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第二部
2
「国王逝去の報にクラリッサは顔色を変えて帰国した」
「後ろ盾の父親が居なくなったらどうなるか、流石にわかっていたと言うことでしょうか」
ユリウスはニヤリと笑って言った。こう言うところはシスコンに見えないなーと思うジークハルト。
「はずれ 遺産だよ。ボーウ王国は王位は王太子が嗣ぎ、国王の公的な王族の財産も王太子が継ぐ。だが国王の私的財産は正統な妻である王妃と庶子以外の子供達が相続する。子供は四人。王妃が産んだ王太子と王女が二人に側妃が産んだクラリッサ。いち早く帰国して少しでも自分に多く相続できるように動こうとしたんだよ。ところが」
「ところが?」
「帰国したら元の婚約者の伯爵令息が婚約解消された前婚約者と婚姻していたことを知って怒り狂った。目先のことしか見えないタイプなんだ。クラリッサにとって伯爵令息は自分を慕って泣き暮らしていなければいけない存在だった。それなのにクラリッサに婚約解消されて一ヶ月で結婚しているからな」
「よほどまたクラリッサに言い寄られたくなかったのですね」
気持ちはわかる。
「と言うか、前婚約者を愛していたのだろう。婚約者を害すると脅され、国王の命令で仕方なく婚約を解消したんだ。クラリッサから婚約を破棄すると言われて飛び上がって喜んだらしい」
そこまで愛する人がいるのは羨ましい。
「クラリッサは伯爵令息の妻を誘拐して娼館に売り飛ばそうとしたが自分の手足になる駒が少なくて、毒殺に舵を切ったが兄の王太子がずっと監視していたので、毒を盛る前に発覚したらしい」
「することが過激ですね。妻が居なくなってもクラリッサを愛してくれるわけでもないに」
「そうだな。愛は奪うものでなく、与えるものだから」
ユリウスがしみじみ言うのを聞いて、ジークハルトはユリウスが愛を語るなんて!と思うのであった。
「クラリッサの企みに気がついて、王太子に知らせて止めたのが王妃所生の第一王女だそうだ」
「第一王女はクラリッサの味方じゃないのですね」
「それで第一王女配下に証拠を取り押さえられて、監禁されそうになって、クラリッサは慌ててスターリン伯爵の次男の口車に乗って出国したんだ。ま、この国の王族はそんな感じだ。知識として知っていてくれ」
雑談だと思って軽く聞いていました。そんな事を話している内に指定された迎賓館に着いた。馬車を降りて荷物を従者に任せて、玄関に向かった。外国の賓客が泊まる迎賓館が与えられた宿泊場所だ。外国の賓客用だけあって建物は彫刻が施され格調高く広い。だが、なんとなく暗くて整備されていない印象がある。そんな風に思っていたら、前方から声が掛かった。
「ボーウ王国においでくださりありがとうございます」
玄関ホールの内外には騎士達が剣を捧げてずらりと並び、大柄な騎士の中に小柄だが凛とした印象の姿勢をぴんと伸ばした女性がいた。美人ではないが清潔で品が匂い立つ人だ。
「ボーウ王国国王の王妹のルイーザでございます」
ユリウスとジークハルト達もさっと片膝をついた。
「これは王妹殿下にあらせられますか。私はウーラント国の全権大使 ユリウス・ハーケンと申します」
ジークハルトも進み出て
「随行員のジークハルト・ブリーゲルでございます」
と挨拶する。ユリウスも容姿端麗だが、ジークハルトも見かけは一級品なので、ルイーザ王女の後ろに控える女性達はため息を漏らした。言ってなかったが我が国はウーラントと言う。うん?誰に言い訳してるのかと思うジークハルト。
「この国に皆様がおいでの間、私が対応させていただきます。行き届かないところはご遠慮なくお申し出下さい。今日はお疲れでしょうから夕食までお部屋でごゆっくりお過ごし下さい。国王への拝謁は明日予定しております。明日時間になりましたらお迎えに参ります」
クラリッサと半分でも血が繋がってるとは思えないしっかりとした王女だった。
ルイーザ王女の言葉に甘え、一行はそれぞれの部屋に案内された。
ジークハルトも持参の荷物を自分の従者に片付けさせて埃っぽい自身の服を着替えて、ソファでお茶を飲み寛いでいたら、ノックの音がした。
「ジークハルト 着替えたか」
ユリウスが下位貴族程度の服装で茶色の鬘を被って入って来た。
「ユリウス様 その服装はどのような意図ですか」
「ジークハルトもちゃんと見るようになったな。これを着てくれ」
ユリウスの意図がわからないがとりあえず言う通りに渡された服に着替えた。これはエマ=エールに会いに行っていた頃の服装だなと自嘲の気持ちが迫り上がってきた。そこにポイっと鬘を渡された。
「これを付けてくれ」
二人とも見事な金髪だが、渡された茶色の髪の鬘に髪を押し込んだ。
「なるべく前髪を顔に垂らしてくれ」
そう言って、従者達に『誰か尋ねて来たら疲れて休んでいると断ってくれ』と命じた。 『何かあるといけないから』とユリウスに渡されたものは剣帯と剣だった。
「使えるな」
ユリウスに見つめられて、これはと思うジークハルト。
「子供の頃から鍛錬しておりますので一応は使えます」
「そうか では行こう」
