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【3】旅行で少女。
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一周忌が行われる間、ご主人サマは参列者に軽く頭を下げるばかりで一言も発しなかった。周囲もその様子に何も言う事も無く、ただ同情の目を向け続ける。妹さんに聞いた話だと手放しで喜ばれるような結婚だったらしく。当時テレビなんかでも奥さんは人気者で、地元でも色々と話題になっていたらしい。
「あれ? 何処行くんです?」
会食が始まってからしばらくするとご主人サマが無言で席を立った。
「……便所」
「そうですか――、」
それが嘘だって事ぐらい、この短い付き合いでも分かる。別にこの集まりが面倒だと感じている訳でも無さそうだった。久しぶりの我が家で何処か安心しているような雰囲気すら感じる。だけど、廊下を歩いていく背中は蹴り飛ばしてやろかと思う程情けなくて何だか放って置けない。
「んぅ……」
唸っていると隣から妹さんに突かれた。
「心配?」
くりっとした可愛らしい目で私に聞いて来る。
「心配と言いますか……、なんだか寂しそうに見えたので」
「そうだねぇ……、ミサトさんとお兄ちゃん仲良かったから……。色々思い出しちゃうのかもね」
襖を閉めて向こう側に消えて行く背中はいつもよりも小さく見えて、いつも私を殴るご主人サマには見えなかった。
「ちょっと行ってきますっ」
「ん」
言って私も席を立つ。辛い時に独りになるのが正解だとは限らない。自分を見つめて見つかる物もあるけれど、失った物は戻ってこないんだ。新たしい道は自分の中には見つからない。他人との関わりの中で新しい世界に気付き、知らず内に人は変わり、過去を乗り越えて行くんだ。
「――ご主人サマっ」
襖を開けて廊下に出ると階段の向こう側に消えて行く姿が見えた。そのまま追いかけて、本当にその背中でも蹴り飛ばしてあげようと思い――、
――でもご主人サマの事、本当に全然、何も知らないんだよね。
「――――」
自然と足が止まった。
「あ、あれ……?」
いますぐ追いかけるべきだってことは分かってるのに足が動かない。それ以上ご主人サマを追いかけられない。
階段を上って消えて行く姿をただ見つめ、それが見えなくなると何処かほっとした様にも感じた。自然と溜め息も溢れる。
私はちゃんと役目を果たせてるのかな……?
半ば強引に彼に契約書にサインさせ、部屋に居座らせて貰っているけど”ハートフルパートナー”としての仕事をこなしているかと言われれば、自信が無い。自信が無いどころか何も出来てないのが正直な所だ。
「…………」
頭に浮かんだのは先日訪ねた他の利用者の事。
恋人ごっこをさせられているミコノちゃんと、玩具のように扱われていたミサキちゃん。別れ際に見せたミコノちゃんの表情が今でも時々浮かんでくる。やりきれない――、それでも嫌とは言えず笑い続けなければいけない。
ご主人サマの傍にいて、その心の傷を癒すのがハートフルパートナーだと私たちは教えられた。会長は「あなたが傍にいるだけで自然と癒されるものです」って言ってた。
……でもあれじゃパートナーなんかじゃなくて、まるで――。
「っ……」
――ヤダ、そんなの、ヤダ……。
頭に浮かんだ考えを何処かにやってしまいたくて頭を振るけれど、薄暗い部屋に並んだ人形達の映像は目を閉じても瞼の裏に浮かんでくる。光の無い目をした人形達。それと私達は何が違うって言うんだろう……?
あの子達は自分の意志を持たない。けどだから……? 自分の心を持っているからといってその役割が変わる訳じゃない。私達はご主人サマの心を癒す為に作られ、その為に使われる――。
「ハートフルパートナー……?」
違う、そんなのは絶対に違うと自分に言い聞かせる。
ご主人サマは「ああいうのは好きじゃない」と言ってくれた。だからきっと私はあんな風にはならない、あんなことは強要されない。ただご主人サマの傍で暮らし、好き勝手してるだけで良い――。
けど、それで私はいいのかな……?
