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しおりを挟む「では、夫の元に戻りましょうか」
「そう言えば、教えていただきたいことがあるの」
ユリアに声をかけられて、侍女に声を掛けて、扉を開けさせようとしたリリアンヌが振り向いた。
「なにかしら」
「私と兄の両親は今どうしているのですか?兄が爵位を継いでいると言うことは、父は領地に戻っているのですか?」
リリアンヌは足を止めて、ユリアの側まで戻ってきた。
「お義母様は亡くなられたわ」
ユリアは頷いた。
「この邸を私に残して下さったと言うことは、そういうことだろうと察してはいました。いつ亡くなられたのですか?」
「あなたがまだ幼い頃よ。レオンハルトと婚約する前になるわ。お義母様がいらしたら、こんないびつな政略結婚など、させなかったとクラウスが言っていたわ」
ユリアはまぶたを閉じた。残念ながら面影すら浮かんでこない。
「お義父様はクラウスとあなたの件で衝突して、クラウスに爵位を継がせて、あなたのお察し通りに領地で隠居しているわ」
「……そうですか。みんなの話を聞いて、母親が全く出てこないのは早くに亡くなったからなのですね」
「お義母様はお義父様のアイレンベルグ公爵家への傾倒を、批判なさっていたとクラウスから聞いているわ」
リリアンヌはそこまで言って、あとはユリアの耳元でささやいた。
「お義父様はアイレンベルグ公爵夫人を学生時代から思い続けていたらしいの。それで、何が何でもあなたをレオンハルトと婚姻させたかったのよ」
その言葉を聞いて、ユリアはレオンハルトがどんなに娘を裏切っても、莫大な持参金を付けて婚姻させようとした実父の執着がどこからきたか悟った。
「だれも幸せにならない執着はそこからでしたか……」
「そうね。命の恩人への恩返しにしては、やり過ぎですものね。お義父様がおとなしく隠居したのも、思い人が亡くなったから……」
ユリアは心の中で頷いた。ユリアとリリアンヌはそれ以上言葉にせずに、クラウスとレオンハルトの元に戻っていった。居間ではレオンハルトがうなだれて頭を抱えていた。
「採寸と注文は終わったのかい?」
クラウスが声を掛けてきた。
「あら、レオンハルト様どうなさったの?」
リリアンヌが声を掛けたが、レオンハルトはそれに応えずに、ソファの隣のスペースに座ったユリアの膝にすがりついた。ユリアはそれを受け入れながら、クラウスに尋ねた。
「何かありましたか」
「社交界の令嬢・夫人方がどのくらいレオンハルトを狙っているか教えていただけだよ。しかもこの男はうかうかとあのハゲタカのような令嬢をエスコートするというミスもしでかしてるしな。ハゲタカ令嬢は何という名前だったかな?」
「マリアよ」
リリアンヌがクラウスの疑問に答えた。ユリアはレオンハルトを狙う女は、マリアが多いのかと密かに思った。レオンハルトがのろのろとユリアの膝から顔を上げた。
「自分に好意を向ける人がいることを、全く知らなかったとは言いませんが、とにかくユリアが設けた期限内に商会を順調にさせることばかり考えていて、バーデン伯爵令嬢の狙いに気がつかなかった」
「あれだけ学園でも騒がれていたのに?」
ユリアが苦笑しながら言うと、レオンハルトはユリアの手をぎゅっと握って、すがるように見つめた。過去の悪行を思い出させたくないのかしらとユリアは思った。
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