すべてはスライムで出来ている。

霧谷水穂

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猪血

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 カークがスキルを使う姿は、何となく、自分がカークを呼んだ時に似ている気がする。
 自分が呼んだらスライムになってしまうな。
 フェイボアは仲間に……いらないな。

 しばらく続けると、フェイボアがガクガク震えだす。
 そして腰が抜け、動かなくなった。
 目線もあさっての方向に向いている。
 血が抜けてしまったようだ。

「スコラ達、牙を外して」
 言われた三匹がすばやく牙の刺さっている幹に登ると、三匹一斉に前歯を立てる。
 その一撃で幹が割れ、すんなり牙は外れた。
 なんてあっさり!

 ところで、フェイボアの血はどうするんだ?
 今もロープ状態であるそれを、カークは部分的に捻りを加えていく。
 すると、ロープにいくつもの括れが出来ていく。

「蒸すと、プルプルになって、美味い」
 どうやら、さっきの白い石は岩塩と言う塩の塊で、それを通してスキル『生命の鎖』を発動することで血液に塩分を含ませたらしい。

「塩が混ざると、固まる」
 そして蒸すと固まると。
 感触は豆腐の様になる。
 色は火が通るので白みが出る。
 うんちくになったが、作者も食べたことはないらしい。

 だが、皮も無くロープ状になっているのを人間に見られたらどう対応するんだ?
「そのまま言えばいい。スキルで作った、ブラックサーセージ。オールブラック」
 それでいいのか。

「それでいい。それより、移動しないと」
 それを聞いたセキ達三匹が一本の倒木に均等に間を空けて並んで『コッ!!』と前歯を立てると、幹が縦半分に割れた!
 カークが鉈でいらない枝を払って、開いて並べた木の上にフェイボアを乗せる。
 前足のロープの端を残した木の枝にしっかり結び、そのロープを持って引くことで草の上を木で滑る事を可能にした。
 一番地面との抵抗が当たる前底部分をケイが体を擦りつける事で磨いて滑らかにしてある。

 しかし、一人での移動だったので時間がかかり、畑の柵まで着いた時にはいつもの朝食の準備の時間はとっくに過ぎてしまっていた。
 ボーケイに頼んでフェイボアを見張っていてもらい、カークは鉈を戻しに道具小屋に行って人間に捕まった。

「朝イチで呼ばれて、仲間を助けに、行ってきた」
 ちょろりとカークの肩の上に並ぶセキ達が可愛い仕草をすると、怖い顔の人間が顔を崩す。

 でも準備を手伝えなかったから片付けはするように言われた。
 皿洗いだ。
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