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【5】少年少女。
5-6
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◇
「だからこんな所来るのは嫌だったんだ!」
「そんな事無いですよ? ほら、あそこ鳥が飛んでます」
「子供じゃねぇんだからそんなの嬉しくも何ともないって!」
思い返せばここ最近ミコノの様子がおかしかった。時々暗い顔を見せたり、必要以上に僕に優しくしたり。かと思えば突然「ピクニックに行きましょう」だ。嫌だと言っているのに無理矢理押し切る形で連れてこられたし、こんな事は初めてだった。
ハートフルパートナーは理想のパートナーを派遣するサービスであり、理想の女性像が反映される。
ミコノは僕の理想で、口答えすることもなく、恋人を一途に想う彼女であるはずだった。それ以上でもそれ以下でもない。ただ僕の恋人になってくれれば良い。――それなのにこんな所に連れてくるなんて……。
「なぁ、おまえ……もしかして故障してるのか?」
「へ……?」
一瞬ミコノの表情が固まった。そりゃそうだ、もし本当に呼称してるならサービスセンターに連絡しなければいけない。岸田さんが言うには代わりのものがすぐに派遣されるそうだし、このまま故障したミコノと一緒にいるよりも――、
「ん……?」
余りにもショックだったのかミコノは固まったまま動かなかった。
「ミコノ……?」
返事は無い。焦点が有っているのかあっていないのか、大きく目を見開いて小刻みに震えていた。
「どうしたんだよ、おい……?」
本当に故障したんじゃないかと心配になり、肩をつかもうと手を伸ばすと怯えたように後ろに下がり、そうしてしまった自分の行動に驚きの色を顔に浮かべた。
「あ、あれ……? け、圭介、さん……?」
行き場を失った腕が宙に浮き、それと僕をミコノは交互に見つめて怯える。
「な、なんで、あれ……?」
戸惑い、逃げる様に後ずさり、そうしてやがて俯いては足を止めた。
「――やっぱりおかしいのでしょうか?」
押し殺したような声がミコノの口から溢れる。
「壊れてるんでしょうか、私……?」
ふらふらと危うい足取りで後ろに下がると転落防止用の柵に縋るようにもたれ掛かり、ミコノはもう一度呟く「壊れてるんでしょうか……?」と。
いまにも崩れ落ちてしまいそうな姿に思わず息が詰まる。
「み、ミコノ……?」
訳が分からなかった。
――故障していると言われた事がそれほどショックだったのか……?
ミコノがこんな風になるなんて始めてだった。いままで僕を困らせる事も、怒らせる事も無く、いつも僕の好きなように、望むようにしてくれていた。なに不自由なく、ただ望むがままに。それこそ「恋人になって欲しい」なんていう無茶な願いだって聞き入れてくれた。なんだって僕の思うがままだった。
だからこそ、こういう時どう声をかければ良いのか分からない。何をミコノが悩んでいて、どうしてそんな風に傷ついたような顔をするのかが分からなかった。
ゴクリ、と唾を飲み込むと汗が額から流れて行く。酷く心臓が脈打ってる。手をぎゅっと握りしめる。凄く気まずい、いますぐにでも逃げ出したい。
いつだってそうだ。何かあれば逃げて来た。「下らない」と「どうでもいい」と目を背けて、逃げて。その先に、ようやく辿り着いた先がミコノだ。都合の良いパートナー、恋人役。なのになんで……、どうしてそいつがこんな風に僕を苦しめる、追いつめる――?