ハートフルパートナーの役目が“そう言う事”なら私もそうしてあげるべきなんじゃないだろうか。もしかすると私はあそこで教えられた意味を履き違えてたかもしれない。私達の本来の目的は「そう言う事」なんじゃ……?
胸が苦しくなってそれをぐっと押さえ込む。――違う、そんなの絶対に違う……!
否定し、拒み、願う。そんな事の為に私達は作られたんじゃないと、そんな人形達の代わりに私達はご主人サマの傍に要るんじゃないと――。
――私って何なんだろ……。
ご主人サマの事を何も知らない、どうすればご主人サマの心を慰められるのか分からない。
心を癒し、傷を埋める。ハートフルパートナーとしての役目は分かってるつもりだった。きっとご主人サマの救いになれるんだと思っていた。……だけど、それは違ったらしい。
当然だ、私は何も知ろうとしてなかった。ご主人サマの辛そうな背中に私は何も言えず、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。
そもそも“ご主人サマの為に何かをしたい”っていうのはそうインプットされてるから思う事なんだろうか……? もしかしてあの事を受け入れられないのは私が欠陥品だからじゃないだろうか……?
ご主人サマはそもそも私を必要としていない。亡くなった奥さんの替わりというのなら私のような幼いタイプではなく、もう少し年齢の行った――それこそもっと年上のタイプが適任のはずだ。なのに私が配属されてるってこと自体が何かの間違い何じゃないだろうか。私は必要とされてないんじゃないだろうか。
そう思うと自信は無かった。
今急に私が居なくなったとしても、姿を消したとしてもご主人サマは何も困らない。何も驚かない。元の生活に戻るだけでこれっぽっちも悲しんだりしないだろう。
「……無理矢理契約させただけですしね……」
じゃあ私がご主人サマを助けたいと思う事はどうなんだろう……?
私は私のご主人サマを癒すためだけに作られた――だから、ご主人サマを助けたいって思うの……? ご主人サマが私に“ああいうこと”を求めて来たら私は拒まずに受け入れられるの……?
分からない分からないけど――。
「独りで行っちゃやーですよー……」
ここに一人残されるのは嫌だった。
「――ほーんっと酷い兄貴よねぇ?」
振り向けば、直ぐ傍に妹さんが立っていて、私の肩を優しく抱いてくれる。
「昔っからあーなのよ? 独りでふらふらどっかに行っちゃって。残される方は寂しいったらありゃしない」
「杏子さん……」
「多分ね、畑に行ったんだと思うわ?」
「畑……? こんな時間にですか……?」
「うん。おばあちゃん亡くなってから放ったらかしになってるんだけどね。お兄ちゃん、考え事とかなんかに行き詰まったりするとバカみたいに耕しだすのよ。何かを植える訳でもなく、ただひたすらザクザクって。なーに考えてんだか」
「そうだったんですか……」
とてもじゃないけどそんな姿は想像出来なかった。
「近所に人にも不審がられて困ったものよ? いまとなっちゃ風物詩みたいな物だけどね。"ああ、あそこの若いのがまたなんか悩んでらぁ“って」
仏頂面のまま、ただ黙々と桑を振り下ろす姿を何となく想像する。何をする訳でもなく、ただ、桑を振り下ろし、土を掘り返していく。額から流れ出す汗も構わず、ただ桑を持った手を上げて、下ろして――。
そんな様子を、少し離れた所から見つめる私はきっと何も言えず、その場にしゃがみ込んで帰りを待っている。何か声をかけてあげたいのに、言葉が思いつかず、いつしか膝に乗せていた顔を伏せてしまう。そんな光景が自然と浮かんで来て悔しい気持ちでいっぱいになる。
知りたい――。
ご主人サマの事を、もっと知りたい。
「……あ、あのっ」
「ん?」
私が声を掛けると杏子さんは優しく笑って私の目線の高さまで降りて来てくれた。
