《テスト版》スキル(変身アイテム) 〜優秀な勇者の兄と比較するネガティブなTS変身ヒロインな愚弟の愚かな奮闘記!?〜

水先 冬菜

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第一章

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「ふんっ!!!」

「ぐはぁあああーー!!!」

「がっ!!!」

「ごっ!!!」

「げっ!!!」


 王都へと向かう道中-------------

 今現在、僕は盗賊を殴り飛ばしていた。

 それは戻る事、数分前の出来事-------------

 王都へと向かう決意をして、歩き始め-------------運悪く、盗賊に襲われている商隊と思しき集団と出会した。

 護衛らしい冒険者は既に皆殺され、生き残った女性達を、今まさに、盗賊達による穢らわしい何かが、行われようとしていて-------------

 気が付いたら、僕は先程の少女の姿になって盗賊達をボコボコにしていた。

 腹が立ったのもある。

 むかついたからでもある。

 だけれど、それ以上に助けなきゃ-------------そう思った。

 その時、目の前に、化粧用のコンパクトと思しきハート型の物が宙に浮かんで開いて-------------


『ジュエル・コンパクト!』


 -------------自然にそう叫ぶと、先程、魔族を倒した腰に巻かれた大きなリボンが特徴的な白いドレスのような戦闘衣を身に纏う少女へと変身していた。

 本当に何なんだ? これは…………。


「ち、近付くんじゃねえ!!! こいつが、どうなっても----------」

「黙れ…………」

「え?」

「きゃあああーー!!!」


 一人の盗賊が、生き残った少女を人質にして-------------一瞬で、奴の目の前に入った僕に殴り飛される。

 その際、少女の首に突きつけられていたナイフは殴り飛ばした反対の手で、握り砕き、目の前に倒れて来た少女を優しく受け止めた。


「大丈夫?」

「…………え? あ、あ、あの…………」


 少女は顔を恐怖に歪めていた。

 余程、怖い目にあったのだろう。

 こんな…………こんな奴らの所為で…………!!!


「「「「「「ひっ!!!!!」」」」」」


 じっと、周りにいる盗賊共へと視線を移す。

 こんな小さい女の子を怖がらせたんだ。

 覚悟は出来てる…………よね?


「ま、待っ-------------」


 待つ訳ないでしょ?

 僕は怒りに任せて、手当たり次第に盗賊共を殴り、蹴り、殲滅した。

 殲滅して、振り返った。

 振り返り-------------


「ひっ!!!」


 僕に対して、恐怖で顔を歪めた女性達の顔が視界に入った。

 冷静になり、周りを見てみると-------------


「あっ…………」


 私に殴られて、見るも無惨な姿になった盗賊共の死に体があって------------------その血溜まりの中心に、自分が立っていて…………。


「っ…………!!!」


 僕はその場から逃げ出した。

 違う!!!

 僕はこんな事がしたかった訳じゃない!!!

 思い浮かぶのは、勇者である兄の姿。

 きっと、兄なら、こんな…………こんな惨たらしい結果なんて残さなかった!!!

 あんな小さな女の子を怖がらせる事もなかった!!!

 僕は!!!  

 僕は…………!!!!!!






『きゃあああああ!!!!』

『く、くるなぁああああーー!!!』

『こ、この子だけはどうか!!!』






「っ!!?」


 今の声は-------------!!!

 自分自信を責めながら走り続けていると、頭の中で、幾重にも重なったような微かな悲鳴のようなものが響いた。

 これは何だ?

 

『た、助け-------------』



「考えてる場合じゃない!!!」

 それは、とても奇妙な感覚だった。

 頭に響く救いを求めるような叫び。

 それが、何処からか聞こえ、何処へ向かえば良いのか。

 僕には分かった。

 声のする方へ辿り着くと、狼のような魔物の群れに襲われている人の姿が-------------


「くっ!!!」


 躊躇う事なく、その魔物群れの中心に僕は突っ込んだ。

 突っ込んで、その中心地にいた狼の魔物の頭を上からドロップキックをかまして、地面に叩き付けた。

 当然、頭部を叩きつけられた魔物はすぐに死に絶え-------------回りの魔物の注意が、僕に集まった。


「走れ!!!!」


 一斉に、僕に襲い掛かって来る魔物。

 それを華麗な体捌きで、交わしつつ、蹴るなり、殴るなり、放り投げるなりして、対応しながら、逃げ惑う人々に力いっぱいに叫ぶ。


「「「っ!!!!」」」


 皆が逃げ出す姿を確認して、僕は目の前の魔物へと意識を集中させる。

 そういえば、さっきの盗賊の時も、誰かが助けを求めている。

 そんな感じの感覚が過った。

 そしたら、商隊の人達が、盗賊に襲われていて…………。

 まさか、助けを求めている人の居場所を感じ取れているのか?


「グルヲオオオオオオ!!!!」


 最後の一体を片付け終えて、もう動く奴がいないかを確認しつつ、魔物の死体に混じっている元は人間だったであろう幾つかの肉片が目に入る。


「……………………」


 今は、そんな事、関係…………ない…………。

 どの道、僕はこの人達を救えなかった。

 今、分かる事はそれだけだ。





『誰か!!! 助けて!!!!』




「っ!!!?」


 早く行かなきゃ!!!!

 僕は走った-------------

 声のする方へ-------------

 助ける人の元へ-------------

 何故だか、先程よりも響いた声は、急いで向かわないと大変な事になる。

 それが、何故だか、分かった。

 分かってしまった。

 走る。

 走って、走って、走り続けて-------------気が付けば、目的地でもある王都に辿り着いていて…………。

 言葉を失った。


「…………これは…………何…………?」


 目の前に、僕の故郷である王都の姿がある。

 幾重にも張り巡らされた城門で囲われた堅牢な国の首都。

 そこが今、魔族の侵攻を受け、滅亡の危機に瀕していた。

 



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