忘却の檻 〜あなたは誰〜

ぐう

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 レオンハルトがぽかんとしてユリアを見た。

「あいじん?あいじんて?」

「バーデン伯爵親子が領地に来たのよ。その時に令嬢の方がユリアに自分はレオンハルトの恋人だから、地味な女は離婚しろと言ったとノンナから聞いたわ」

「はああ なんだそれは。ユリアはそんな言葉信じたのか?」

「信じたらしいわ。離婚するための書類があったもの」

 レオンハルトが青い顔をして立ち上がった。

「それはどこだ。すぐ処分する」

「ノンナから渡されたからその暖炉で燃やしたわ」

 レオンハルトはほっとしたようで元の椅子に戻ってきて、両腕で俯いた自分の頭を抱えた。

「あの令嬢とは知り合いなだけだ。商談するのにいつも令嬢を連れて来るが、口を挟むわけでもないから追い返すこともできないのでそこにいただけだよ。前にも言ったけれど結婚してから不義を働いたことはないから信じて」

「それでどこかの令嬢をレオンハルトがエスコートする夢を見たけれど事実かしら」

 レオンハルトが頭を上げた。

「ユリアはひょっとして王都の邸でマリアに落とされるより前に王都に来ていたのではないかい?」

「どう言う事?」

「バーデン伯爵にどうしても都合がつかないから舞踏会に令嬢をエスコートしてやって欲しいと頼まれてエスコートしたことが一度あるんだ。でもエスコートだけで踊っていない。入場だけして別れようとしたら、令嬢にしつこくダンス強請られたが、妻以外と踊らないと断って、知人のほうに行って喫煙席で話してた。その時の知人が証明してくれるよ。本当だ。その時のことを王都に来ていたユリアが見たのでは?」

 これは信じていいのかしら。レオンハルトの必死な顔を見てそう思った。

「昨日バーデン伯爵に呼ばれたのも何か緊急なことがあると言う事だったのに『別居している奥様が領地からおいでと聞きました』と言って何かと聞き出そうとする態度が不愉快で『別居などしていない!プライベートのことは貴方に関係ない』と言い捨てて戻った」

 レオンハルトはため息をつき

「バーデン伯爵が領地に視察に行って令嬢がそんな失礼な事を言ったとは。勘違いさせることは一切してない。バーデン伯爵親子が来るときは必ず商会員が筆記のために二人立ち会ってる。証人もいる」

 と必死に言い訳をした。ユリアは思わず笑ってしまった。ユリアはレオンハルトに身体を向け、レオンハルトの輝く金の髪の間に指を滑らせ、髪を指で解いた。

「さらさら 手入れしている?」

「ユリアが私の匂いだと言ってくれた香油で」

「ユリアは自己評価が最低だからその令嬢の言葉を信じてしまったのよ。それで全てをレオンハルトに渡して離縁して消えようとしたのよ。馬鹿よね。多分レオンハルトに聞かなかったのは怖かったからよ」

「怖い?」

「そう レオンハルトの言葉を信じて裏切られたら生きていけないと思っていた。それで私に身体を明け渡して消えた」

 ユリアは指をレオンハルトの唇に滑らせた。

「こんなふうに触れ合いたいって思っていたと思うわ」
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