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第1章 救世の聖女

食事中はお静かに

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 --------帰るか……。

 何か知らんが、あのクソ野郎共は周りでヒソヒソと話している同僚の話を聞いてみても誰か人を探しているらしい。

 しかも、かなり切羽詰まっているのか、かなり焦っている様子。

 絶対何か厄介な案件があって、その人しか頼めないような面倒なものだと俺は推測した。

 正直、一発とは言わずぶん殴りたい気持ちがかなりあったが、触らぬ神に祟りなし。

 仕事の内容も別に今日報告する必要もないし、何か美味いもんでも食いに行くとするかな……。

 そう思って、踵を返そうとした時だった。

「だから、レイフォードをささっと出しやがれ!!!!」

 顔を真っ赤にしたアレクトラがいきなり腰のベルトにぶら下げていた短剣を引き抜き、受付嬢に斬りかかった。

 見過ごせなかった俺はサッとアレクトラと距離を詰めるとアレクトラの右手首を掴んで、そのまま背負い投げ、地面に叩きつけた。

「ごふっ!!!」

 ちょっと勢いがつき過ぎたのか、アレクトラは変な規制を上げて、白目をいたまま気を失っていた。

「仕事は終えた。確認の方を頼む」

 俺はそれを一瞥した後、何事もなかったように受付嬢の方に報告書を提出した。

 受付嬢はしばらく呆然としていたが、すぐに再起動して報告書を確認して、問題ないと判断し、俺はその報酬を受け取るとその場を離れていこうとする。

「ま、待て!!!」

 何か聞こえた気がしたが、知らん顔で俺は歩みを止めようとしない。

「待てと言っておろう!!!」

 何か肩に手をかけられた気がしたが、とりあえず投げておこう。

「ぐっ!!! ええいっ!!! 貴様!!! おい、その者を直ちにひっ捕らえろ!!!!!!」

 何か、矢鱈やたらとがたいの良い連中が何か飛び掛かって来たけど、とりあえず全員腹パンでもしておくかね。

「ぐっ!!!」

「ぐおっ!!!!」

「がっ!!!!!!」

 さて、晩飯は何食べよっかなぁ~……。


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「ようやく見つけたぞ!!!」

 俺が優雅に晩飯を食べていると、あのクソ野郎共が店に入ってきた。

 正直、超うぜぇ~…………。

「ようやく見つけたぞ。レイフォードよ」


「おやっさん! 替え玉一つ!」

「あいよ! 替え玉一つだな!!」

 うん。

 やっぱりここのラーメンは格別だなぁ~。

 いつ食べてもこの味だけは病みつきになる。

 ああ、明日も明後日も食べに来ようかなぁ~……。


「おい! 聞いているのか、レイフォードよ!!!!」

 明日はメンマやチャーシューをトッピングするのも良いなぁ~。

 いや、ここはチャーハンとセットという手も……。

「レイフォード!!!!!!!」

「うっさいなぁ~……。ん? あんた誰? いつからそこにいたの?」

「き、きさまぁぁぁ~……」

「もう何怒ってんのか分かんないけど……。そんなに怒ってると血管キレちゃうよ。こうプツンと……。落ち着いて落ち着いてぇ~」

 俺が人差し指と中指でハサミの仕草をするとクソ野郎の国王様の顔に青筋が浮かんでいた。

「まあ良い。レイフォード貴様に折り入って頼みがある」

「おやっさん! 替え玉まだかなぁ~!」

「はいよ! 替え玉お待ちいい!!」

「やったあああ!! ずる…………うん、うまい!!!」

「話を聞けええええ!!!!」

「だから、うっせえよ……」

「ぐっ……!!!」

 何か胸ぐら掴んで来たが、とりあえず腹パン。
 そんでもって、腹を抱えている国王陛下の頭を勢いよく踏んでおこう。

 さっきから鬱陶しいし……。

「ぐふっ!!!!」

「食事中はお静かに、ね……」
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