本来こんな風に利用者を悩ませるハズが無い。僕はオーナーでミコノはパートナーだ。彼女の事で僕が悩むなんて可笑しい。変だ。だからきっと故障してるんだ、壊れてしまった。使い方が荒かったんだろうか、何か無茶をさせてしまったんだろうか……? いや、どうでもいい。交換してもらえば済むはずなんだから。
家に戻ったら連絡を入れて代わりを派遣してもらう様に言えば良い。こんな風になったミコノに取り合う必要なんて何処にも無い――。そう分かっているのに、分かってはいるのに、体が言う事を聞かなかった。
何かが邪魔をして、その場に僕を押し留める。
「すみません……、圭介さん……」
ミコノが頭を下げる。申し訳無さそうに肩を小さくし、俯く。
そんな姿にドクン、ドクンと心臓の音は大きくなり、喉の奥が乾き始める。気が焦り、何か言わなくちゃと必死に声を絞り出そうとするけどそもそも何を言えば良いのか分からない、何を言おうとしてるのかも。それでも何か、何か――、そう思って必死に絞り出した言葉は、
「僕の方こそ……ごめん……」
謝罪の言葉だった。
驚いたようにミコノが顔を上げた。
大きく、丸い目が僕を見つめる。
そうして僕自身、戸惑っていた。
――ごめん?
一体、何に僕は謝ったんだ?
一体、何を僕は言ってる……?
「けいすけ……さん……?」
そう言葉を紡ぐ姿は、いまにも粉々になってしまいそうな程に儚く、きっとここで僕が間違った言葉を掛ければガラガラと音を立てて崩れてしまいそうだった。
「や……、だから、その……ごめん」
気まずくて、どうしたら良いのか分からなくて視線をそらす。
故障してても生身の人間みたいなロボットにそんな顔をされては流石に気分が悪い。謝って済むならそれで良かった。この場さえ取り繕えるなら。
「ごめん……」
情けないなら笑えば良い。自分の飼ってるロボットに頭を下げるなんてなんて間抜けだと自分でも思う。けど、それしか言えない。言えなかった。
「……あ、あの……わ、わたし……」
ミコノは何か言葉を紡ごうとする度に息詰まり、大きな瞳に涙が浮かんでいく。
「わたし、けいすけさんが……圭介さんがっ……」
そのうち零れ落ちる涙を覆うように顔を手で隠し、しゃがみ込んでしまった。
「ごめんなさいっ……、わたし……パートナー失格ですよね……」
ぼろぼろと涙をこぼしながら僕に向かって何度も「ごめんなさい、ごめんなさい」と呟くミコノ。
どうして良いのか分からず、そのまま立ち尽くし、ミコノを見つめる事しか出来ずただその姿を見つめた。
「ミコノちゃん――、」
それまで呆然と立ち尽くしていたマキが近寄ろうとする。けどその腕を佐々木さんが掴み、それを止める。
「……圭介」
それ以上佐々木さんは何も言わなかった。ただ僕の事を睨み、先を促す。
目の前でミコノは泣き続けている。マキは困惑した様子でこちらを見つめているし、朽木さんなんて微笑ましいと言わんばかりに笑顔だった。
――んだよっ……、なんだよこれ……!
まるで見せ物にされてる気分だ、どうしてこんなことになってるのか分からない。どうして僕がミコノに対してこんな風に落ち着かない気持ちにならなくちゃいけないのか全然分からない。
「圭介さん……」
縋る様に僕を見つめたミコノに胸の奥がズキリと痛んだ。
ポロポロと涙をこぼし、苦しそうに見上げる姿に息が詰まった。
――ミコノをこんな風にさせたのは、僕……?
故障したのが原因じゃない。ミコノが自分勝手な行動を取る様になったのが理由じゃない。僕がミコノにあんな事言ったから、僕がミコノを傷付けたからこんなことになってるんだ――。
「ぁ……」
そう思うと言葉は益々見つからなくなった――……いや、そもそも僕はどうしたいんだ……?
