庭師の称号〜砂の海編〜

うつみきいろ

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列車

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列車に揺られること数日。
景色は砂漠混じりの乾燥地帯へと移り変わる。この砂漠を抜ければいよいよ南方の都市ニューサマーゲートだ。
「そろそろ着きますよ、フクロウさん」
窓辺に積もった砂を採取して熱心に調べているフクロウの肩をスズメは軽く叩く。ススキ色の制服の皺を伸ばして、ついでにフクロウのだらし無くあけた上着のボタンも閉めてやった。
「僕のことはいい!やめたまえ!」
「駄目ですよ!身なりはしっかり整えなきゃ!」
ニューサマーゲートといえば自警団南方支部がある都市だ。今回の任務も、南方支部と共同で行うよう上から通達があった。これから一緒に任務を進めていくなら出来るだけ仲良くやりたい。となれば第一印象は重要だ。言動や身なりに気を付けて挨拶しに行かなければ。
「南方支部についたらこんにちはくらいは言ってくださいよ」
「嫌だね」
「もう!またそんなこと言って!」
不機嫌そうに器具を片付けるフクロウをみてスズメは呆れた。この男、科学者としての腕は確かなのだが、それ以外がてんで駄目で困る。服装はジャージの上に制服を被って、その上に白衣というラフなものだし、髪はボサボサ。他人と必要以上に話そうとしない上に相手の気持ちを逆撫ですることも多い。決して悪い人ではないのだが誤解されやすいのが難点だ。
「前途多難だ・・・」
「ふん、君も素の時は口が悪いじゃないか」
「僕はちゃんと場面で使い分けてますー!」
言い返すと少し声が大きかったのか近くの乗客にギロリと睨まれる。おっとと口を噤むと、隣でフクロウが笑う気配がした。くそ、してやられた。
スズメは舌打ちしたいのをぐっと堪えて荷物を抱えて立ち上がる。
「もう駅か」
「ええ、行きますよ」
ちょうどいいタイミングで列車は駅へと辿り着く。完全に列車が止まるのを待って二人は連れ立って下車した。
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