『庭師』の称号

うつみきいろ

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第四章

息してないんだよ・・・!

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 ◆

「良かった、ロム! スズメ!」
「川の毒も零になった! 植物の暴走も止まったようだ! 素晴らしい!」

 スズメの上半身を抱き起こして座り込むロムに、ハーク、コマドリ、フクロウの三人は直様駆け寄る。しかしロムの顔が暗いのをみて一同は動きを止めた。

「・・・・・・スズメ、動かないんだ」
「ロム?」
「息してないんだよ・・・・・・っ!」

 小さな身体をぎゅっと抱き締めるロムの目からは涙が零れ落ちる。いつもポーカーフェイスで、何にも興味がないように振る舞っている彼からは想像出来ない悲しみと絶望に染まった表情。その肩は僅かに震えていて、まるで凍えそうになっている子供のようだ。

「僕は一度スズメを助けてる! だからもう治せないのに! どうして!」

 スズメは何回名前を呼んでも応えない。だらりと全身をロムに任せ脱力している。

 その胸はロムの言う通り動いていないようだった。ハークは何も言えずにロムの肩に手を添え、コマドリはスズメの冷たい手をそっと握る。そんな中、冷静だったのはフクロウだった。

「みんな落ち着きたまえ」

 フクロウは背中の機械を下ろし腕捲りをすると、まずはハークに質問した。

「ハークくん、君は装備品の類いなら作れるんだろう? 医療器具はどうだ?」
「救急セットレベルのもんなら作れるが・・・・・・」
「では手動の人工呼吸器を出してくれ。支部長はスズメくんを寝かせたまえ」
「何を・・・・・・」
「私は医術の心得もあるのでね」

 テキパキと指示を飛ばすフクロウは人工呼吸器を口元に被せられ寝かせられたスズメに馬乗りになると心臓マッサージを開始した。

「五まで数えたら人工呼吸器のポンプを押せ! いくぞ!」

 一、ニ、三、四、五! とフクロウが心臓マッサージと共に掛け声をあげる。呼吸器のポンプを握るのはハークだ。

「要は溺れただけだ! 時間を考えればまだ蘇生する可能性はある!」

 フクロウは次にスズメの上着のボタンを外すと胸元の水気を拭き取り、背中に背負っていた機械からコードのついた謎の器具を取り出した。

「よし、一旦みな離れたまえ!」
「何する気だよ!?」
「電気ショックを与える!」
「は!?」
「いくぞ!」

 フクロウは器具をスズメの身体に押しつけた。瞬間、電気が走り、スズメの身体がガクンと動く。

「もう一度!」

 スズメの胸元に耳をあてた後にフクロウは叫び、再び電気ショックを流す。そしてまた心肺蘇生を再開した。

「とにかく君たちはスズメくんに呼び掛けたまえ!」
「分かった!」

 規則的な心臓マッサージと人工呼吸器の音に混じってハークとコマドリの声が重なる。

「おいスズメ! しっかりしろ!」
「生きるのよ、スズメくん!」

 傍で懸命に叫ぶ二人。しかしスズメは反応しない。

「ロム、お前も何か言えよ!」

 ハークは痺れを切らして、後ろにぼーっと突っ立っているロムを怒鳴りつけた。

「・・・・・・ッ!」

 すると呪縛から解き放たれたように顔をあげたロムが慌ててスズメに駆け寄る。そしてしっかりとスズメの手を握り締めると、精一杯の大声でスズメに呼び掛けた。

「スズメ! ヨルの代わりに世界を変えるんじゃないのか! 戻ってきて何とか言ってよ!」

 刹那。

 ゴポリ、と。
 スズメの口から大量の水が吐き出され、続いて大きく咳き込む音が響いた。

「スズメ!」
「蘇生成功だ!」

 ロムは感極まってスズメに縋り付く。良かった。戻ってきた。今度こそ失わなかった。安心したら今度は怒りが湧いてくる。また無茶ばかりして。

「僕の前で勝手に死ぬな! 馬鹿!」
「ロム・・・・・・?」

 目を覚ましたスズメは何が何だか分からないという顔でロムを見返す。それに続いてハークが頭を軽く小突いてきた。

「心配させやがって。一体何やったんだ? でっかい木が生えてきたと思ったら水は綺麗になるしスズランは大人しくなるし・・・・・・」
「本当に無事で良かった。これで都に帰れるわね。きっとトビたちがお待ちかねよ」

 微笑むコマドリにスズメは全てが終わったことを悟った。和やかな雰囲気に包まれる中、突然フクロウが立ち上がる。

「しかし生き返ってくれて助かったよ、スズメくん! これで君を研究できる!」
「てめぇまだそんなこと言ってんのか!」
「ハークくん、短気は損気だよ。さぁ、スズメくん水の中で何があったか話してもらおうじゃないか! さぁ! さぁ!」
「ええっ!?」

 川のせせらぎをスズメの悲鳴が掻き消す。
 かくして最東端の毒川での任務は終わりを告げたのだった。
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