幸せを噛みしめて

ゆう

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始まりは

高校生になってから

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 高校に上がり、俺達は学校こそ違えど、番であり、幼なじみなことから一緒にいる事が多かった。
 誘発剤以降来るようになった発情期に秋人は俺を抱き、一緒に過ごしてきた。
 それもよかったのは最初頃だけ、αである秋人はめきめきと身長を伸ばし、綺麗な顔つきから、ワイルドイケメンと呼ばれるような顔つきになり、街を歩けば女性が振り向く程だった。
 αであり、家柄も良く、なんでも出来た秋人は直ぐに色んな女性のαとつるむようになった。
 発情期だけは身体を繋ぐ、発情期のセックスは気持ちいいから。
 俺たちはただそれだけの関係になっていた。
 

「死ね死ね死ね!俺の番死ね!!」

「まーた、口の悪い事言ってるよ雪ちゃんは…」
 
 旧図書館で高校の友達入江和真イリエカズマ(β)は同じ図書委員であり、俺の良き理解者だ。
 新図書館が出来て、古い本の置き場となっている旧図書館は掃除だけに立ち入れる。図書委員の俺たちしかいない場所となっていた。
 
 番とは言え、Ωやβがαの事を悪く言うのは良くないとされているこのご時世。
 だが、黙って心の中に閉まっておくことが出来ない雪は友達にここで愚痴を零すのが習慣となっていた。
 
「この間の発情期の時、結構雰囲気良くなったからさ、昨日遊びに行ったわけ。そしたら部屋に何人ものα女性部屋に呼んでてさー、ゾッとしたわ、俺にはやっぱりアイツの事理解出来ねぇ!」
 
ケッ死ね!と、何度も口に出しながら、図書館の埃をほうきではいて綺麗にしていく。
 
「別れたいのに別れられないのは辛いねー、βの俺からしたら未知の世界の話」
 
「なーんで、俺はΩなのかなぁ」
 
 昔に迫害を受けてきた歴史のあるΩは今となっては激減している。
 法律などが改正されたが、15年間生きててΩ用の病院以外では他のΩに出会ったことは無い。
 
「他のΩが現れれば俺との番解除してくれるかなー」
 
「でも辛いのは雪ちゃんなんでしょ?」
 
「それでも秋人とは番を解除したいの」
 
 俺の国では一夫一妻だ。
 他の国では一夫多妻制もあるらしいが。
 違うΩじゃなくてもいい、俺と別れてさっさと女性αと結婚してくれ頼む。
 
 そんな事をいつもの俺は考えていた。
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