『庭師』の称号

うつみきいろ

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序章、第一話

誰だ!?

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「ん・・・・・・?」

 スズメは真っ暗な部屋の中で目を覚ました。此処があの世だろうか。でもその割には絞められた首は痛いし、手足を縛り上げられている感触がある。

(生きてる・・・・・・?)

 てっきり殺されたとばかり思っていたので少々混乱した。その混乱を打ち消すように誰もいないと思っていた部屋にランプの灯りが灯る。

「目が覚めたか」

 そこには黒いフードを被った男が立っていた。

「誰だ!? ていうかなんで俺は生きてんだよ!」

 湧き上がる疑問と恐怖にスズメは叫ぶ。しかし男の方は動じることなく落ち着き払っていた。

「御当主様だよ。執事長がお前を殺そうとしている時に、お前と話をしに来た御当主様が部屋を訪れたんだ」
「俺と・・・・・・話を?」
「御当主様はヨル様の影響で昼行性の鳥人に興味深々でね」

 お前がどういう鳥人か確かめに行ったみたいだ、と男は語る。

「突然現れた御当主様に執事長は動揺して、お前が突如失神したことにした。結果お前はギリギリ助かった訳だ」
「じゃあなんで俺は捕まったままなんだ?」
「下っ端の俺にわかる訳ねぇだろ。俺は御当主様にお前を捕まえて隠しておけと言われただけだ」

 友好的に見えた当主がスズメを閉じ込めておくように命じたという。命を救っておきながら、そんなことをする理由が全くもって分からない。一体鴉族の当主は何を考えているのだろう。

「安心しろ、殺せとは命じられていない。食事や水も与えるように言われている。後でパンでも持ってきてやるさ」

 そう言うと、ひとまず水の入った瓶を前に置かれる。

「手足縛られててどうやって飲むんだよ」
「お前の能力については聞いている。そのままでも飲めるだろう?」

 さりげなく縄を解かせようとしたが失敗に終わり、スズメは仕方なく『庭師』の力を使ってつる植物を操ると、器用に水の瓶を掴み口元に持ってきた。そこでピタリと動きを止める。

「安心しろ、毒なんか入れてないさ。言っただろう。殺せとは命じられていない」
「お前は執事長や『お嬢様』とやらの仲間じゃないのか」
「俺は御当主様に命を救われた身でね。あの方は身寄りの無い子供だった俺を引き取って育ててくれた。だから御当主様の為にしか動かないのさ」

 男の言葉には力強さが宿っていた。
恐らく嘘では無い。そこには確かに裏付けされた忠誠心が垣間見えた。

「でも私兵団なんだろう?」
「ああ私兵団員だ。だから表向きは私兵団長の言うことを聞く。しかし私の心は御当主様にある。・・・・・・まぁ私兵団の中じゃそれ程位が高い訳でもないがね」

 色々と複雑なのさと男は笑った。そしてこの話はもう終わりだとばかりに踵を返すと、静かに部屋を出ていく。
 錠の閉まる音がして、漸くスズメは諦めて瓶の中の水を飲んだ。
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