きっと私が何を言うかなんて杏子さんには分かっていたんだと思う。透き通った大きな目が私を見つめて微笑む、何も怖く無い、怖く無い――けど、それを口に出すのは何だか凄く怖い――きっと知った所で何が出来るか分からなくて、それは何だか凄く悔しくて、辛くて――でも知らなきゃずっと私はあの背中を見つめる事しか出来無いままだ。
「――お兄ちゃんの事、教えてくれませんか……?」
逃げ出したくなる気持ちを押し込んで、そのまま告げた。じっと、杏子さんの目を見つめ、やがてその目が色を変える。
「……マキちゃんはお兄ちゃんの事好きなんだね?」
何処か遠くを見るような、まるで昔の事を思い出すかのような様子で私を見る。それが何を意味してるのかいまの私にはまだ分からないけど、けど――、
「……はいっ」
ご主人サマの事を大切に想う気持ちに嘘は無い。
仕事だからじゃない、ご主人サマの為に何かをしてあげたいっていうのは私の本心だ。きっと、そうだ。求められたからじゃない、必要とされてるからじゃない。私がそうしたいと思うから、傷付いた心を助けてあげたいと私が想うから――。
ミコノちゃんの辛そうな笑顔が浮かんだ。
そうして、その意味が何となく分かった気がした。
「なら良いものが有るんだ。おいでっ」
言われ、後について行く。――私も、ご主人サマの為に出来る事探してみるよ。
「あ、そーだ」
廊下の突き当たり、部屋の扉を開けようとして何かを思い出したように杏子さんが足を止めた。
「……? どうかしました?」
見上げると「えへへ」と何だか少し悪い事を思いついた時のように笑い、
「私の事もお姉ちゃんって呼んでもらっても良い?」
と少し恥ずかしそうに告げた。
「お姉ちゃん……ですか?」
思わず繰り返すとまた笑って頭を掻いた。
「あはは、妹出来るの、夢だったんだよねぇーっ。だから、そう呼んでもらえると嬉しいかな?」
ご主人サマに何処か良く似た杏子さんの笑顔は、凄く素敵に感じた。
「あれ? 何処行くんです?」
会食が始まってからしばらくするとご主人サマが無言で席を立った。
「……便所」
「そうですか――、」
それが嘘だって事ぐらい、この短い付き合いでも分かる。別にこの集まりが面倒だと感じている訳でも無さそうだった。久しぶりの我が家で何処か安心しているような雰囲気すら感じる。だけど、廊下を歩いていく背中は蹴り飛ばしてやろかと思う程情けなくて何だか放って置けない。
「んぅ……」
唸っていると隣から妹さんに突かれた。
「心配?」
くりっとした可愛らしい目で私に聞いて来る。
「心配と言いますか……、なんだか寂しそうに見えたので」
「そうだねぇ……、ミサトさんとお兄ちゃん仲良かったから……。色々思い出しちゃうのかもね」
襖を閉めて向こう側に消えて行く背中はいつもよりも小さく見えて、いつも私を殴るご主人サマには見えなかった。
「ちょっと行ってきますっ」
「ん」
言って私も席を立つ。辛い時に独りになるのが正解だとは限らない。自分を見つめて見つかる物もあるけれど、失った物は戻ってこないんだ。新たしい道は自分の中には見つからない。他人との関わりの中で新しい世界に気付き、知らず内に人は変わり、過去を乗り越えて行くんだ。
「――ご主人サマっ」
襖を開けて廊下に出ると階段の向こう側に消えて行く姿が見えた。そのまま追いかけて、本当にその背中でも蹴り飛ばしてあげようと思い――、
――でもご主人サマの事、本当に全然、何も知らないんだよね。
「――――」
自然と足が止まった。
「あ、あれ……?」
いますぐ追いかけるべきだってことは分かってるのに足が動かない。それ以上ご主人サマを追いかけられない。
階段を上って消えて行く姿をただ見つめ、それが見えなくなると何処かほっとした様にも感じた。自然と溜め息も溢れる。
私はちゃんと役目を果たせてるのかな……?