ミコノは僕のパートナーだ。恋人役だ。だから壊れてるなら交換してもらえば良い。新しい恋人を送ってもらえば良い。――けど、「そうじゃないだろ」と誰かが言った。上手く行かなくなったから、傷付けてちゃったから新しい相手を貰えば良いだなんて、そうじゃないだろ、と。
胸の心臓の音と共に痛みは増して来ていた。
ミコノの踞る姿にどうしようもなく胸の奥が苦しくなっていた。
――僕は、ミコノにこんな顔をして欲しく無い……。
バカな話だ。ホントに笑い話だと思う。所詮ロボットで、変えなんて幾らでもいるのにそんな相手の事を思って、あまつさえ「泣いて欲しく無い」なんて本末転倒にも程が有る。……けど、違う。そうじゃない。そんな事はどうでもよくて僕はただ、ミコノに泣いて欲しく無い――こんな風に悲しい顔をして欲しく無い。
「っ……、」
ミコノが何に傷付き、泣き崩れたのかが僕には分からない。
故障してるって疑われたから……? パートナーの仕事が上手く行ってないって感じたから……?
奥歯を噛み締める――。分からない、分からないけど考えるんだ。ミコノが、ミコノがどうしてこんな風に泣くのか、どうしてこんな風に悲しんでるのか――。
膝が震える。噛み締めた奥歯はガチガチと震えた。投げかける言葉は浮かばなくて、やっぱり家に引き蘢ってた方が良かったと後悔し始める。自分の部屋に引きこもってればこんな思いしないで済んだのに……。
「……っ」
そうだ、帰れば……、家に帰ればばこんな思いしないで良いんだ。嫌な事があれば逃げれば良い、何の解決にもならない事位分かってる。けど少なくともこんな思いはせずに済む。もう辛い思いなんてせずに済むんだ。――どうして僕が、ロボットなんかの為にこんな思いをしなきゃいけないんだ。やっぱりそこの時点からしておかしいだろ。気分が悪い、こんな所にいたくない、早く家に帰りたい――いや、もういいだろ、さっさと帰ろう。帰るんだ。こんな奴放って帰ってしまえばいいんだ、代わりなんていくらでもいる。だから――、
「――……っ?」
本当に、帰るつもりだった。元来た道を引き返して、電車に乗って、部屋に戻るつもりだった。それなのに足は動かなかった。ミコノを放って置く事なんて出来なかった。
――ミコノ……。
しゃがみ込み、俯くミコノ。誰も気にも掛けてくれなかった僕に優しくしてくれたミコノ――。
「圭介」
佐々木さんの鋭い声が突き刺さる。
「餓鬼なら餓鬼らしく青春しやがれ、アホ」
それを聞いて隣の朽木さんは吹き出し、マキちゃんは主人である佐々木さんに抗議の声を上げた。
それらを蹴散らしつつ佐々木さんは告げる。
「お前のパートナーだろうが。何怖がってんだよ?」
「――僕のパートナー……?」
振り返ると丁度僕と同じように佐々木さんを見つめていたミコノと目が合う。
涙を浮かべた目が僕を見つめ、その中に自分の姿が映り込んでいた。情けないぐらいに怯え、怖がっている僕が。
「けいすけさん……」
震える唇が僕の名前を紡ぐ。
どんなつもりで僕の名前を、どんな思いで、その名前を口に出したのか僕には分からない。
ミコノが何を思っていて何を感じているかなんて僕には全然分からない。――けど、
「……僕に取ってミコノは……、」
口に出してから自分の言おうとしている言葉に詰まってしまった。
――何だっていうんだ……?
僕に取ってのミコノは企業から派遣された道具でしかない。彼女が出来るどころか、女の子とすら話せない僕が唯一話せる相手で、一生出来ないかもしれない恋人になってくれた存在だ。心の穴を埋める事を目的として作られて、派遣される。“ハートフルパートナー”なんていう胡散臭い名前の玩具。それがミコノだ――、それがミコノのはずだった。けど……本当にそうなのか、それだけなのか……?
僕に取ってのミコノは、ただの欲望の捌け口でしかないのか?
