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しおりを挟む「こちらのデザインなどで、いかがでしょうか」
リリアンヌと熱心にデザインをああでもないこうでもないと、検討してデザイン画を描いていたデザイナーのドレスデン子爵夫人が、かなりな枚数のデザイン画を持ってきた。
お針子のモリーが巻尺を元に戻して、書き留めたメモをドレスデン子爵夫人に渡した。
ドレスデン子爵夫人はそのメモに目を通しながら、自分の描いたデザイン画をテーブルの上に並べて、ユリアにデザインの特徴を細かく説明していく。
「どう?ユリア?デザインは気に入った?」
リリアンヌに声をかけられたユリアは困惑していた。自分の頭の中にあるドレスとかなりデザインが違うのだ。
「これが今の流行なの?」
「左様でございます。今は無駄にスカートをふくらましたりしません。また拷問のようなコルセットで締め付ません。もちろん身体の線を整える下着は付けますが、ドレスの仕立てで身体の線を美しく見せます。細ければいいという価値観はもう古いのです。その点奥様は普段のコルセットなしのお姿でこのサイズ。創作意欲が湧きますわ」
ドレスデン子爵夫人はうんうんと頷きながら、雄弁に語った。リリアンヌはちょっと笑いを含んだ声で言った。
「そうなの。今の社交界は真っ二つよ。保守的な年配の奥様方は昔ながらのドレスで、若くて経済的に余裕のある家の娘や夫人はこんなドレスなのよ」
リリアンヌにそう言われて、ユリアはまじまじとデザイン画を見直した。
「そうね。これが流行りと言うなら、これぐらいがいいかしら」
ユリアが目の前に広げられたデザイン画の中で、あまり身体の線が表にでないようなデザイン画を取り上げると、リリアンヌが非難するように言った。
「何言ってるの。ユリア」
リリアンヌはドレスデン子爵夫人に向かって言った。
「オリガ、これ全て仕立てて下さる?色はユリアの夫が金髪碧眼なの。その色を必ずどこかに入れて」
「アイレンベルグ公爵は社交界の注目の的で、令嬢方の憧れですから、お姿はよくお見かけしておりますわ」
「申し訳ないけれど日が無いの。まず夜会用のドレスを特急で仕上げてくれる?」
リリアンヌがそう言うと、ドレスデン子爵夫人は『お任せ下さい』と頷いて、お針子のモリーに片付けさせて、つむじ風のように辞去していった。客間にぽつんと残されたユリアがリリアンヌに尋ねた。
「そんなに夜会だの舞踏会だのに出る必要があるの?」
「先ほどドレスデン子爵夫人も言ってたでしょう?あなたの夫は社交界で大人気なの。でも妻が領地から出てこない、つまり二人は不仲だからと、レオンハルトの妻の座を狙っている不届き者や、愛人でもいい、それも無理なら一夜のアバンチュールでいいと思っている女は沢山いるの。妻を狙っているのは若い未婚の女で、愛人とアバンチュール狙いの女は既婚者よ。その中でもバーデン伯爵親娘はすごいのよ。父親は公爵家の財産狙い、娘は見目麗しいレオンハルトの後妻に収まる気よ。そのために商談の振りして、レオンハルトにエスコートさせたの。本当にあの男はだまされやすいわ。その上で、あなたの悪い噂を社交界でばらまいているの。たかが伯爵家の娘のくせによ。いい加減にやり返したいの。だからこれは必要な出費だから」
その言葉にユリアは目を丸くする。
「ノンナに聞いたけれど、バーデン伯爵令嬢は領地にまで来て、自分はレオンハルトの恋人だから、さっさと離婚しろと言ってきたそうよ」
「あきれるわね。その不躾さ。伯爵令嬢が公爵夫人にその口の利き方」
「ユリアはその言葉を信じてしまって、離婚の準備をして王都に出てきて、レオンハルトが伯爵令嬢をエスコートする姿を見て諦めたみたいなのよ」
「まさか、今のあなたはそんな女に負けないわよね?」
リリアンヌに言われて、ユリアはにっこりとほほえんだ。
「もちろんですわ。やり返してやらないと気が済まないわ」
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