23 / 69
23
しおりを挟む「真実は藪の中と言うことは、現国王陛下に愛人がいるかどうかも藪の中ということですか」
王妃は諦めたような寂しげなほほえみを浮かべた。
「そういうことよ。もっとも調べたら私にもわかるかもしれない。でも知りたくないの」
王妃はまだ国王を愛しているのだろうか。こんな目に合っても愛は続く。男女の愛は私にとってまだ知らないことやわからないことだらけだな。まだ十六だからねと自分で納得する。でも、王太子には惚れることはないな。
「そろそろ、私の幻術がきれるころだから帰るわ」
そう言って、王妃はフードをかぶり直して、スツールから立ち上がり、出て行こうとした。そして私の方に再び向き直り言った。
「そうそう、温室への招待はするから来てくれるかしら」
「喜んで」
再び王妃は寂しげなほほえみを浮かべて去って行った。その後ろ姿を見送って、王太子と結婚したら私もああいう寂しい笑い方しかできなくなるのだろうと思ってぞっとした。それを考えると番反対派のリヒャルト・グートハイルに会って何かかわるといいなと思いながら、柔らかい羽根枕に頭を埋めた。
次の朝、磨き立てられた窓の外には、青くて透き通った空が見えた。
「エレオノーラ様、グートハイル伯爵というかたから、お目に掛かりたいとカードが届いていますが、どうされますか」
アンナとジョディが朝食運び込みながら、カードを渡してくれた。カードには達筆な文字で一度お目に掛かりタイとだけ簡易な文章があった。
「返事を書くから、朝食後に筆記具の用意をして」
とジュディに声を掛けた。私の横ではエレナが毒味をしている。脳天気に食べているようだが、実はエレナは訓練された毒マスターなのだ。王女である私は国外や高位貴族に嫁ぐことになるから、常に毒の危険と背中合わせだ。だから小さい頃から毒や媚薬などの知識を叩き込まれている。
乳姉妹であるエレナが毒味に立候補した時はびっくりした。エレナどちらかというとアンナやジュディのように主人に言われなくとも、心配りをするような有能な侍女にはなれそうになかったので、なにかひとつ取り柄を持ちたかったそうだ。たった十四から毒について勉強して、なおかつ毒に慣れるようにするなんてと、私は反対だったがエレナはやり続けている。
「エレオノーラ様、さすがにいきなり毒殺は狙ってこないみたいですよ」
エレナが飄々と言う。
「この国はエレオノーラ様に子供を産んで貰わないと困るのだから殺そうとしないと思いますけれど」
アンナがエレナに食後のお茶を渡しながら言った。
「私を殺して成り代わりたい人がいたら喜んで変わってあげるのだけどね。愛されなくても王妃に成りたいとか言う人いないかしらね」
とため息も出るのだ。グートハイル伯爵にはさっさと会っておきたいから、今日の午後に来てくれるようにカードを書いて封筒に入れた。
15
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
家族から見放されましたが、王家が救ってくれました!
マルローネ
恋愛
「お前は私に相応しくない。婚約を破棄する」
花嫁修業中の伯爵令嬢のユリアは突然、相応しくないとして婚約者の侯爵令息であるレイモンドに捨てられた。それを聞いた彼女の父親も家族もユリアを必要なしとして捨て去る。
途方に暮れたユリアだったが彼女にはとても大きな味方がおり……。
【完結】冤罪で処刑された令嬢は、幽霊になり復讐を楽しむ
金峯蓮華
恋愛
「レティシア、お前との婚約は今、ここで破棄する!」
学園の学期末のパーティーで賑わうホールにヴェルナー殿下の声が響いた。
殿下の真実の愛の相手、ミランダに危害を加えた罪でレティシアは捕らえられ、処刑された。国王や国の主要メンバーが国を留守にしている間に、ヴェルナーが勝手に国王代理を名乗り、刑を執行してしまった。
レティシアは悔しさに死んでも死にきれず、幽霊となり復讐を誓う。
独自のファンタジーの世界のお話です。
残酷なシーンや表現が出てくるのでR15にしています。
誤字脱字あります。見つけ次第、こっそり修正致します。
異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない
降魔 鬼灯
恋愛
やかな異母姉ジュリアンナが大国エスメラルダ留学から帰って来た。どうも留学中にやらかしたらしく、罪人として修道女になるか、隠居したエスメラルダの先代王の公妾として生きるかを迫られていた。
しかし、ジュリアンナに弱い父王と側妃は、亡くなった正妃の娘アリアを替え玉として差し出すことにした。
粗末な馬車に乗って罪人としてエスメラルダに向かうアリアは道中ジュリアンナに恨みを持つものに襲われそうになる。
危機一髪、助けに来た王太子に番として攫われ溺愛されるのだか、番の単語の意味をわからないアリアは公妾として抱かれていると誤解していて……。
すれ違う2人の想いは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる