『少女、始めました。』

葵依幸

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【4】ひと休みしましょうじょ?

4-5

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   ◇

「――はぁ……」

 ご主人サマが昔使っていたというノートパソコンを拝借して、「ハートフルパートナーの集い」に書き込みをしてみたけど、これと言った解決策は出ていなかった。

 記憶喪失の戻し方も、元気の無いご主人サマを笑わせる方法も。教えてもらった物は一通り試してみたのだけど効果がなかった。病院では看護師長さんにこっぴどく怒られるし、家ではどれだけふざけてみせても「なにしてんだ、バカ」って冷たくあしらわれるばかりだし――、

「もーっ! どうすればいいのさぁーっ!」

 腕に持っていたノートパソコンごと後ろに仰け反り返り、そのまま予想以上に勢いがついたのと、意外とあったパソコンの重みのせいで綺麗にバックドロップは決まった。

「……ぁ」

 液晶が本来開くはずの無い角度にまで開いている。それを天地が逆転した状態で見つめる。きっとご主人サマは怒るだろう。使っていないとはいえ、パソコンを壊したってバレたら契約破棄だなんて言い出すかもしれない。

「…………」

 冷静にくるりと体を回転させると、液晶部分を綺麗にパタリ閉じ――、

「――うし」

  元あった場所に返しておく。

 多少ケーブルがはみ出していたようだけど、まぁ気付かれなければ問題ない。私が起動させるまでずっとほこりを被っていたような物だ。あと後数日隠し通せばー……、

「……ぁ。もう、お別れじゃん……」

 お試しの使用期間は通常2週間。
 後数日で、その期間が終わろうとしている。

「……やば、どうしよ……」

 肘の部分が折れたノートパソコンは沈黙しか返してくれない。
 ぐるぐると頭の中を励ます言葉や漫才が浮かんでくるけど、何一つ形となって留まる事は無く、ただ、ぐるぐるぐるぐると回り回ってぐるぐるぐるぐる――。

「ああっ、もーっ!」

 それに抗うように床を転がってみるけれど、答えは見つからず。相変わらず頭の中は意味の無い事ばかり溢れては消えて行って。

「はぁ……、どうすればいいんでしょー……?」

 気持ちばかりが焦って仕方なかった。


  ◇
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