すべてはスライムで出来ている。

霧谷水穂

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毒と擬態

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 毒耐性だって、どうする?
 セキ達が手を上げる。
 そしてセキの体であるガヤ、マーラ、トトがバタバタと倒れる。

 何事かと思ったらセキが体から出て来てた。
 動物の体のまま毒を取り込むと、肉に毒が回って病気になってしまうらしい。
 その点血液だけのセキなら毒に慣れるまで循環させておくだけだそうだ。

 でもここでは不味くないか?
 ここって人間が住んでいるんだろ?
 スライムの体は土の隙間に潜り込めるけど、動物の体は隠せないだろ?

 セキが慌てたように体に戻っていく。
 どこか安全な場所に移動して循環させよう。
 セキ達が溶けた野菜を枯葉に包んでケイに託している。

 ケイ重いよな。頑張ってくれ。
 ……回転か。ありがとう。

 何でか緑色のスライムも一緒に川に面した崖下に来た。
 隙間を探そう。
 小さい横穴を発見。
 だけど全員は入れないなあ。
 穴拡がらないかなぁ。あれ?

 おいおい天井が溶け落ちて来てるぞ!
 危なくないか?
 一回退却!
 皆で穴の外から穴を見つめる。

 しばらくすると穴の中からズルズルと何かが出て来た。二倍の大きさはある。
 濃い灰色で、自分の色と似ている。
 なんで自分の色を知ってるかって?川で見たんだよ。

 おーいと言う様に突起を振って見せてきた。
 穴に入ったから崖の壁が一部スライムになったみたいだな。

 入っていいかい?
 ……縦に振ってる。
 ケイを奥に、その次にセキ達。
 穴の近くにセンと草スライム。
 崖スライムは外側で外から見えないように板状になって斜めに寄りかかってくれた。

 ありがとう。助かったよ。
 自分がそう告げたら、崖スライムは崖岩に戻ってしまった。
 言葉のチョイスを間違ったか?

 まあいいか。
 今晩はセキの毒耐性の習得だな。
 セキ達が了解と手を上げ、セキ本体が体を抜けていく。

 ケイが差し出した葉っぱ包みをセキが取り込んで中でグルグル回す。
 見ていたけど時間がかかりそうだ。

 夜は移動するつもりないし、せっかくだから草スライムに話を聞こう。
 あの溶けた野菜を取り込んですぐ耐性は付くのか?
 ……縦に伸びた。そして外の草を引きちぎって身体に入れて見せてから横に体をひねる。
 すぐ耐性がつく。普通の毒草では即毒耐性は付かない。だな?
 ……縦に伸び縮みしている。
 人間の手を介すことで毒が強まっているのかもしれないな。
 でも人間はそれを食べて平気なんだから元々平気な生き物なのか。
 ……横ひねり。
 じゃあ毒を無効化できるのか?
 ……縦伸びか。
 人間とは器用な生き物らしいな。
 でもそんなデカい生き物に近づくのは危険だよな?
 ……縦伸び。
 草スライムはそんな人間を見たことがあるんだろ?
 ……縦伸び。
 どうやって?
 ……草スライムは岩の床に平たく伸びて行き、少し表面をもこもこさせた。
 これは、苔に擬態か!
 ……縦に伸びてその勢いで擬態を解いて元のフォルムに戻った。
 凄い能力だな!自分の作った皆は擬態って出来るのか?
 ……皆羽根を掲げ上げる。消化中のセキも突起を突き上げている。
 ああ、セキが動物の中で血液になりきるのも確かに擬態だな。
 ……突起が縦に揺れる。
 そうすると、ケイのを見せてくれるか?
 ……透明で中の木の実が見えていたのに、段々白く濁りつるんとしていた表面がごつごつになる。凸凹しているので真っ白には見えないし白っぽい石に見える。
 おお!凄いな!
 じゃあセンのも見たいから一回ケイに移動させてくれ。
 透明に戻ったケイに移動してセンを見る。
 ……センは床に真っ平らになった。
 これは、水たまりか!
 ……水たまりから突起が立った。面白いな。
 そんなこんなでいろいろ実験してその夜を過ごした。
 外の物音は特に気にしなかった。
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