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序章、第一話
マナー違反ですよ
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自室に戻ると姿見を見詰めながら急いで埃と蜘蛛の巣をハンカチで払う。ボサボサになった髪も整えて、やっと一息ついた。
何気なく机の上に目を向けるとヨルが持ってきてくれた勉強道具が目に入る。
(俺に万が一のことがあったら・・・・・・)
スズメはあと三日帰らないヨルのことを考えた。味方のいないこの屋敷で無事に三日間過ごせるだろうか。やはり一度屋敷を抜け出すべきか。しかしクーデターの情報をもっと集めたいという気持ちもある。
スズメは一枚の紙を取り出した。
そして教科書を開き、単語を幾つか書き出していく。そして出来上がったのはびっしりと敷き詰められた文字列。一見すれば難しい単語を覚えるため書いたように思える。その中にスズメは幾つかの単語を残した。『クーデター』、『計画』、『おじょうさま』。
斜めや縦に読むと読めるそれにヨルが気付いてくれるか分からない。逆に犯人グループに見つかって処分される可能性もあるし、処分されなくてもヨルがこの紙に気付かない可能性だってある。それでも届く事を信じて紙を丁寧に折り畳むと、窓から外の茂みに放り投げた。
そして窓をしっかり閉じると、タイミングよく執事長が食事を運んでくる。
「昼食です」
「ありがとうございます」
この執事長は少し苦手だ。昼行性の鳥人への嫌悪が透けて見えている。今も鋭い眼光が此方を見下ろしていた。
執事長は料理をテーブルに並べる。サラダにスープ、パンに肉料理。最後にデザートまで用意されていて何だか恐縮してしまう。
「さぁどうぞお座りください」
執事長は椅子を引いて此方を振り返った。それに応じようとして一歩足を踏み出した瞬間、部屋の中の空気が変わる。ピリッとした緊張感。
(なんだ・・・・・・?)
何か違和感がある。理由がある訳では無い。アウトサイドで生き延びた過去の経験か野生の感か。自分の中の何かが危険を感じ取り、頭の中で警鐘を鳴らしている。じりっと後退りすると執事長は溜め息をついた。
「『どうぞお座りください。マナー違反ですよ』」
執事長の両目が怪しく赤く光った。するとどうしたことだろう。
身体が勝手に椅子に座るべく動き出す。
「な、んで・・・・・・」
「『執事』の称号ですよ。マナー違反を取り締まる能力です」
身体が自由に動かせないでしょう? と執事長は嫌らしく笑った。どうやら条件を満たす事で相手の動きを操る能力らしい。
「ヨル様のように自在に相手の動きを操ることは出来ません。精々廊下を走るのを止めたり、椅子に座らせたりする程度です。しかしそんな能力も使い方次第・・・・・・」
ストンと椅子に座る。未だ身体は指一本動かせない。冷や汗が背中を伝った。
スズメの首に執事長の手がかかる。
「俺に手を出せばヨルが気付くぜ」
「構いません」
執事長ははっきりとそう言うと、思い切り力を入れてスズメの首を絞めた。
「ぐ、ぅぅぅ・・・・・・!」
「次に当主になられるのはトコヤミ様ですから」
抵抗したくても何も出来ない。酸素が失われた頭ではどうすれば良いかも考えられなかった。
「トコヤミ様と私兵団長の話を聞いていたでしょう。その後は屋根裏を這いずっていた。気付かれないと思いましたか?」
私たちはずっと貴方を見張っていたのですよ、と執事長は続ける。
「・・・・・・っ!」
「余計なことをしなければ生きてここを出られたのに。馬鹿ですね」
執事長の嘲笑する声を最後にスズメの意識はプツリと途切れた。
何気なく机の上に目を向けるとヨルが持ってきてくれた勉強道具が目に入る。
(俺に万が一のことがあったら・・・・・・)
スズメはあと三日帰らないヨルのことを考えた。味方のいないこの屋敷で無事に三日間過ごせるだろうか。やはり一度屋敷を抜け出すべきか。しかしクーデターの情報をもっと集めたいという気持ちもある。
スズメは一枚の紙を取り出した。
そして教科書を開き、単語を幾つか書き出していく。そして出来上がったのはびっしりと敷き詰められた文字列。一見すれば難しい単語を覚えるため書いたように思える。その中にスズメは幾つかの単語を残した。『クーデター』、『計画』、『おじょうさま』。
斜めや縦に読むと読めるそれにヨルが気付いてくれるか分からない。逆に犯人グループに見つかって処分される可能性もあるし、処分されなくてもヨルがこの紙に気付かない可能性だってある。それでも届く事を信じて紙を丁寧に折り畳むと、窓から外の茂みに放り投げた。
そして窓をしっかり閉じると、タイミングよく執事長が食事を運んでくる。
「昼食です」
「ありがとうございます」
この執事長は少し苦手だ。昼行性の鳥人への嫌悪が透けて見えている。今も鋭い眼光が此方を見下ろしていた。
執事長は料理をテーブルに並べる。サラダにスープ、パンに肉料理。最後にデザートまで用意されていて何だか恐縮してしまう。
「さぁどうぞお座りください」
執事長は椅子を引いて此方を振り返った。それに応じようとして一歩足を踏み出した瞬間、部屋の中の空気が変わる。ピリッとした緊張感。
(なんだ・・・・・・?)
何か違和感がある。理由がある訳では無い。アウトサイドで生き延びた過去の経験か野生の感か。自分の中の何かが危険を感じ取り、頭の中で警鐘を鳴らしている。じりっと後退りすると執事長は溜め息をついた。
「『どうぞお座りください。マナー違反ですよ』」
執事長の両目が怪しく赤く光った。するとどうしたことだろう。
身体が勝手に椅子に座るべく動き出す。
「な、んで・・・・・・」
「『執事』の称号ですよ。マナー違反を取り締まる能力です」
身体が自由に動かせないでしょう? と執事長は嫌らしく笑った。どうやら条件を満たす事で相手の動きを操る能力らしい。
「ヨル様のように自在に相手の動きを操ることは出来ません。精々廊下を走るのを止めたり、椅子に座らせたりする程度です。しかしそんな能力も使い方次第・・・・・・」
ストンと椅子に座る。未だ身体は指一本動かせない。冷や汗が背中を伝った。
スズメの首に執事長の手がかかる。
「俺に手を出せばヨルが気付くぜ」
「構いません」
執事長ははっきりとそう言うと、思い切り力を入れてスズメの首を絞めた。
「ぐ、ぅぅぅ・・・・・・!」
「次に当主になられるのはトコヤミ様ですから」
抵抗したくても何も出来ない。酸素が失われた頭ではどうすれば良いかも考えられなかった。
「トコヤミ様と私兵団長の話を聞いていたでしょう。その後は屋根裏を這いずっていた。気付かれないと思いましたか?」
私たちはずっと貴方を見張っていたのですよ、と執事長は続ける。
「・・・・・・っ!」
「余計なことをしなければ生きてここを出られたのに。馬鹿ですね」
執事長の嘲笑する声を最後にスズメの意識はプツリと途切れた。
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