幸せを噛みしめて

ゆう

文字の大きさ
31 / 81
新しい世界

勉強会はしましたが

しおりを挟む
 
「あれ…?」
 
 朝学校に行く前の準備をしているとカバンに同じ教科書が二冊ある事に気づいた。
(昨日片づけるときに間違えて入れちゃたのか)
 授業があって困ってもいけないし、朝一で届ける事にした。
 
 
 教室に向かうとすぐに渚を発見。
 渚はクラスの誰よりも目を惹くオーラがあった。
 
「渚!!ごめんね、教科書奪っちゃってた」
 
「ああ、大丈夫だよ、今日その授業ないし」
 
「そっか」
 
 とりあえず教科書は渡して、自分の教室に戻ろとすると俺の前に数人の生徒が現れた。
 
「中山雪!貴方って人は渚様を呼び捨てにした挙句、馴れ馴れしくも教科書まで貸してもらうなんてなんて図々しいのですか!」
 
 その一人が声をあげる。
 (渚のファンクラブか何かかな…)
 未だに俺の事はあまり良く思われていないので、たまにこうして直接言ってくる人もいる。
 渚もいるし…さて、どうやってこの場をおさめようかと思っていると、渚がひょっこりと俺の横から顔を出した。
 
「みんなも渚って呼んでいいんだよ?」
 
 コテンと首を傾げるように彼らに向けた表情は天使のような笑顔だった。

(わぁ…渚は天然タラシだな…)
 
「そ、そんな渚様に畏れ多く…」

彼らはその笑顔をみて顔を真っ赤にして震わせた。
 
「とにかく授業始まるし、解散解散♪君たちも、ね」
 
「は、はい…」
 
 今絶対ファンクラブの人達目ハートになってたな。
(こうやってファンクラブが出来上がるのか…)
 と言う光景を目の当たりにした。
 そして俺も急いで自分の教室に戻った。
 


 
「あれから変な事言われなかった?」
 
「ん?大丈夫。なにもなかったよ」
 
 いつものように俺は放課後は渚の部屋を訪れた。
 テスト勉強を終えると、俺は渚の部屋で特に何もするわけでもなくだらだらと過ごしていた。
 渚は同じ学年で、気を遣う事もなければ、俺にも懐いてくれていて一緒にいて居心地がよかった。

「もうすぐテストが始まるって事は雪ちゃんとのテスト勉強会も終わりか~」
 
「生徒会でも会えるし、すぐ期末テストもくるよ」
 
「それもそうなんだけど、寂しいなって…なにもない日でも遊びにきてね?」
 
「う、うん…」
 
 お願いするときの表情に弱い俺。
 テストが終わったら圭からも遊びにおいでって言われてるし上手な距離で付き合えないものかと考える。
 ちょっと近くで彼らの事見れたらいいのになって思っていただけなのに、徐々に変わりつつある日常が、そのうち身体にも変化をもたらすことに今の俺はまだ気づかないでいた。
 そう、これは創造主が作った世界だと言う事を忘れていた。
 
 
………
 

「それで、これが今回のテスト結果か?…まぁまぁだな…」
 
 
「そりゃ秋人にとってはひどい結果かもしれないけど…」

 
 中旬テストが終わり、その結果が出たので俺は秋人の元に訪れていた。
 一応特待生枠って事だし、頑張ったつもりではあったが、渚を超えれず、学年二位だった。
 前世の記憶があるのに俺ってば。
 
「で?渚と一緒にテスト勉強してたんだって?はかどったのか?」
 
 秋人のその言葉にどきりとした。
 どこまで知っているのだろうかと。
 
「う、ん。でも渚は勉強会しなくても理解してたし、俺の方が教えられっぱなしだったかな…」
 
「そうか…」
 
 それ以上はとくに追及されなくて、心の中でほっとした。
 それに、嘘は付いていない。言われた事に応えただけだし。
 
「取りあえず報告しにきただけだし、俺は戻るよ」
 
「雪…」
 
 俺が立ち上がって、ドアを開けようとすると、惜しむように口づけをされた。
 
「んっ…ぁ…、じゃ、またね」
 
 俺は秋人の表情をみて後ろ髪惹かれる思いだったが部屋を出た。
 秋人も忙しいのだろう。
 本当に引き留めるときは強引だし、それがないから、今日はここで終了。
 俺は急ぎ足で自分の部屋に向かった。
 
(秋人に会うとペース乱されちゃうなぁ…)

 キスされただけなのに身体がドクドク鳴って熱くなった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

処理中です...