僕の考えた最強ホラー

私の秘密

私は一度だけ、他人に秘密を打ち明けたことがある。
それは、もう何年も前のことだ。あのとき、私はその秘密を誰かに話さなければならないと思った。しかし、今思えば、それがどれほど愚かな選択だったのか、痛感している。

その秘密は、私の人生の中で最も恐ろしいものであり、今も私を支配し続けている。

私の名前は佐々木真理。
私は普通の女性で、普通の生活を送っていた。だが、ある出来事を境に、私の心には暗闇が根を張り始めた。それがどんな出来事だったのか、私は今でもはっきりとは思い出せない。ただ、あの時から、何かが変わったことだけは確かだ。

それは私が、ある夜に一人で家にいるときだった。部屋の隅にあった古びた箱を見つけたのだ。その箱は、何年も前に母から譲り受けたもので、私はその中身を一度も開けたことがなかった。しかし、その夜、私はその箱を開ける決心をした。

箱の中には、古い日記帳が一冊と、見覚えのない写真がいくつか入っていた。日記帳は母の手書きのもので、私は一ページずつめくりながら、徐々にその内容に引き込まれていった。だが、あるページをめくった時、私は文字が異常に歪んでいることに気づいた。内容は母が書いたものではなく、別の誰かが書いたように思えた。

そのページにはこう書かれていた。

「彼女が目覚める時、もう誰も逃げられない。」

私はその言葉に強烈な不安を覚え、すぐにその日記帳を閉じた。
手が震えていた。
何かが私を見ているような気がしてならなかった。

翌日、私はその日記帳を持って友人の絵里に会った。絵里はいつも私を励ましてくれる優しい友人で、私の心の中で閉じ込めていた秘密を、少しでも共有すれば楽になるのではないかと思ったのだ。

絵里は日記帳を見て少し眉をひそめた後、私に言った。
「真理、これ…なんかおかしいよ。ちょっと、これをどこで見つけたの？」

私は言った。
「母の家の倉庫にあった箱から出てきたの。ずっと前に母がくれたんだけど、開けたのは初めて。」

絵里はその後、しばらく黙って日記帳をじっと見つめていた。
その間、私の胸は高鳴り、汗がじんわりとにじんできた。

やがて、絵里は顔を上げ、私を見つめた。
「真理、これは絶対におかしい。何か怖いことが起きてるんじゃないの？」

その言葉がきっかけで、私は自分の秘密を絵里に話す決心をした。すべてを話し、彼女に理解してもらえれば、少しは楽になれると思った。しかし、私が話し終わった瞬間、絵里の表情が一変した。彼女の目は恐怖に満ちており、顔色が青ざめていった。

「真理、それ…それは、あなたの母が書いたものじゃない。」

私は驚き、絵里を見つめた。「どういうこと？」

絵里はしばらく黙っていたが、ようやく口を開いた。
「それは、あなたが書いたものよ。」

私は愕然とした。絵里の言葉は私の心を凍らせるようだった。
どういうこと？ 私が、いつ？ そんなはずはない。

「見てみて。」絵里は日記帳を開き、あるページを指差した。そこには、確かに私の名前が書かれていた。しかも、私が知っているはずのない出来事が詳細に記されていた。

その内容はこうだった。

「今夜、彼女は真理の元に行く。誰も逃れられない。」

私は恐怖に震えながら、そのページを見つめた。その瞬間、背後から冷たい風が吹き抜け、部屋の温度が急激に下がった。

そして、絵里は言った。「真理、あなたの中に、何かがいる。」

その後、私は絵里を見失った。彼女は次第に姿を消し、私の周りには誰もいなくなった。私の秘密が暴かれたその瞬間から、私はもはやこの世界に存在しないような感覚に囚われている。

今、私はただ一人、あの古びた箱の中身を再び開けようとしている。もう遅いことはわかっているが、止められない。私の秘密が、私の中で、私を支配し続けている。

そして、私は知っている。

あの秘密を話したときから、もう逃げられないのだと。