頭に浮かぶのは薄暗い、ラブドールに囲まれた部屋でニタニタと笑う姿と、それに弄ばれていた女の子。男の執拗な行為にも嫌な顔をせず受け入れ続け、喘ぐ。それは道具と呼ばれてもしたが無い姿だった。あの人は僕に「好きなようにしていい玩具だ」と説明してくれた。だから僕もミコノの事を好き勝手に扱えば良いと思っていた。好き勝手にしてきた。けど、
「……そうじゃない。そうじゃない――……」
薄暗い部屋の扉を突然開けて入って来たミコノ。
殆ど使われていなかった台所で、リズムよく音を奏で料理をするミコノ。
眠りにつくまで、ベットのすぐ傍で子守唄を歌ってくれるミコノ。
抱きしめると、同じ強さで抱きしめ返してくれたミコノ。
ミコノはどんな時でも嫌な顔をしなかった。
いつでも僕に笑顔を向けて、いつも優しく、接してくれた。
僕が不機嫌そうな顔をすると直ぐにあの手この手で機嫌を取ろうと必死になってくれた。
――そして、今日。僕が嫌がっているのにも関わらずここに連れて来た。始めて僕の意思を始めて無視して、この場所に。
そんなミコノの事を僕がどう思ってるかなんて、考えてみれば簡単な事だった。
僕が想うミコノへの気持ちなんて――、
「――ありがと、ミコノ」
簡単な物だった。
「今日、ここに連れて来てくれて……、その……、僕の傍に居てくれてあの……ありがとう……」
簡単な事だったんだ。
「圭介さん……?」
ミコノが心配そうに呟く。そんな姿にやっぱり胸が押し潰されそうになる。
「……だからさ、そんな顔しないでよ……?」
我が侭で、自分勝手な話だとは想うけど。都合が良過ぎるとは自分でも思うけど。
「僕はミコノに笑ってて欲しいな……?」
ただ、それだけだった。
「ほんとうに……?」
震える声で、ミコノが呟く。
「本当にわたし……間違ってませんか……?」
大粒の涙がいまにも零れ落ちそうだった。
だから、僕は答える。
「うん――」
ちゃんとミコノに笑って欲しいから。
「うん――」
もう、こんな風に泣いて欲しく無いから――。
震える体を抱きしめると肩越しに涙をぼろぼろと零す様子が伝わってくる。
いままでこんな気持ち感じた事も無かった。ほんのりと胸の奥が暖かくなるような、それでいて切なくて、苦しくて、でもホッとして――。不思議な感じだった。もう離れたく無い。絶対に手放さない。始めてミコノに触れられた気がした。始めて、ミコノと一つに成れた気がした。
少しずつ傾き始め、夕日で海を染め始めた太陽は少し眩しく、僕らの体を紅く染めて行く。
「……これからもずっと一緒だぞ、ミコノ――」
「――はい……」
自分よりも少し小さくて、華奢な体をしっかりと抱きしめた。
◇
「だからこんな所来るのは嫌だったんだ!」
「そんな事無いですよ? ほら、あそこ鳥が飛んでます」
「子供じゃねぇんだからそんなの嬉しくも何ともないって!」
思い返せばここ最近ミコノの様子がおかしかった。時々暗い顔を見せたり、必要以上に僕に優しくしたり。かと思えば突然「ピクニックに行きましょう」だ。嫌だと言っているのに無理矢理押し切る形で連れてこられたし、こんな事は初めてだった。
ハートフルパートナーは理想のパートナーを派遣するサービスであり、理想の女性像が反映される。
ミコノは僕の理想で、口答えすることもなく、恋人を一途に想う彼女であるはずだった。それ以上でもそれ以下でもない。ただ僕の恋人になってくれれば良い。――それなのにこんな所に連れてくるなんて……。
「なぁ、おまえ……もしかして故障してるのか?」
「へ……?」
一瞬ミコノの表情が固まった。そりゃそうだ、もし本当に呼称してるならサービスセンターに連絡しなければいけない。岸田さんが言うには代わりのものがすぐに派遣されるそうだし、このまま故障したミコノと一緒にいるよりも――、
「ん……?」
余りにもショックだったのかミコノは固まったまま動かなかった。
「ミコノ……?」
返事は無い。焦点が有っているのかあっていないのか、大きく目を見開いて小刻みに震えていた。
「どうしたんだよ、おい……?」
本当に故障したんじゃないかと心配になり、肩をつかもうと手を伸ばすと怯えたように後ろに下がり、そうしてしまった自分の行動に驚きの色を顔に浮かべた。
「あ、あれ……? け、圭介、さん……?」
行き場を失った腕が宙に浮き、それと僕をミコノは交互に見つめて怯える。
「な、なんで、あれ……?」
戸惑い、逃げる様に後ずさり、そうしてやがて俯いては足を止めた。
「――やっぱりおかしいのでしょうか?」
押し殺したような声がミコノの口から溢れる。
「壊れてるんでしょうか、私……?」
ふらふらと危うい足取りで後ろに下がると転落防止用の柵に縋るようにもたれ掛かり、ミコノはもう一度呟く「壊れてるんでしょうか……?」と。
いまにも崩れ落ちてしまいそうな姿に思わず息が詰まる。
「み、ミコノ……?」
訳が分からなかった。
――故障していると言われた事がそれほどショックだったのか……?
