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第二章 規格外の魔導書

何故、俺は…………。

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「それで…………? 何か私に言う事はない……?」

 いまいち、状況が理解出来ない。

 何故、俺は起きて早々、正座しているのだろう。

 何故、俺は起きたら、顔中痛い上に、包帯でグルグル巻きにされていたのだろう。

 そして、何故、俺は一美さんの前で説教を受けているのだろう。

 駄目だ…………。

 思い返そうとしても、一向に思い出せん…………。

 とりあえず、分かるのは、一美さんが物凄くお怒りだと言う事だけだ。

「心当たりがないのですが……?」

 とりあえず、惚けてみる。

 そうしたら、一美さんは目を細めて、物凄い眼光で俺を睨み付けて来る。

「惚ける気……?」

「惚けるって…………。何を……?」

 一美さんは仕方ないとばかりに肩を竦めると、スカートのポケットから何かを取り出し、俺に突き付けて来る。

「これは何……?」

 それは携帯端末…………スマホのような何かだった。

「それは何だ……?」

 本気で分からない俺は疑問符を浮かべて、一美に尋ねると一美は心底呆れたように問い質して来た。

「何って…………あなたが今来ている服の内ポケットにこれが入っていたんだけど……?」

「今の……?」

 よくよく見てみれば、俺も何か服を着用していて、驚いた。

「おいおい、何だよこれは!?」

 俺、こんな服持ってたっけ……?

 そんな俺の様子に、一美の目が点になる。

「もしかして…………昨日の事、覚えてないの……?」

「覚えてないって…………。

 俺、お前に何かしたか……?」

 もしかしなくても、一美を怒らせるようなやばい事をしたのか、俺……?

 だから、一美は怒っているのか……?

 すると、一美は訝しげに俺を見た後、口元に手を当てて…………考え込み始めた。

「あの~……………………一美さん…………?」

「ちょっと、黙って…………」

「はい…………」

 俺は姿勢正しく、背筋を伸ばして待ちました。

「……………………」

 しばしの静寂…………。

 無言のまま考え込んでいた一美さんは突如、スカートのポケットからまたもや何かを取り出した。


 あれはスマホ……?

 それを耳に当て、話し出す。

 どうやら、何処かに連絡をしているようだ。

 何処となく、いつもより真剣な一美は難しい顔でその相手と会話しながら、俺の方を見つめて来る。

 一体全体、どうしたんだ……?

 すると、話が終わったのか。

 一美はスマホを仕舞うと、いきなり真剣な面持ちで俺の肩を掴んで来た。

「え……?」

 肩を掴まれた俺はというと、正直戸惑っていた。

 何故なら、一美は俺から目を離す事なく、俺をある所に連れて行くと言うのだ。

 そこはこの国の国民なら誰もが知っている有名な場所。

 王立魔法医療特務機関『あずさ

 聖戦関連の医療機関で、聖戦参加者の治療や肉体的な調査を主にしている政府公認の医療施設である。

 何故、そこに俺みたいなのが…………。

 と聞きたいが、危機迫った感じの一美は俺の話を聞く筈もなく、着替えを迫られた俺は渋々それに従い、一美と連れられて向かった。

 今、自分の身に何が起きているのか、気付く事もなく…………。
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