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第1章 救世の聖女

異変

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「おら! もう一丁!!」

蜃気楼マジック・ミスト

 姉のシリアが国王へ目掛け走り出した妹に幻影魔法を発動させた。

 その瞬間、ミリアを模した数十体にも及ぶ幻影が現れ、国王を翻弄する。

 ミリアは突然の事に、困惑している国王を嘲笑うかのように幻影の中に紛れて、高速の連撃を繰り出し、殴り続けた。

 幻影をおとりにし、空きあらば、打撃を打ち込み、仕留める。

 いつもなら必勝の戦法なのだが………………。

 
「っ…………!?」

 国王は両腕で地面を殴り付け、その衝撃波で自身の周りのものを全て吹き飛ばした。

 
 ミリアは吹き飛ばされながらも、受け身を取り、地面に大楯を突き刺し、衝撃波を受け止めている姉のシリアの背後に隠れた。

 
「…………手強い…………」

「ホントだね!!」

 何で、嬉しそうなんだか…………。

 それよりも、やっぱり魔獣化しただけあって、国王の戦闘能力は飛躍的に上がっている。

 なら…………。
 

「っ!!」

 私はアスカとシリアに目配せして、再び国王との距離を詰め始めた。

「ランダム・シューター!」

身代わりの盾フェイク・シールド
 
 
 アスカは拡散系の魔法を発動させ、国王の注意を引くと、シリアが私に一度だけあらゆる攻撃を無効化する補助魔法をかけてくれた。

 私は身体強化系の魔法を発動し、音速なみの速さで高速移動し、国王の背後を取った。

「秘剣:水神…………!」

 
 そして、両手の刀を振るい、目にも止まらぬ速さで、国王の四肢を切り落とした。

 四肢を斬り落とされた国王は絶叫する間もなく、傷口から血飛沫を噴き出しながら、前のめりになって倒れた。

 一応、魔法などで絶命したか確認をしたが、魔力反応も生命反応もない。

 どうやら、問題はないようだ。


「ふぅ…………」

「ユリシア様」


 絶命を確認して一気に緊張が解れたからか、大きく息を吐き出すと、アスカが私の元に駆け寄って来た。

 私は刀を鞘に納めつつ、アスカの方に向き直る。

 私はすぐ様アスカや他の聖女、騎士達に周囲を警戒するよう指示を出し、手の空いているものは負傷した者達の治療へと回そうとした時だった。


「逃げなさい!」

 クリスの治療を受けていたレイが大声で叫んだ。

「っ!!」

 その瞬間、膨大な魔力反応を感知すると、国王の肉体が急激に膨張し始め--------

「えっ……?」

 --------爆ぜると同時に、何かが飛び出して来た。
 
 
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