106 / 119
第五章 私が託せるもの
早く言え!!!
しおりを挟む
「そう言う事は早く言ってくれないかしら…………?」
遠くで、何かが崩れるような音を耳にした後、私は今も壁を背に保たれているスメラギに抗議する。
「ふっ…………性分だ。許せ…………」
許せるか!!!
そう心の中で叫び声を上げながら、不敵に笑う迷惑極まりない男を睨み付けるが、そんな事など気にする風もなく、何気ない感じで恐ろしい言葉を言い放つスメラギ。
「多分、さっきの音は、この町の城壁が破壊されたのだろう」
は…………?
城壁を破壊…………?
何気に恐ろしい事を平然と言い放つこいつに、今度は呆れ返る私。
この世界において、町は五十メートルにもなる巨大な壁で覆われている事が大半だ。
常日頃から魔族の脅威に脅かされている上に、魔物などの侵入を防ぐ役割もあるそれは、現代の魔法使いが使う事が出来ない特殊な結界型の古代魔法を付与されている。
その付与された古代魔法のおかげで、弱者である人類は生きながら得て来た。
だが、その壁が壊されたとなれば、結界に穴が空き、魔物などの出入りが容易になる。
つまり、この町が未曾有の災害に襲われると言う事を意味する。
なのに、民を守る側であるこいつは、仕方がないとばかりに、諦めムード全開で、何もしようとしていない。
「一体、何を考えているのかしら…………?」
「何も考えていないだけなのだよ」
スメラギは私の問いに即答すると、悲しげに私の方へと視線を向ける。
何なのだろう…………?
この違和感は-------------
何か、スメラギがスメラギらしくないような…………。
「そういえば、私とした事がつい、うっかりしていた。今、この町に、ミリヤが来ていたのを伝え忘れていた」
っ!?
あの子が…………此処に…………!!?
「彼女の事だから、今頃、きっと、事態を収集する為に奔走する筈だ。
行くなら、早く向かってやった方がいいかもしれんぞ?
何せ、相手は私の実力でも歯が立たないだろうからな…………」
こいつ…………わざとやっているわね。
昔からそうだ。
いつも人を小馬鹿にしたような態度で、見透かしたように迷惑極まりない事を平然とやって退ける。
ウザくて、腹立たしくて……………………そして、お人好しな奴だ。
「言われなくてもそうするわよ…………」
私がため息混じりにそう言い放ち、勢い良く部屋に入るなり、窓から颯爽と飛び出して行く。
そんな私の背中を眺め、「すまない」と懺悔するように、スメラギはそっと呟いた。
遠くで、何かが崩れるような音を耳にした後、私は今も壁を背に保たれているスメラギに抗議する。
「ふっ…………性分だ。許せ…………」
許せるか!!!
そう心の中で叫び声を上げながら、不敵に笑う迷惑極まりない男を睨み付けるが、そんな事など気にする風もなく、何気ない感じで恐ろしい言葉を言い放つスメラギ。
「多分、さっきの音は、この町の城壁が破壊されたのだろう」
は…………?
城壁を破壊…………?
何気に恐ろしい事を平然と言い放つこいつに、今度は呆れ返る私。
この世界において、町は五十メートルにもなる巨大な壁で覆われている事が大半だ。
常日頃から魔族の脅威に脅かされている上に、魔物などの侵入を防ぐ役割もあるそれは、現代の魔法使いが使う事が出来ない特殊な結界型の古代魔法を付与されている。
その付与された古代魔法のおかげで、弱者である人類は生きながら得て来た。
だが、その壁が壊されたとなれば、結界に穴が空き、魔物などの出入りが容易になる。
つまり、この町が未曾有の災害に襲われると言う事を意味する。
なのに、民を守る側であるこいつは、仕方がないとばかりに、諦めムード全開で、何もしようとしていない。
「一体、何を考えているのかしら…………?」
「何も考えていないだけなのだよ」
スメラギは私の問いに即答すると、悲しげに私の方へと視線を向ける。
何なのだろう…………?
この違和感は-------------
何か、スメラギがスメラギらしくないような…………。
「そういえば、私とした事がつい、うっかりしていた。今、この町に、ミリヤが来ていたのを伝え忘れていた」
っ!?
あの子が…………此処に…………!!?
「彼女の事だから、今頃、きっと、事態を収集する為に奔走する筈だ。
行くなら、早く向かってやった方がいいかもしれんぞ?
何せ、相手は私の実力でも歯が立たないだろうからな…………」
こいつ…………わざとやっているわね。
昔からそうだ。
いつも人を小馬鹿にしたような態度で、見透かしたように迷惑極まりない事を平然とやって退ける。
ウザくて、腹立たしくて……………………そして、お人好しな奴だ。
「言われなくてもそうするわよ…………」
私がため息混じりにそう言い放ち、勢い良く部屋に入るなり、窓から颯爽と飛び出して行く。
そんな私の背中を眺め、「すまない」と懺悔するように、スメラギはそっと呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる