『庭師』の称号

うつみきいろ

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第四章

一件落着?

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「な、なんだこれ・・・・・・」

 川の上流、もう少し先に行けば海と砂浜が広がる地帯。そこには真っ白な花がびっしりと生えていた。どこを見ても白、白、白。こんなにたくさんスズランが群生しているのをスズメは見た事がない。

「こんなに毒草が生えてたら水が汚染されるのも分かるぜ」
「いいや、君は何も分かっていない」
「はぁ!? お前さっきから喧嘩ばっかり売りやがって何なんだよ!」

 噛み付くハークをものともせずフクロウは話し続ける。

「ここのスズランは普通のスズランより多くの毒素を含んでいるんだ。数字で表すならその量は通常の百倍」
「百倍って・・・・・・」

 それが本当ならここの川の水の毒の濃度は如何程だろう。もしかしたら水に入るだけで危ないのではないだろうか。

「早くスズランを枯らしてしまわないといけませんね」
「具体的にはどうやるんだい?」
「死は生の先にあるものです。スズランの成長を更に促す。それだけで自然に枯れるはずです」

 フクロウの質問に答えた後、スズメは深呼吸した。これだけの量のスズランを枯れるまで成長させるのは骨が折れる。心してかからねば。

 スズメは目を閉じてスズランに手を翳した。身体中から溢れる熱をそのまま手に集める。「スズランよ、成長せよ」と心の中で念じると、スズメの手元が淡く緑に光った。

 ゆっくりと目を開けると同時にスズランたちが一斉に成長を始める。背が高くなり花が大きく開いた後、全体が茶色になって萎れ、枯れていく。

成功だ。

「予想以上の能力だ。この数のスズランを全て枯らせることが出来るとは・・・・・・」
「これで一件落着なんですか?」
「川の水を測定してみよう」

 フクロウは背中の機械を再び取り出してカチャカチャと操作する。林檎と同様、川の水を採取して毒素の有無を測定するつもりらしい。

「それにしても君の力は応用性が高いね。君の遺伝子を一度研究してみたいものだ」
「遺伝子?」
「そう、称号持ちには必ず遺伝子に特別な情報が組み込まれているんだ。僕の専門は本来遺伝子研究でね」

 難しいことを話そうとしている気配にスズメは思わず逃げ出したくなった。訓練学校を主席で卒業したスズメだが、本来勉強は好きではない。恐らく表情にもしっかり面倒臭いと出てしまっていると思うが、気付いているのかいないのかフクロウは話すのをやめない。

「僕は称号持ちが生まれるのには古代文明が関係しているんじゃないかと思っているんだ」
「古代文明、ですか」
「そう。今より二十万年前、この世界には僕らよりもはるかに発展した文明を持った『人間』という知的生命体が存在していた。これは遺跡の研究によって既に分かっていることだ」

 そういえばスズメの育ったアウトサイドにも遺跡がいくつか点在していた。鉄と割れない硝子で出来ていて、何に使うかも分からない機器の残骸があちこちに転がっていた記憶がある。フクロウが話す通り、遥か昔の代物だったのだとしたら現代に形を残していること自体物凄いことなんじゃないか。そういう意味では自分たちより発展した文明を持っていたと言われても納得できる。

「彼らは遺伝子を操作する技術を持っていた。そしてここからが本題。我々鳥人の称号持ちの遺伝子にも遺伝子操作の痕があるんだ」

 興奮した様子のフクロウは機械そっちのけで立ち上がる。

「つまり今いる称号持ちは古代の人類によって何らかの意図を持って生み出されたのではないかという仮説さ!」

 ばっと手を広げると同時、いや、それよりも前にフクロウの背後に植物の蔓とスズランの大群が押し寄せる。

「危ない!」

 スズメは咄嗟にフクロウの手を掴み、川から遠い場所に放り投げた。

「またスズランが生えてきた!」
「・・・・・・っ! なんだこの成長速度! あり得ない!」

 ハークとロムが警戒体制を取る中、植物の蔓がスズメの四肢を捉えた。

「・・・・・・っ!」
「スズメ!」

 慌てて能力を使おうとするが、とんでもない力で縛り上げられ、あっという間に川底へと引き摺り込まれる。ゴポポポポ、と水の音が響く。そこでスズメの意識はぷつりと途切れた。
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