忘却の檻 〜あなたは誰〜

ぐう

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 あれから夫と言う人にエーレンフェスト家に連絡して欲しいと伝えた。わかったと言われた。

 また日にちが経った。医師の診察日だった。一通り怪我の手当てをしてもらったが、もう包帯を巻く事なく日にち薬で回復するそうだ。記憶以外。

「階段の一番上から落ちられた割に打ち身と打撲が強いだけで、骨が折れなかったのは奇跡ですね。階段に厚く絨毯が引いてあったのと一度踊り場で止まったのが良かったのでしょう。それと落ちた姿勢がよかったのだと思いますよ。」


 初めて知った。私は階段から落ちたのか。よく命があったものだ。誰かが落としたのか?自分の過失なのか?使用人達は気遣ってくれるが余計な事は聞いても教えてくれない。
 これはこの邸の主人の意向か。
 あの夫という人はどこまで嘘で固めるつもりなのだろうか。


 レオンハルトが医師が去ってからやってきた。医師の許可が降りたので庭に出ようと誘って来た。この機会にエーレンフェスト家から返事はあったが聞いてみよう。

 レオンハルトの介助で庭に出る。美しい薔薇が広がってる。これはどこかで見た景色だ。綺麗な男の子が女の子に何か言ってるシーンの場所だ。

「ここはずっと薔薇園ですか?」

「私が子供の頃からずっと薔薇園だな。私の亡くなった母が薔薇が好きで専門の庭師を連れて輿入れしてきた。」

 レオンハルトが私の顔を覗き込む。

「何か覚えがあるのか」

「自分のことではないと思いますが、誰かここに立っていたのを見たような気がします。」

「ユリアは幼い頃からこの邸に来ていたから自分のことではないか?」

「幼いころ?私達は幼い頃から知り合いだったのですが?」

 レオンハルトに腕を引かれ、庭にある四阿に座らされる。

「私の父とエーレンフェスト侯爵が友達でよくユリアを連れてここにきてた。幼い頃に会っていたよ。」

「そうなんですか。その辺りは全く覚えてません。ただ薔薇園に見覚えがあるだけで。」

「思い出さなくてもいい。それより移動できる体調になったと医師に聞いた。明日別邸に移動するから。」

「別邸?」

「静養に出よう。」

 きっぱりと言い切られた。
 なるほど要らない私を静養と言う名前で本邸から追い出すんだなと思ったので黙った。 
 追い出されてからエーレンフェスト家に手紙を書いてみよう。

 また介助されて部屋に戻り、二人きりになった時レオンハルトが食いつくように眼差しを向けてきた。なんだろう?

「何も持って行かなくてもいいようにしてあるから。侍女もあちらで雇ってあるので、本邸の使用人は連れて行かない。」

 なるほど、追い出してせいせいするわけね。誰か本命の女性を呼んで暮らすからこの部屋開けろってことかな。でもだったらわざわざ一度私をこの部屋に入れたのだろう?
 疑問はいくつもあるけど、もうすぐこの人とさよならだ。この人が近くにいなくなってからエーレンフェスト家に連絡して、自分の過去を問い合わせよう。
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