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しおりを挟む皆がじっと国王を見つめる中で話し出した。
「この国の王族の婚姻は歪だ。それは王族が番を持つ竜人であることが原因だ。しかしこの国がこのように強大になったのは竜人であるおかげでもある。そこにいるテオバルトのように強大な魔力を持ち、強い軍を持つのも竜人であるおかげでもある」
私は訥々と話す国王を見ながら、何を今更分かりきった事を言うのだろうと思っていた。竜人王族には番がいる。万が一王族に番が見つかった時に放り出す妻が文句が言えないように、弱小国から妻を選んでいるじゃないの。現王妃は今はない東の国から。私は弱小国から。
そして、その妻はいつ番が現れるかもしれないとビクビクして暮らすのだ。
「竜人が王族であることは変えられない。テオバルトのように先祖返りが産まれることは国としては歓迎すべきことなんだ。この前の北の国からの侵攻があっという間に抑えられたのもテオバルトの功績だ」
ええい!それがどうした!早く話を進めろと苛々して横を見たら、リヒャルトとバッチリ目が合ってしまった。くすりと笑われたようでちょっと恥ずかしかった。
「だから、私は番のいる竜人を否定しきれない。私は竜人であっても人間寄りだから番を求める衝動は少ないが、番がもし目の前に来たら、妻が居ても子が居ても投げ捨てて番を求めてしまうかもしれない」
ふーん。怖いな。
「ーーーー怖かったんだ。もし妻と愛し合っているつもりでも、番を見たら振り捨てて番に夢中になってしまう自分が。絶対にしないとは言えない本能が怖かったんだ。だからマディを迎えた時に距離を置いた。冷たい夫ならもし万が一にも番が見つかって離婚になっても、あんな人いらない。離婚になっても構わないと思ってもらえるように。そしてテオバルトから遠ざけたのもテオバルトが先祖返りであることがわかったから。目の前で番、番と言われたくないだろうとーーーーだが、先程のマディの言葉を聞くと私は間違っていたのだな……」
大間違いのこんこんちきだ!あら、王女らしくありませんでした?まあ、言葉に出しておりませんからごめんあそばせ。
「私は妻を守っているつもりだったのだよ……」
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