どこに行くのかなんとなく不安げなジークハルトだった。二人が準備をして室外に出ると国から同行した騎士が二人同じような服装で待っていた。
「後ろ盾の父親が居なくなったらどうなるか、流石にわかっていたと言うことでしょうか」
ユリウスはニヤリと笑って言った。こう言うところはシスコンに見えないなーと思うジークハルト。
「はずれ 遺産だよ。ボーウ王国は王位は王太子が嗣ぎ、国王の公的な王族の財産も王太子が継ぐ。だが国王の私的財産は正統な妻である王妃と庶子以外の子供達が相続する。子供は四人。王妃が産んだ王太子と王女が二人に側妃が産んだクラリッサ。いち早く帰国して少しでも自分に多く相続できるように動こうとしたんだよ。ところが」
「ところが?」
「帰国したら元の婚約者の伯爵令息が婚約解消された前婚約者と婚姻していたことを知って怒り狂った。目先のことしか見えないタイプなんだ。クラリッサにとって伯爵令息は自分を慕って泣き暮らしていなければいけない存在だった。それなのにクラリッサに婚約解消されて一ヶ月で結婚しているからな」
「よほどまたクラリッサに言い寄られたくなかったのですね」
気持ちはわかる。
「と言うか、前婚約者を愛していたのだろう。婚約者を害すると脅され、国王の命令で仕方なく婚約を解消したんだ。クラリッサから婚約を破棄すると言われて飛び上がって喜んだらしい」
そこまで愛する人がいるのは羨ましい。
「クラリッサは伯爵令息の妻を誘拐して娼館に売り飛ばそうとしたが自分の手足になる駒が少なくて、毒殺に舵を切ったが兄の王太子がずっと監視していたので、毒を盛る前に発覚したらしい」
「することが過激ですね。妻が居なくなってもクラリッサを愛してくれるわけでもないに」
「そうだな。愛は奪うものでなく、与えるものだから」
ユリウスがしみじみ言うのを聞いて、ジークハルトはユリウスが愛を語るなんて!と思うのであった。
「クラリッサの企みに気がついて、王太子に知らせて止めたのが王妃所生の第一王女だそうだ」
「第一王女はクラリッサの味方じゃないのですね」
「それで第一王女配下に証拠を取り押さえられて、監禁されそうになって、クラリッサは慌ててスターリン伯爵の次男の口車に乗って出国したんだ。ま、この国の王族はそんな感じだ。知識として知っていてくれ」
雑談だと思って軽く聞いていました。そんな事を話している内に指定された迎賓館に着いた。馬車を降りて荷物を従者に任せて、玄関に向かった。外国の賓客が泊まる迎賓館が与えられた宿泊場所だ。外国の賓客用だけあって建物は彫刻が施され格調高く広い。だが、なんとなく暗くて整備されていない印象がある。そんな風に思っていたら、前方から声が掛かった。
「ボーウ王国においでくださりありがとうございます」
玄関ホールの内外には騎士達が剣を捧げてずらりと並び、大柄な騎士の中に小柄だが凛とした印象の姿勢をぴんと伸ばした女性がいた。美人ではないが清潔で品が匂い立つ人だ。
「ボーウ王国国王の王妹のルイーザでございます」
ユリウスとジークハルト達もさっと片膝をついた。
「これは王妹殿下にあらせられますか。私はウーラント国の全権大使 ユリウス・ハーケンと申します」
ジークハルトも進み出て
「随行員のジークハルト・ブリーゲルでございます」
と挨拶する。ユリウスも容姿端麗だが、ジークハルトも見かけは一級品なので、ルイーザ王女の後ろに控える女性達はため息を漏らした。言ってなかったが我が国はウーラントと言う。うん?誰に言い訳してるのかと思うジークハルト。
「この国に皆様がおいでの間、私が対応させていただきます。行き届かないところはご遠慮なくお申し出下さい。今日はお疲れでしょうから夕食までお部屋でごゆっくりお過ごし下さい。国王への拝謁は明日予定しております。明日時間になりましたらお迎えに参ります」
クラリッサと半分でも血が繋がってるとは思えないしっかりとした王女だった。
ルイーザ王女の言葉に甘え、一行はそれぞれの部屋に案内された。
ジークハルトも持参の荷物を自分の従者に片付けさせて埃っぽい自身の服を着替えて、ソファでお茶を飲み寛いでいたら、ノックの音がした。
「ジークハルト 着替えたか」
ユリウスが下位貴族程度の服装で茶色の鬘を被って入って来た。
「ユリウス様 その服装はどのような意図ですか」
「ジークハルトもちゃんと見るようになったな。これを着てくれ」
ユリウスの意図がわからないがとりあえず言う通りに渡された服に着替えた。これはエマ=エールに会いに行っていた頃の服装だなと自嘲の気持ちが迫り上がってきた。そこにポイっと鬘を渡された。
「これを付けてくれ」
二人とも見事な金髪だが、渡された茶色の髪の鬘に髪を押し込んだ。
「なるべく前髪を顔に垂らしてくれ」
そう言って、従者達に『誰か尋ねて来たら疲れて休んでいると断ってくれ』と命じた。 『何かあるといけないから』とユリウスに渡されたものは剣帯と剣だった。
「使えるな」
ユリウスに見つめられて、これはと思うジークハルト。
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