ミコノがこんな風になるなんて始めてだった。いままで僕を困らせる事も、怒らせる事も無く、いつも僕の好きなように、望むようにしてくれていた。なに不自由なく、ただ望むがままに。それこそ「恋人になって欲しい」なんていう無茶な願いだって聞き入れてくれた。なんだって僕の思うがままだった。
だからこそ、こういう時どう声をかければ良いのか分からない。何をミコノが悩んでいて、どうしてそんな風に傷ついたような顔をするのかが分からなかった。
ゴクリ、と唾を飲み込むと汗が額から流れて行く。酷く心臓が脈打ってる。手をぎゅっと握りしめる。凄く気まずい、いますぐにでも逃げ出したい。
いつだってそうだ。何かあれば逃げて来た。「下らない」と「どうでもいい」と目を背けて、逃げて。その先に、ようやく辿り着いた先がミコノだ。都合の良いパートナー、恋人役。なのになんで……、どうしてそいつがこんな風に僕を苦しめる、追いつめる――?
本来こんな風に利用者を悩ませるハズが無い。僕はオーナーでミコノはパートナーだ。彼女の事で僕が悩むなんて可笑しい。変だ。だからきっと故障してるんだ、壊れてしまった。使い方が荒かったんだろうか、何か無茶をさせてしまったんだろうか……? いや、どうでもいい。交換してもらえば済むはずなんだから。
家に戻ったら連絡を入れて代わりを派遣してもらう様に言えば良い。こんな風になったミコノに取り合う必要なんて何処にも無い――。そう分かっているのに、分かってはいるのに、体が言う事を聞かなかった。
何かが邪魔をして、その場に僕を押し留める。
「すみません……、圭介さん……」
ミコノが頭を下げる。申し訳無さそうに肩を小さくし、俯く。
そんな姿にドクン、ドクンと心臓の音は大きくなり、喉の奥が乾き始める。気が焦り、何か言わなくちゃと必死に声を絞り出そうとするけどそもそも何を言えば良いのか分からない、何を言おうとしてるのかも。それでも何か、何か――、そう思って必死に絞り出した言葉は、
「僕の方こそ……ごめん……」
謝罪の言葉だった。
驚いたようにミコノが顔を上げた。
大きく、丸い目が僕を見つめる。
そうして僕自身、戸惑っていた。
――ごめん?
一体、何に僕は謝ったんだ?
一体、何を僕は言ってる……?