半ば強引に彼に契約書にサインさせ、部屋に居座らせて貰っているけど”ハートフルパートナー”としての仕事をこなしているかと言われれば、自信が無い。自信が無いどころか何も出来てないのが正直な所だ。
「…………」
頭に浮かんだのは先日訪ねた他の利用者の事。
恋人ごっこをさせられているミコノちゃんと、玩具のように扱われていたミサキちゃん。別れ際に見せたミコノちゃんの表情が今でも時々浮かんでくる。やりきれない――、それでも嫌とは言えず笑い続けなければいけない。
ご主人サマの傍にいて、その心の傷を癒すのがハートフルパートナーだと私たちは教えられた。会長は「あなたが傍にいるだけで自然と癒されるものです」って言ってた。
……でもあれじゃパートナーなんかじゃなくて、まるで――。
「っ……」
――ヤダ、そんなの、ヤダ……。
頭に浮かんだ考えを何処かにやってしまいたくて頭を振るけれど、薄暗い部屋に並んだ人形達の映像は目を閉じても瞼の裏に浮かんでくる。光の無い目をした人形達。それと私達は何が違うって言うんだろう……?
あの子達は自分の意志を持たない。けどだから……? 自分の心を持っているからといってその役割が変わる訳じゃない。私達はご主人サマの心を癒す為に作られ、その為に使われる――。
「ハートフルパートナー……?」
違う、そんなのは絶対に違うと自分に言い聞かせる。
ご主人サマは「ああいうのは好きじゃない」と言ってくれた。だからきっと私はあんな風にはならない、あんなことは強要されない。ただご主人サマの傍で暮らし、好き勝手してるだけで良い――。
けど、それで私はいいのかな……?
ハートフルパートナーの役目が“そう言う事”なら私もそうしてあげるべきなんじゃないだろうか。もしかすると私はあそこで教えられた意味を履き違えてたかもしれない。私達の本来の目的は「そう言う事」なんじゃ……?
胸が苦しくなってそれをぐっと押さえ込む。――違う、そんなの絶対に違う……!
否定し、拒み、願う。そんな事の為に私達は作られたんじゃないと、そんな人形達の代わりに私達はご主人サマの傍に要るんじゃないと――。
――私って何なんだろ……。
ご主人サマの事を何も知らない、どうすればご主人サマの心を慰められるのか分からない。
心を癒し、傷を埋める。ハートフルパートナーとしての役目は分かってるつもりだった。きっとご主人サマの救いになれるんだと思っていた。……だけど、それは違ったらしい。
当然だ、私は何も知ろうとしてなかった。ご主人サマの辛そうな背中に私は何も言えず、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。
そもそも“ご主人サマの為に何かをしたい”っていうのはそうインプットされてるから思う事なんだろうか……? もしかしてあの事を受け入れられないのは私が欠陥品だからじゃないだろうか……?
ご主人サマはそもそも私を必要としていない。亡くなった奥さんの替わりというのなら私のような幼いタイプではなく、もう少し年齢の行った――それこそもっと年上のタイプが適任のはずだ。なのに私が配属されてるってこと自体が何かの間違い何じゃないだろうか。私は必要とされてないんじゃないだろうか。
そう思うと自信は無かった。
今急に私が居なくなったとしても、姿を消したとしてもご主人サマは何も困らない。何も驚かない。元の生活に戻るだけでこれっぽっちも悲しんだりしないだろう。
「……無理矢理契約させただけですしね……」
じゃあ私がご主人サマを助けたいと思う事はどうなんだろう……?
