聖女転生魔法 〜憎き聖女を殺す為に、俺は聖女へと生まれ変わる〜

水先 冬菜

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第五章 私が託せるもの

早く言え!!!

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「そう言う事は早く言ってくれないかしら…………?」

 遠くで、何かが崩れるような音を耳にした後、私は今も壁を背に保たれているスメラギに抗議する。

「ふっ…………性分だ。許せ…………」

 許せるか!!!

 そう心の中で叫び声を上げながら、不敵に笑う迷惑極まりない男を睨み付けるが、そんな事など気にする風もなく、何気ない感じで恐ろしい言葉を言い放つスメラギ。

「多分、さっきの音は、この町の城壁が破壊されたのだろう」

 は…………?

 城壁を破壊…………?

 何気に恐ろしい事を平然と言い放つこいつに、今度は呆れ返る私。

 この世界において、町は五十メートルにもなる巨大な壁で覆われている事が大半だ。

 常日頃から魔族の脅威に脅かされている上に、魔物などの侵入を防ぐ役割もあるそれは、現代の魔法使いが使う事が出来ない特殊な結界型の古代魔法を付与されている。

 その付与された古代魔法のおかげで、弱者である人類は生きながら得て来た。

 だが、その壁が壊されたとなれば、結界に穴が空き、魔物などの出入りが容易になる。

 つまり、この町が未曾有の災害に襲われると言う事を意味する。

 なのに、民を守る側であるこいつは、仕方がないとばかりに、諦めムード全開で、何もしようとしていない。

「一体、何を考えているのかしら…………?」

「何も考えていないだけなのだよ」

 スメラギは私の問いに即答すると、悲しげに私の方へと視線を向ける。

 何なのだろう…………?

 この違和感は-------------

 何か、スメラギがスメラギらしくないような…………。

「そういえば、私とした事がつい、うっかりしていた。今、この町に、ミリヤが来ていたのを伝え忘れていた」

 っ!?

 あの子が…………此処に…………!!?

「彼女の事だから、今頃、きっと、事態を収集する為に奔走する筈だ。

 行くなら、早く向かってやった方がいいかもしれんぞ? 

 何せ、相手は私の実力でも歯が立たないだろうからな…………」

 こいつ…………わざとやっているわね。

 昔からそうだ。

 いつも人を小馬鹿にしたような態度で、見透かしたように迷惑極まりない事を平然とやって退ける。

 ウザくて、腹立たしくて……………………そして、だ。

「言われなくてもそうするわよ…………」

 私がため息混じりにそう言い放ち、勢い良く部屋に入るなり、窓から颯爽と飛び出して行く。

 そんな私の背中を眺め、「すまない」と懺悔するように、スメラギはそっと呟いた。

 
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