すべてはスライムで出来ている。

霧谷水穂

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乾燥

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「ではまず、洗いましょう! 乾燥機とフェイボアを包める大きな布を用意してください」
 神父の指示で人間達が動き始める。
 乾燥機?
 解体するんじゃないのか?

「野生の獣は、人間好みに、体を洗ったり、しないから」
 ん?

「表面を、高温の蒸気で蒸し上げて、汚れと虫を、取りやすくする。あとは、水で流すだけ」
 ほう、そんなに便利な方法があるのか。

 ……カークの足元でセンがしきりに何か訴えている。
 しまいにはカークの足を、スライムコーティングで強化した羽根でベシベシ叩き始めた。

「……普通のスライムは、そんなことしない」
 ……ベシベシが高速化した。
 カークはまったくの無表情。

 ……近付き過ぎて羽根とセン本体は一緒にカークのすねに縋りついたような体勢に。
 カーク溜息が聞こえる。

「水運びだけ、頼んでみる。余計な事は、しない事!」
 ……センはすねから飛んで離れると、羽根を嬉しそうに振り振りした。
 何をしたがっているんだ?

「水を取り込んで、噴き出して、洗いたがった。噴出フンシュの魔法と、勘違いされたら、危険」
 ああ~攻撃が出来るスライムと認識されたらセン自体が危険か。
 カークが頷き、こちらの会話からセンは危険を認識できたようで良かった。

 神父様に水の運搬だけでも許可してもらえると良いんだが。

「そんな事が可能なのですか?」
 そう思うよな。
 自分も溜めてるのを見たことが無いから何とも言えない。

「では、蒸し上げが完了するまでにフェイボアの側まで水を運んでもらえますか?
 ある程度時間がかかるので、それまで余裕を持ってお願いしますね」
 時間かかってもやってみろという事だな。
 出来る所を見せる時だな!
 ……センが張り切って羽根を振っている。

「……運ぶだけだぞ」
 カークはやりすぎないか心配しているようだ。
 カークの両手に乗るくらいの大きさしかないセンにそんな大それた事が出来るか。

 ……そう、自分は思っていた。
 今のセンを見ているとカークの心配はもっともだったと思えてしまう。

 そうこうしていると、人間達がシーツを縫い合わせて作ったという大きな布をフェイボアに被せて布の端に石を並べていく。
 乾燥機だと言う箱が持ち出され、石を並べ終わった布の端から大音量で中に温風を送り込み始めた。
 カークの話では、中が膨らむくらいまで温風を送り込み、常に中を高温にするらしい。
 あの大きさだと、確かに時間はかかりそうだ。

 だがちょっと待て!
 乾燥機で蒸し上げるっておかしくないか?

「あの機械の名前が、『乾燥機』なだけで、加湿も出来る」
 それなら安心だな。
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