忘却の檻 〜あなたは誰〜

ぐう

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 ふと目が覚めると何か温かいものが隣にあって何かがユリアの身体に乗り上がっている。
 外は窓のカーテン越しに日が差してきている。もう朝かと起きあがろうとしたら、ユリアに乗り上がってるものが邪魔で押しのけたら『う ううん』とうめいた。ああレオンハルトの顔なのね。昨日疲れ果ててそのまま眠ってしまったから。ユリアはレオンハルトの顔にかかった髪をかき分けて頬を指で触ってみた。
 
 ユリアはこの綺麗な顔が好きだったのかしら?あんなに酷い態度を取られても自分を犠牲にするぐらい好きだった。今の私は綺麗な顔と思うそれだけ。
 そして今の私には、自分の財産をこの人に全部渡して、自分は消えるなんて滅私にはなれない。この私もユリアなのは間違い無いから、昔のユリアも心の底にどろどろとしたものを抱えていたのかもしれない。記憶を取り戻したら今のユリアを昔のユリアはどう思うのかだろう?

 そんなことを考えてレオンハルトの顔を触り続けたていたら、腕を掴まれて抱き込まれた。

「私の顔が嫌い?」

 レオンハルトにそう聞かれた。

「嫌いだわ。この顔が普通だったら嫌な女達が湧かなかったもの」

「自分でも母にそっくりなこの顔は好きじゃ無いな。寄ってくる女達も上っ面しかみてないし」

「ユリアがこの顔だから好きだったと言ったらどうする?彼女はずいぶん自分を卑下していたもの」

「ユリアはそんなこと言わない」

 そうかな。ユリアレオンハルトを王子様のように思っていたんじゃないかな。だから裏切られても手の届かない人だからしょうがないと思っていた。


「お嬢様 本日エーレンフェスト侯爵ご夫妻がお見えです。お支度を早めにしませんと」

 控えめなノックと共にノンナの声がした。
ユリアがレオンハルトの腕を押しやって起き上がった。

「今戻るから」

 と言ってレオンハルトを置き去りにして、私室と繋がっているドアにガウンを着ながら歩いて行った。そしてドアのところで振り返り

「旦那様もお支度を」

 と言って自分の私室にするりと入って行った。『旦那様』初めてそう呼ばれてレオンハルトは思わず耳を疑い茫然とした。浸っていたかったがレオンハルトも支度をしなくてはとガウンを着て自分に与えられた部屋に戻って行った。


 ようやく二人は朝食も済ませて、居間でお茶を飲みながらエーレンフェスト侯爵夫妻を待っていた。
 先程からレオンハルトの表情は緩んでいた。ユリアがレオンハルトをどうしたのと言うように視線をレオンハルトにやるとレオンハルトは

「嬉しい」

 とユリアの手を握ってきた。

「何かあったかした?」

「ユリアが旦那様と呼んでくれたから」

「そんなことで?」

「今までずっと名前すらよんでくれてないから」

「ー自業自得ー」

 茶器を片付けていたノンナがユリアに聞こえるだけの声でそう言った。


 



 

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