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しおりを挟む「それは当然……」
「お話中申し訳ありません。お客様方が客間で待たれているのですが…」
レオンハルトの言葉を扉前にいたマルコの声が遮る。
「あら、早く行かないとね。ユリアの採寸だからユリア行きましょう」
リリアンヌはユリアに腕を差し伸べて歩き出す。
「私達はここで待ってるべきかい?」
クラウスが妻に声を掛けると、リリアンヌは笑いながら言った。
「クラウスが戦力にならないことはわかってるわ。ここでレオンハルトと話でもしてて。バーデン伯爵親娘の撃退方法でも話し合っていて」
リリアンヌに伴われて、客間に向かおうとすると、レオンハルトがユリアに駆け寄って、何事か耳元で囁いた。
客間の扉まで行く間に、リリアンヌがユリアに聞いた。
「レオンハルトはなんと言ったの?」
「薔薇は99本渡したいって」
「そう、永遠の愛ねぇ。ユリア、レオンハルトの事信じているの?」
リリアンヌがユリアを見つめて言った。ユリアは少し考えて返事をした。
「あの人の言葉にどのくらい信憑性があるか、今のところ判断できる材料は少ないです。だから信じてはいないけれど、無碍にするつもりもない。そんなところです。過去にあの人がした事は、今の私が忘れてるからと言って、無かったことにはできない。そんなことしたら、過去に苦しんだユリアに申し訳ない。だからあの人が言葉だけじゃなくて、態度で示すことが、この先、私があの人を信じられるかどうかの判断材料だと思います」
リリアンヌが一歩下がって、ユリアを眺めた。
「本当に別人よ。あなた、前のあなただったらレオンハルトの言葉に耳を塞いで、ひたすら信じずに自分を卑下しただけだったと思うわ。そんなに客観的に自分達を見られないはずよ。どれだけ私達がユリアは優秀で、そんなに卑下するような容姿じゃないって言っても、信じてくれなかったの」
話してるうちに扉前に立っていた。マルコが開けてくれると、そこにはスラリと長身のマダムと若い女性がいた。
「これはエーレンフェスト侯爵夫人。ご無沙汰しております」
「こちらが私の義妹のアイレンベルグ公爵夫人、夜会用のドレスをいくつかあつらえるつもりよ」
「はじめまして。エーレンフェスト侯爵夫人にご贔屓いただいております、メゾン・ド・ドレスデンのデザイナーのオリガ・ドレスデンと申します」
「彼女はドレスデン子爵夫人なの。働く女性よ」
「ユリア・アイレンベルグです。よろしくお願いしますわ。地味な容姿ですからデザインもありきたりなドレスが多くて」
「まあ、公爵夫人、地味などではありませんわ。世の女性の垂涎の的のプロポーションをお持ちですわ」
思いもよらない部分を褒められて、ユリアはびっくりした。
「今は身体の線をいやらしくなく出すマーメイドラインが流行り始めています。いかがですか」
さっそくその場でデッサンを始めるドレスデン夫人をそのままにして、今まで黙っていた若い女性が進み出た。
「御前失礼致します。私はお針子のモリーと申します。採寸をさせて頂きます」
近寄ってきて、テキパキとユリアを下着姿にして、メジャーを出して、身体中の採寸を始める。いつのまにかリリアンヌもオリガが描き散らかすデッサン画に注文をつけ始めていた。
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