「けいすけ……さん……?」
そう言葉を紡ぐ姿は、いまにも粉々になってしまいそうな程に儚く、きっとここで僕が間違った言葉を掛ければガラガラと音を立てて崩れてしまいそうだった。
「や……、だから、その……ごめん」
気まずくて、どうしたら良いのか分からなくて視線をそらす。
故障してても生身の人間みたいなロボットにそんな顔をされては流石に気分が悪い。謝って済むならそれで良かった。この場さえ取り繕えるなら。
「ごめん……」
情けないなら笑えば良い。自分の飼ってるロボットに頭を下げるなんてなんて間抜けだと自分でも思う。けど、それしか言えない。言えなかった。
「……あ、あの……わ、わたし……」
ミコノは何か言葉を紡ごうとする度に息詰まり、大きな瞳に涙が浮かんでいく。
「わたし、けいすけさんが……圭介さんがっ……」
そのうち零れ落ちる涙を覆うように顔を手で隠し、しゃがみ込んでしまった。
「ごめんなさいっ……、わたし……パートナー失格ですよね……」
ぼろぼろと涙をこぼしながら僕に向かって何度も「ごめんなさい、ごめんなさい」と呟くミコノ。
どうして良いのか分からず、そのまま立ち尽くし、ミコノを見つめる事しか出来ずただその姿を見つめた。
「ミコノちゃん――、」
それまで呆然と立ち尽くしていたマキが近寄ろうとする。けどその腕を佐々木さんが掴み、それを止める。
「……圭介」
それ以上佐々木さんは何も言わなかった。ただ僕の事を睨み、先を促す。
目の前でミコノは泣き続けている。マキは困惑した様子でこちらを見つめているし、朽木さんなんて微笑ましいと言わんばかりに笑顔だった。
――んだよっ……、なんだよこれ……!
まるで見せ物にされてる気分だ、どうしてこんなことになってるのか分からない。どうして僕がミコノに対してこんな風に落ち着かない気持ちにならなくちゃいけないのか全然分からない。
「圭介さん……」
縋る様に僕を見つめたミコノに胸の奥がズキリと痛んだ。
ポロポロと涙をこぼし、苦しそうに見上げる姿に息が詰まった。
――ミコノをこんな風にさせたのは、僕……?
故障したのが原因じゃない。ミコノが自分勝手な行動を取る様になったのが理由じゃない。僕がミコノにあんな事言ったから、僕がミコノを傷付けたからこんなことになってるんだ――。
「ぁ……」
そう思うと言葉は益々見つからなくなった――……いや、そもそも僕はどうしたいんだ……?
ミコノは僕のパートナーだ。恋人役だ。だから壊れてるなら交換してもらえば良い。新しい恋人を送ってもらえば良い。――けど、「そうじゃないだろ」と誰かが言った。上手く行かなくなったから、傷付けてちゃったから新しい相手を貰えば良いだなんて、そうじゃないだろ、と。
胸の心臓の音と共に痛みは増して来ていた。
ミコノの踞る姿にどうしようもなく胸の奥が苦しくなっていた。
――僕は、ミコノにこんな顔をして欲しく無い……。
バカな話だ。ホントに笑い話だと思う。所詮ロボットで、変えなんて幾らでもいるのにそんな相手の事を思って、あまつさえ「泣いて欲しく無い」なんて本末転倒にも程が有る。……けど、違う。そうじゃない。そんな事はどうでもよくて僕はただ、ミコノに泣いて欲しく無い――こんな風に悲しい顔をして欲しく無い。
「っ……、」
ミコノが何に傷付き、泣き崩れたのかが僕には分からない。
故障してるって疑われたから……? パートナーの仕事が上手く行ってないって感じたから……?
