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しおりを挟む「お話はもう良いかしら。私は離宮を片付けなければいけないの。色々する事があって、暇じゃないの。これで失礼するわ」
そう言って王妃が立ち上がり、私の方に来た。
「エレオノーラ様、私の代わりに色々抗弁してくださってありがとう。被害者同盟はこれで解散だけど、どこにいてもあなたの幸せを祈ってます。たとえテオバルトが番を求める本能を抑える魔道具を付けたとしても、長い年月あなたを蔑ろにして来た事実は消えません。どうか母国の事情だけでなく、ご自分の幸せを考えてこの先を決めて下さいね。ーーーーテオバルト」
今度は王太子の方に向き直った。
「テオバルト、母の最後の願いです。エレオノーラ様に求婚するのなら、一刻も早くその魔道具を身に付けて。そしてこの国の力を使わないで。自分自身の誠意と魅力でエレオノーラ様に求婚して」
テオバルトは不意打ちを喰らったようで、コクコクと無言で頷いた。王妃はそれだけ言うと今度は確かな足取りで扉に向かっていき、侍従がさっと扉開けた。
「マディ!私の話を聞いてくれ。番を求める本能を抑える魔道具ができているのなら、それを付けて、番の恐怖から抜け出て、君と一緒にやり直したいのだ」
国王が王妃の後ろ姿に縋った。いや、本当に縋っているの。跪いて王妃のドレスを握りしめて離さないの。国王がよ!
「マディ、頼む」
意外と真摯に言ってるみたいだが、王妃はちらりと斜め下の国王を見て言った。
「もう、遅いのです。私はずっとあなたとちゃんと話をしたかった。テオバルトの事もあなたと話し合いたかった。でも、もう、テオバルトは成人しました。全てが手遅れなのです」
それだけ言うと、握られているドレスを引き抜いて出て行ってしまった。ぱたんと扉が閉まるのを呆然として、私達は見つめていた。
「父上!追い掛けて!なに唖然としているのですか!母上が修道院行っても良いのですか!」
王太子が国王を揺さぶる。その王太子をリヒャルトが押さえた。
「今は追いかけても仕方ありませんよ。とにかく、お二方とも番がわからなくなっても良いのですね」
「ああ」「もちろんだ」
二人の返事がはも……らなかったけれど、リヒャルトはニックに頷いてみせた。
「それではお二方とも魔術師塔へどうぞ。品物はもう用意してあります。王太子殿下のは超強力にしてあります」
ニックが久しぶりに口を開き、ローブを翻して国王と王太子を先導する。リヒャルトがパンと手を叩いた。
「これで防音の魔術は解術されました。私達は魔術師塔へ行って参ります。エレオノーラ王女は客間に戻っていてくださいますか」
反論はないので、私は大人しく与えられた部屋に戻った。
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