番と言えばなんでもかなうと思っているんですか

ぐう

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「真実は藪の中と言うことは、現国王陛下に愛人がいるかどうかも藪の中ということですか」

 王妃は諦めたような寂しげなほほえみを浮かべた。

「そういうことよ。もっとも調べたら私にもわかるかもしれない。でも知りたくないの」

 王妃はまだ国王を愛しているのだろうか。こんな目に合っても愛は続く。男女の愛は私にとってまだ知らないことやわからないことだらけだな。まだ十六だからねと自分で納得する。でも、王太子には惚れることはないな。

「そろそろ、私の幻術がきれるころだから帰るわ」

 そう言って、王妃はフードをかぶり直して、スツールから立ち上がり、出て行こうとした。そして私の方に再び向き直り言った。

「そうそう、温室への招待はするから来てくれるかしら」

「喜んで」

 再び王妃は寂しげなほほえみを浮かべて去って行った。その後ろ姿を見送って、王太子と結婚したら私もああいう寂しい笑い方しかできなくなるのだろうと思ってぞっとした。それを考えると番反対派のリヒャルト・グートハイルに会って何かかわるといいなと思いながら、柔らかい羽根枕に頭を埋めた。


 次の朝、磨き立てられた窓の外には、青くて透き通った空が見えた。

「エレオノーラ様、グートハイル伯爵というかたから、お目に掛かりたいとカードが届いていますが、どうされますか」

 アンナとジョディが朝食運び込みながら、カードを渡してくれた。カードには達筆な文字で一度お目に掛かりタイとだけ簡易な文章があった。

「返事を書くから、朝食後に筆記具の用意をして」

 とジュディに声を掛けた。私の横ではエレナが毒味をしている。脳天気に食べているようだが、実はエレナは訓練された毒マスターなのだ。王女である私は国外や高位貴族に嫁ぐことになるから、常に毒の危険と背中合わせだ。だから小さい頃から毒や媚薬などの知識を叩き込まれている。 
 乳姉妹であるエレナが毒味に立候補した時はびっくりした。エレナどちらかというとアンナやジュディのように主人に言われなくとも、心配りをするような有能な侍女にはなれそうになかったので、なにかひとつ取り柄を持ちたかったそうだ。たった十四から毒について勉強して、なおかつ毒に慣れるようにするなんてと、私は反対だったがエレナはやり続けている。

「エレオノーラ様、さすがにいきなり毒殺は狙ってこないみたいですよ」

 エレナが飄々と言う。

「この国はエレオノーラ様に子供を産んで貰わないと困るのだから殺そうとしないと思いますけれど」

 アンナがエレナに食後のお茶を渡しながら言った。

「私を殺して成り代わりたい人がいたら喜んで変わってあげるのだけどね。愛されなくても王妃に成りたいとか言う人いないかしらね」

 とため息も出るのだ。グートハイル伯爵にはさっさと会っておきたいから、今日の午後に来てくれるようにカードを書いて封筒に入れた。
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