番と言えばなんでもかなうと思っているんですか

ぐう

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 後ろから声を掛けられて、室内にいるメンバー全員振り返った。私の侍女達と護衛もね。

「ニック、悪かった。忘れていた訳では無いけれど、アデリナがあまりに馬鹿なことばかりするから……」

 リヒャルトが最初に口を開いた。声を掛けてきた人はたぶん魔術師なんだろうけれど、魔術師だというリヒャルトやアデリナと違って普通の容姿で男性にしては小柄だった。賢そうな雰囲気で銀色の縁のめがねを掛けている
 竜人の血をひいているからと言って、全員美形なわけでないのだな、この人は親しみやすそうと思った。

「アデリナは誰がどう言っても聞きませんでしたからね。魔力が多いアデリナを、両親が兄妹の中で特別扱いして甘やかしていたのが元凶です。従兄としてお詫びします」

 この人アデリナと従兄なんだ。似てないな。そう思っていたらニックがこっちに振り向いた。

「王女殿下にも無礼をして申し訳ありませんでした」

 そう言って、私達の方に向いて一礼した。

「私はアデリナと違って竜人の血は濃くないので、こんな容姿なんですよ」

 じっと見ていた私の視線の意味を悟ったように言うニックの言葉に、気まずくて思わずうつむいてしまった。そしたらそんな私をテオバルトがじっと見ているのが、視界の端に捉えられた。どうしてそんなに見るのか。なんなのだろう。

「ニックは有能な魔術師なのです。私と共同で研究を進めていたのですが、ニックから説明させます」

 リヒャルトはそう言ってから、テオバルトに向き直った。

「殿下もちょうど良いので、話を聞いていって下さい。いままであなたが逃げ回っていたから、こんなことになっているのです。王族として生まれて、血筋を続けさせる義務がわかっているのなら、きちんと向き直っていただきたい」

 リヒャルトの真剣な面持ちに、つられるようにテオバルトは頷いて、ソファに座り直した。

「そうだな。エレオノーラ王女にも申し訳なかった。とりあえずニックの話はなんなのだ」

 今までには考えられない、殊勝なテオバルトの言葉に私はびっくりする。
 ニックが机を挟んで座っている、テイバルトと私の側面のスツールに座った。リヒャルトはテオバルトの隣に座った。

「まず、アデリナが盗んだ偽番の改良版の魔道具ですが、はからずも王太子殿下で実験しまして、王太子殿下ほどの魔力を持つ者には効かないとわかりました。そしてこれを出資元の王妃陛下に使っていただこうと申し出たのですが、断られてしまいました」

「ちょっと待て、この一連の研究は国の研究費だけでなく、母上からも出ていたのか!」

 テオバルトが思わず中腰になって、ニックに詰め寄ろうとしたので、隣のリヒャルトがテオバルトの身体を無理矢理座らせた。

「殿下、座って下さい。最後まで聞いてから、質問や意見を聞きますから」

 テオバルトはしぶしぶ腰を落とした。
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