すまない。私は真実の愛に巡り合ってしまったんだ。君とは白い結婚になる。

ぐう

文字の大きさ
26 / 60
第二部

2

「国王逝去の報にクラリッサは顔色を変えて帰国した」

「後ろ盾の父親が居なくなったらどうなるか、流石にわかっていたと言うことでしょうか」

 ユリウスはニヤリと笑って言った。こう言うところはシスコンに見えないなーと思うジークハルト。

「はずれ 遺産だよ。ボーウ王国は王位は王太子が嗣ぎ、国王の公的な王族の財産も王太子が継ぐ。だが国王の私的財産は正統な妻である王妃と庶子以外の子供達が相続する。子供は四人。王妃が産んだ王太子と王女が二人に側妃が産んだクラリッサ。いち早く帰国して少しでも自分に多く相続できるように動こうとしたんだよ。ところが」

「ところが?」

「帰国したら元の婚約者の伯爵令息が婚約解消された前婚約者と婚姻していたことを知って怒り狂った。目先のことしか見えないタイプなんだ。クラリッサにとって伯爵令息は自分を慕って泣き暮らしていなければいけない存在だった。それなのにクラリッサに婚約解消されて一ヶ月で結婚しているからな」

「よほどまたクラリッサに言い寄られたくなかったのですね」

 気持ちはわかる。

「と言うか、前婚約者を愛していたのだろう。婚約者を害すると脅され、国王の命令で仕方なく婚約を解消したんだ。クラリッサから婚約を破棄すると言われて飛び上がって喜んだらしい」

 そこまで愛する人がいるのは羨ましい。

「クラリッサは伯爵令息の妻を誘拐して娼館に売り飛ばそうとしたが自分の手足になる駒が少なくて、毒殺に舵を切ったが兄の王太子がずっと監視していたので、毒を盛る前に発覚したらしい」

「することが過激ですね。妻が居なくなってもクラリッサを愛してくれるわけでもないに」

「そうだな。愛は奪うものでなく、与えるものだから」

 ユリウスがしみじみ言うのを聞いて、ジークハルトはユリウスが愛を語るなんて!と思うのであった。

「クラリッサの企みに気がついて、王太子に知らせて止めたのが王妃所生の第一王女だそうだ」

「第一王女はクラリッサの味方じゃないのですね」

「それで第一王女配下に証拠を取り押さえられて、監禁されそうになって、クラリッサは慌ててスターリン伯爵の次男の口車に乗って出国したんだ。ま、この国の王族はそんな感じだ。知識として知っていてくれ」

 雑談だと思って軽く聞いていました。そんな事を話している内に指定された迎賓館に着いた。馬車を降りて荷物を従者に任せて、玄関に向かった。外国の賓客が泊まる迎賓館が与えられた宿泊場所だ。外国の賓客用だけあって建物は彫刻が施され格調高く広い。だが、なんとなく暗くて整備されていない印象がある。そんな風に思っていたら、前方から声が掛かった。

「ボーウ王国においでくださりありがとうございます」

 玄関ホールの内外には騎士達が剣を捧げてずらりと並び、大柄な騎士の中に小柄だが凛とした印象の姿勢をぴんと伸ばした女性がいた。美人ではないが清潔で品が匂い立つ人だ。

「ボーウ王国国王の王妹のルイーザでございます」

 ユリウスとジークハルト達もさっと片膝をついた。

「これは王妹殿下にあらせられますか。私はウーラント国の全権大使 ユリウス・ハーケンと申します」

 ジークハルトも進み出て

「随行員のジークハルト・ブリーゲルでございます」

 と挨拶する。ユリウスも容姿端麗だが、ジークハルトも見かけは一級品なので、ルイーザ王女の後ろに控える女性達はため息を漏らした。言ってなかったが我が国はウーラントと言う。うん?誰に言い訳してるのかと思うジークハルト。

「この国に皆様がおいでの間、私が対応させていただきます。行き届かないところはご遠慮なくお申し出下さい。今日はお疲れでしょうから夕食までお部屋でごゆっくりお過ごし下さい。国王への拝謁は明日予定しております。明日時間になりましたらお迎えに参ります」

 クラリッサと半分でも血が繋がってるとは思えないしっかりとした王女だった。
 ルイーザ王女の言葉に甘え、一行はそれぞれの部屋に案内された。
 ジークハルトも持参の荷物を自分の従者に片付けさせて埃っぽい自身の服を着替えて、ソファでお茶を飲み寛いでいたら、ノックの音がした。

「ジークハルト 着替えたか」

 ユリウスが下位貴族程度の服装で茶色の鬘を被って入って来た。

「ユリウス様 その服装はどのような意図ですか」

「ジークハルトもちゃんと見るようになったな。これを着てくれ」

 ユリウスの意図がわからないがとりあえず言う通りに渡された服に着替えた。これはエマ=エールに会いに行っていた頃の服装だなと自嘲の気持ちが迫り上がってきた。そこにポイっと鬘を渡された。

「これを付けてくれ」

 二人とも見事な金髪だが、渡された茶色の髪の鬘に髪を押し込んだ。

「なるべく前髪を顔に垂らしてくれ」

 そう言って、従者達に『誰か尋ねて来たら疲れて休んでいると断ってくれ』と命じた。 『何かあるといけないから』とユリウスに渡されたものは剣帯と剣だった。

「使えるな」

 ユリウスに見つめられて、これはと思うジークハルト。

「子供の頃から鍛錬しておりますので一応は使えます」

「そうか では行こう」

 どこに行くのかなんとなく不安げなジークハルトだった。二人が準備をして室外に出ると国から同行した騎士が二人同じような服装で待っていた。
感想 351

あなたにおすすめの小説

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

「では、ごきげんよう」と去った悪役令嬢は破滅すら置き去りにして

東雲れいな
恋愛
「悪役令嬢」と噂される伯爵令嬢・ローズ。王太子殿下の婚約者候補だというのに、ヒロインから王子を奪おうなんて野心はまるでありません。むしろ彼女は、“わたくしはわたくしらしく”と胸を張り、周囲の冷たい視線にも毅然と立ち向かいます。 破滅を甘受する覚悟すらあった彼女が、誇り高く戦い抜くとき、運命は大きく動きだす。

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。 けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。 それでも旦那様は優しかった。 冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。 だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。 そんなある日、彼女は知ってしまう。 旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。 彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。 都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る 静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。 すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。 感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく

婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓
恋愛
 子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。  激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。  婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。  婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。  翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。