・フリートの方が経験的に劣っているだろうことは今までの二人の戦闘から想像でき、その差がでた結果なのだろう。

 その光景を前にして何故この黒竜は自らの主が勝つと信じて疑わない目をできるのだろうか?

「ここからだぞ目をそらすなよ? 小娘、我が主の本気が見れるのは。家臣ですら今まで主の本気を見たことがあるのはこの私だけだからな」

 そう言い笑いかける黒竜。

「…え?」

 その黒竜の声からはまるでプレゼントを前にした少年を彷彿とさせるほど、これから起きるであろう展開を、目の前の黒竜が期待し興奮している事が伺える。

 しかし、黒竜の期待も虚しくクロ・フリートは力無く地に倒れてしまう。

 結局何も起きなかった。

 そう思った次の瞬間、クロ・フリートから淡い光が一瞬放つと魔王アーシェが吹き飛ばされ、さらに先ほどまで体を穿かれ、力無く倒れた者とは思えない程の魔力の奔流を肌で感じ取ると、私には到底真似できない、それどころか発動すらできないであろう高魔術を無詠唱で高速詠唱し、魔王アーシェへ撃ち放つ。

 その光景を見た私は自分の小ささと世界の広さを肌で感じ、あの魔王アーシェが敗北する瞬間を目に焼き付ける。

「どうだ小娘? 我が言った通りになったであろう」
「……」

 そう私に聞いてきた黒竜はまるで悪戯が成功したかような無邪気な声で話す。

 私は竜種の顔から表情を読み取ることが今までできなかったのだが、今私の隣にいる竜の顔からはなんとなくであるがその表情、どこか誇らしげなその表情が分かる。

「私の名はスフィア。スフィア・エドワーズだ。ところでお前の名はなんだ」

 そう思うと先程から小娘呼ばわりされている事が歯がゆく思えてくる。

 私も竜も姿こそ違うがこうやって話し合える存在であるならば、私の名前ぐらい覚えて欲しく、そしてこの竜の名前も覚えておきたくなる。

「そうか、覚えておこう。そして我の名はバハムートだ。ところで小娘…」
「スフィアだ! 先ほど述べたばかりであろう!?」
「かっかっかっ悪い悪い、スフィア」
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