すまない。私は真実の愛に巡り合ってしまったんだ。君とは白い結婚になる。

ぐう

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第二部

6

 ヒュベックに案内されて奥へ奥へと進んでいく。行き当たったところには騎士が立番をしていた。ヒュベックが声をかけるとすぐ扉を開けてくれた。

「ここから王族の私的スペースになります。本来なら外国からの賓客は迎賓館に泊まっていただき、拝謁に王宮に出てきていただくのが普通です。ですが…」

「迎賓館はとても客をもてなす状態でなかったな」

 ユリウスが口を挟む。ヒュベックは嫌な顔もせずに話を続ける。

「ルイーザ王女が使節団のもてなしに立候補したのです。手配をして迎賓館を整えるためになけなしの予算も振り当てました…」

「整えたなどとどの口が言う。使用人も料理人も門番も居ないなどと襲いたい奴らにチャンスを与えるためにしているとしか思えない。これは国際問題です」

 きっぱりユリウスが言い切るとヒュベックは頭下げた。

「誠に申し訳ありません。その通りです。国王の指示で今ルイーザ王女を尋問しています。襲ったやつらの黒幕も探っています。国王からも話がありますので」

 そう言ってある部屋の前で立ち止まり、扉の前にいる騎士に声をかけて中にも声をかけた。中から侍従が扉を開けて、ユリウス一行を招き入れた。
 ユリウスとそう歳が変わらないだろう国王がそこにいた。

「この度はクラリッサがご迷惑をかけただけでなく、危険にさらして仕舞い誠に申し訳ない」

 一国の国王が我らに頭を下げるとは!ジークハルトはびっくりして声もないがユリウスは冷静に言った。

「本来なら国王陛下に頭を下げさせるなんてというべきでしょうが、今回のことでは私どもは怒りを抑えられません。我らはただの客ではありません。使節団なのです。クラリッサは我が国の王太子の執務室に斧で押し入ったのです。王太子殺人未遂です。その上で王太子妃になりたくて我が国の貴族と手を組んで無礼な振る舞いをした。そして今度はルイーザ王女が我らを襲える様に迎賓館の使用人を引き上げさせた。これは謝罪程度で済ますことはできません。この国の王族はどうなってるのですか」

 おおそこまで言い切るのか。自分にクラリッサが言い寄って来たことは黙っていてくれてよかったーと思った。国王は顔色悪くうなだれた。国王がそんなでいいのかとジークハルトですら心配になった。

「その通りだ。ルイーザについては今尋問中だが、あなた方を亡き者にして、戦争に持ち込もうと企む貴族がいるのはこちらでもわかっている。国力が落ちているのに戦争など無謀でしかないのに何を考えているのか」


「この国は国力の割に兵が多いのは前国王の方針だったと聞きました。兵が多くとも補給はどうするつもりですか。この国は飢饉のあとで食糧が乏しい。補給部隊には食糧は行き届かないでしょう。我が国に押し入った先で掠奪を繰り返していくつもりですか。押し入らせないだけの軍事力は我が国にもあることを計算に入れていませんが」

「そんなところまでご存知なのですか。国王の私が貴族を抑えられないのが原因です」

 そこにヒュベックが国王の側に来て言った。

「お話中ですがエレーナ王女がいらっしゃいました」

「失礼いたします。私は王妹のエレーナと申します」

 そう言って入室してきた王女は王女にしては地味な服装で落ち着いた女性だった。また王妹、前の二人が酷かったので期待はすまい。

「警備を厳しくできるのはこの王家の私的スペースなので、使節団にはこちらに宿泊していただきます。本来ならここでは私の妻が応対すべきでしょうが、おりませんので末の妹のエレーナが応対いたします」

「いない?」

 ジークハルトがついうっかりと声を漏らしてしまった。国王は苦笑いしながら

「王太子妃はおりましたが元々父の派閥の貴族の娘との政略結婚で上手くいっておりませんでした。自身が即位するにあたり離縁しました。白い結婚でしたので離縁と言っても解消ですが、王妃になれるならとごねられたので白い結婚を証明して解消しました」

 この国の王族は幸せそうな人はいないなと思ったジークハルトの頭の中にはミケーレと王太子のイチャイチャがポンっと浮かんだ。えらい違いだ。国王はユリウスを見て

「実は妹御も私の後妻候補に上がっていたのですよ」

 と言ったらユリウスは実に嫌そうな顔をした。

「この国は政略結婚が主流ですので、妹には無理です」

「そうですね。あなた方の国が羨ましくも妬ましいです」

「国王陛下 まず使節団の方々をお部屋に案内していいですか。もう支度させてあります」

 途中でエレーナが言葉を挟んだ。

「朝食の支度も出来ております。使節団の他の方にはもう召し上がっていただいています。騎士の方々にも交代でご案内しています。皆様も食堂に先にご案内いたします」

 エレーナは微笑んでそう言った。おや?この人はまともそう?いやもう二人外れているので期待はすまい。夕食も軽かったし、流石に空腹なのでエレーナに従って食堂に向かった。

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