奥歯を噛み締める――。分からない、分からないけど考えるんだ。ミコノが、ミコノがどうしてこんな風に泣くのか、どうしてこんな風に悲しんでるのか――。
膝が震える。噛み締めた奥歯はガチガチと震えた。投げかける言葉は浮かばなくて、やっぱり家に引き蘢ってた方が良かったと後悔し始める。自分の部屋に引きこもってればこんな思いしないで済んだのに……。
「……っ」
そうだ、帰れば……、家に帰ればばこんな思いしないで良いんだ。嫌な事があれば逃げれば良い、何の解決にもならない事位分かってる。けど少なくともこんな思いはせずに済む。もう辛い思いなんてせずに済むんだ。――どうして僕が、ロボットなんかの為にこんな思いをしなきゃいけないんだ。やっぱりそこの時点からしておかしいだろ。気分が悪い、こんな所にいたくない、早く家に帰りたい――いや、もういいだろ、さっさと帰ろう。帰るんだ。こんな奴放って帰ってしまえばいいんだ、代わりなんていくらでもいる。だから――、
「――……っ?」
本当に、帰るつもりだった。元来た道を引き返して、電車に乗って、部屋に戻るつもりだった。それなのに足は動かなかった。ミコノを放って置く事なんて出来なかった。
――ミコノ……。
しゃがみ込み、俯くミコノ。誰も気にも掛けてくれなかった僕に優しくしてくれたミコノ――。
「圭介」
佐々木さんの鋭い声が突き刺さる。
「餓鬼なら餓鬼らしく青春しやがれ、アホ」
それを聞いて隣の朽木さんは吹き出し、マキちゃんは主人である佐々木さんに抗議の声を上げた。
それらを蹴散らしつつ佐々木さんは告げる。
「お前のパートナーだろうが。何怖がってんだよ?」
「――僕のパートナー……?」
振り返ると丁度僕と同じように佐々木さんを見つめていたミコノと目が合う。
涙を浮かべた目が僕を見つめ、その中に自分の姿が映り込んでいた。情けないぐらいに怯え、怖がっている僕が。
「けいすけさん……」
震える唇が僕の名前を紡ぐ。
どんなつもりで僕の名前を、どんな思いで、その名前を口に出したのか僕には分からない。
ミコノが何を思っていて何を感じているかなんて僕には全然分からない。――けど、
「……僕に取ってミコノは……、」
口に出してから自分の言おうとしている言葉に詰まってしまった。
――何だっていうんだ……?
僕に取ってのミコノは企業から派遣された道具でしかない。彼女が出来るどころか、女の子とすら話せない僕が唯一話せる相手で、一生出来ないかもしれない恋人になってくれた存在だ。心の穴を埋める事を目的として作られて、派遣される。“ハートフルパートナー”なんていう胡散臭い名前の玩具。それがミコノだ――、それがミコノのはずだった。けど……本当にそうなのか、それだけなのか……?
僕に取ってのミコノは、ただの欲望の捌け口でしかないのか?
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ミコノはどんな時でも嫌な顔をしなかった。
いつでも僕に笑顔を向けて、いつも優しく、接してくれた。
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――そして、今日。僕が嫌がっているのにも関わらずここに連れて来た。始めて僕の意思を始めて無視して、この場所に。
そんなミコノの事を僕がどう思ってるかなんて、考えてみれば簡単な事だった。
僕が想うミコノへの気持ちなんて――、
「――ありがと、ミコノ」
簡単な物だった。
「今日、ここに連れて来てくれて……、その……、僕の傍に居てくれてあの……ありがとう……」
簡単な事だったんだ。
「圭介さん……?」
ミコノが心配そうに呟く。そんな姿にやっぱり胸が押し潰されそうになる。
「……だからさ、そんな顔しないでよ……?」
我が侭で、自分勝手な話だとは想うけど。都合が良過ぎるとは自分でも思うけど。
「僕はミコノに笑ってて欲しいな……?」
ただ、それだけだった。
「ほんとうに……?」
震える声で、ミコノが呟く。
「本当にわたし……間違ってませんか……?」
大粒の涙がいまにも零れ落ちそうだった。
だから、僕は答える。
「うん――」
ちゃんとミコノに笑って欲しいから。
「うん――」
もう、こんな風に泣いて欲しく無いから――。
震える体を抱きしめると肩越しに涙をぼろぼろと零す様子が伝わってくる。
いままでこんな気持ち感じた事も無かった。ほんのりと胸の奥が暖かくなるような、それでいて切なくて、苦しくて、でもホッとして――。不思議な感じだった。もう離れたく無い。絶対に手放さない。始めてミコノに触れられた気がした。始めて、ミコノと一つに成れた気がした。
少しずつ傾き始め、夕日で海を染め始めた太陽は少し眩しく、僕らの体を紅く染めて行く。
「……これからもずっと一緒だぞ、ミコノ――」
「――はい……」
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