僕の考えた最強ホラー

からし

文字の大きさ
63 / 138

失踪家族

しおりを挟む
町外れの古い家は、誰も住むことなく、長い間放置されていた。
見上げると、窓は割れ、屋根の一部は崩れかけ、扉の前には荒れた草が生い茂っている。それは、かつてこの町で幸せに暮らしていた一家が忽然と姿を消した家だと、町の人々の間で噂されていた。

その家に何があったのか、誰も知る者はいない。
だが、家族の失踪から十年以上が経過しても、誰もその家に近づくことはなかった。

だが、ある日、一人の若者がその家に足を踏み入れた。
名はリョウ。好奇心旺盛な彼は、町の古い伝説を調べることに決め、失踪した家族の謎を解明しようと思い立ったのだ。

「どうせ何もないだろう。」リョウは自分に言い聞かせながら、家の前に立った。
だが、その一歩を踏み出した瞬間、彼は不思議な感覚に包まれた。
何かが、彼を呼んでいるような、そんな気配を感じた。

リョウはしばらく立ち尽くしていたが、やがて意を決して家の中へと足を踏み入れた。家の扉はギシギシと音を立てて開き、冷たい空気が彼を迎え入れた。

中は暗く、埃にまみれた家具が散乱している。
リョウは懐中電灯を取り出し、部屋を照らしながら歩みを進めた。
壁に掛けられた家族の写真が、薄暗い光の中でぼんやりと浮かび上がる。
その中には、両親と二人の子供たちが笑顔で写っていた。

「こんなに幸せそうな家族が、どうして消えたんだろう…」

リョウはそう呟きながら、家の中を探索し始めた。
台所やリビング、寝室を見て回ったが、どこにも家族の痕跡は見当たらない。
ただ、ひとつ不気味なことがあった。
それは、家の中の全てがまるで何年も使われていないような、ひどく冷たい空気をまとっていたことだ。

リョウは階段を上がり、二階の部屋へと向かう。階段を上るたびに、床が軋む音が響き渡る。その音は、まるで誰かが自分の後ろをつけてきているように感じられた。

二階に到着すると、目の前に一つの部屋が現れた。部屋のドアはわずかに開いており、中からはかすかな音が漏れていた。リョウは息を呑んで、その音に耳を澄ませた。それは、かすかな子供の声のようにも聞こえた。

「まさか…」

彼は恐る恐るその部屋のドアを開けると、部屋の中には予想外の光景が広がっていた。壁一面には家族の写真が貼り付けられており、その写真たちはまるで生きているかのように目を見開いている。子供たちの笑顔も、両親の穏やかな顔も、まるでその場で動き出しそうだった。

そして、その中央に小さな木製の椅子が置かれていた。椅子には、白いワンピースを着た少女が座っていた。その少女は、動くことなく、ただじっとリョウを見つめていた。

「お前、誰だ?」リョウは声を震わせながら問いかけた。

少女は答えなかったが、静かに立ち上がり、リョウに向かって一歩踏み出した。
彼女の足音は、まるで何かを引きずるような音が響いていた。その足音は、だんだんと近づいてきた。

リョウは背筋を凍らせて、その場から動けなくなった。少女は近づくにつれ、顔が歪み、目が真っ黒になっていった。その目が、まるで彼を見つめることで、何かを引き寄せているようだった。

「お前も、ここに来たのか?」

その瞬間、部屋の中に響いたのは、少女の声ではなかった。
それは、家族全員の声が重なったような、低く不気味な囁きだった。

リョウは恐怖にかられ、部屋を飛び出そうとした。
しかし、ドアが突如として閉まり、彼は中に閉じ込められてしまった。

その時、背後で何かが動く音が聞こえた。
振り向くと、家族の姿が、まるで写真から抜け出してきたかのように、彼に迫ってきていた。

「ようこそ、我が家へ。」その声が、全身を震わせるように響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/25:『がんじつのおおあめ』の章を追加。2026/1/1の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/24:『おおみそか』の章を追加。2025/12/31の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/23:『みこし』の章を追加。2025/12/30の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/22:『かれんだー』の章を追加。2025/12/29の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/21:『おつきさまがみている』の章を追加。2025/12/28の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

処理中です...