私は私のご主人サマを癒すためだけに作られた――だから、ご主人サマを助けたいって思うの……? ご主人サマが私に“ああいうこと”を求めて来たら私は拒まずに受け入れられるの……?
分からない分からないけど――。
「独りで行っちゃやーですよー……」
ここに一人残されるのは嫌だった。
「――ほーんっと酷い兄貴よねぇ?」
振り向けば、直ぐ傍に妹さんが立っていて、私の肩を優しく抱いてくれる。
「昔っからあーなのよ? 独りでふらふらどっかに行っちゃって。残される方は寂しいったらありゃしない」
「杏子さん……」
「多分ね、畑に行ったんだと思うわ?」
「畑……? こんな時間にですか……?」
「うん。おばあちゃん亡くなってから放ったらかしになってるんだけどね。お兄ちゃん、考え事とかなんかに行き詰まったりするとバカみたいに耕しだすのよ。何かを植える訳でもなく、ただひたすらザクザクって。なーに考えてんだか」
「そうだったんですか……」
とてもじゃないけどそんな姿は想像出来なかった。
「近所に人にも不審がられて困ったものよ? いまとなっちゃ風物詩みたいな物だけどね。"ああ、あそこの若いのがまたなんか悩んでらぁ“って」
仏頂面のまま、ただ黙々と桑を振り下ろす姿を何となく想像する。何をする訳でもなく、ただ、桑を振り下ろし、土を掘り返していく。額から流れ出す汗も構わず、ただ桑を持った手を上げて、下ろして――。
そんな様子を、少し離れた所から見つめる私はきっと何も言えず、その場にしゃがみ込んで帰りを待っている。何か声をかけてあげたいのに、言葉が思いつかず、いつしか膝に乗せていた顔を伏せてしまう。そんな光景が自然と浮かんで来て悔しい気持ちでいっぱいになる。
知りたい――。
ご主人サマの事を、もっと知りたい。
「……あ、あのっ」
「ん?」
私が声を掛けると杏子さんは優しく笑って私の目線の高さまで降りて来てくれた。
きっと私が何を言うかなんて杏子さんには分かっていたんだと思う。透き通った大きな目が私を見つめて微笑む、何も怖く無い、怖く無い――けど、それを口に出すのは何だか凄く怖い――きっと知った所で何が出来るか分からなくて、それは何だか凄く悔しくて、辛くて――でも知らなきゃずっと私はあの背中を見つめる事しか出来無いままだ。
「――お兄ちゃんの事、教えてくれませんか……?」
逃げ出したくなる気持ちを押し込んで、そのまま告げた。じっと、杏子さんの目を見つめ、やがてその目が色を変える。
「……マキちゃんはお兄ちゃんの事好きなんだね?」
何処か遠くを見るような、まるで昔の事を思い出すかのような様子で私を見る。それが何を意味してるのかいまの私にはまだ分からないけど、けど――、
「……はいっ」
ご主人サマの事を大切に想う気持ちに嘘は無い。
仕事だからじゃない、ご主人サマの為に何かをしてあげたいっていうのは私の本心だ。きっと、そうだ。求められたからじゃない、必要とされてるからじゃない。私がそうしたいと思うから、傷付いた心を助けてあげたいと私が想うから――。
ミコノちゃんの辛そうな笑顔が浮かんだ。
そうして、その意味が何となく分かった気がした。
「なら良いものが有るんだ。おいでっ」
言われ、後について行く。――私も、ご主人サマの為に出来る事探してみるよ。
「あ、そーだ」
廊下の突き当たり、部屋の扉を開けようとして何かを思い出したように杏子さんが足を止めた。
「……? どうかしました?」
見上げると「えへへ」と何だか少し悪い事を思いついた時のように笑い、
「私の事もお姉ちゃんって呼んでもらっても良い?」
と少し恥ずかしそうに告げた。
「お姉ちゃん……ですか?」
思わず繰り返すとまた笑って頭を掻いた。
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