番と言えばなんでもかなうと思っているんですか

ぐう

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 甲高い声でリヒャルトに声を掛けた人は、フードの奥で私をにらんでいるようだった。
 顔は見えてないけれど、纏う雰囲気がとがっているのだ。

「アデリナ、私のお客人だ」

 リヒャルトはそう言って、アデリナのことを気にもしてないように、私達を奥の方に導いた。

「会わせたい魔術師達の研究室を覗いてきます。危険な実験をしているといけないので、こちらで待っていて下さい」

 リヒャルトはそう言い置いて奥の部屋に入っていく。リヒャルトの後ろ姿を見ていたら、後ろから声をかけられた。

「あなた、ひょっとして、レーゼル王国の王女?」

 そう言って、私の頭の先からつま先まで凝視した。感じ悪いな。私の後ろに控えていた侍女のジョディが私の前に出た。

「無礼ですよ。この方はいきなり声を掛けていいご身分ではありません」

 さすがジョディ頼りになる。護衛も私の前に出てきた。リヒャルトにアデリナとよばれた人は、フードを無造作に脱ぎ捨てた。こぼれ落ちたきらきら輝く金の髪を華奢な指でかき上げた。
 つり目がちの大きな琥珀色の目に整った顔立ち。これはまた美形の出現だ。
 ここにいると言うことは、いでたちから言っても、魔術師なんだろう。と言うことは貴族と言うことだ。竜人の末は全員魔力を持つから平民にはならないと聞いている。

「アデリナ・ホーフ、 ホーフ侯爵家の娘です」

 ジョディにとがめられたからか、少し腰をかがめてそう言った。侯爵令嬢であっても私は王女だ。彼女より上の身分なのだから無礼な態度である。

「わたくしになんのご用かしら。ご用でしたらきちんと王宮の外交部を通してからにしていただける」

 うん、まあ、王女らしくできたかな。そう自画自賛していたが、アデリナはフンと言うように鼻で笑った。

「魔術師の塔の中では身分は関係ないのですよ。ここでは魔術ができるか、できないかだけしか差はないのです。王女だからといって偉そうにしても、魔力も無い普通の人間じゃないですか。我ら竜人の末とは違う……」

 アデリナが最後まで言い切らない内に、リヒャルトがこちらに急ぎ足で戻ってきた。

「アデリナ、私のお客人に失礼な態度は困るな」

 そう言いながら私達とアデリナの間に身を滑らして入ってきた。

「あら、リヒャルト、ここに入った以上は他国の王女であっても魔術師とは同等よ」

「同等であることと、態度が悪いということは同じではない。なにを履き違えている」

 おお、美形が美形をなじっている。リヒャルトの氷のような雰囲気が怖い。そしてなんか寒いと思って床を見たら霜柱が立っているよ。

「あの、霜柱が立っていますけれど……」

 私がおずおずと言うと、リヒャルトが私を見てから私の足元を見た。

「これは失礼しました。私の魔力は氷に適性があるので、感情が高ぶるとつい……」

 ついじゃないよ!私達が凍死したらどうするんだ!

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