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第二部
8
「ありません!何もありません!ただ戦争になどしたくない。意味のない人死は嫌なんです!」
碧い綺麗な瞳からぼろぼろと涙が落ちてくる。泣いているのにその綺麗な瞳に見惚れてしまう。エレーナは唇を噛み締めてきっと前を向いた。その姿にジークハルトは胸が高鳴った。なんて健気な姿なんだと……思わずポケットに入っていたハンカチをエレーナに差し出した。でもエレーナは首を振り自分のドレスの隠しポケットからハンカチを出し涙がゴシゴシ拭いた。あまりに強く拭いたので目の周りが赤くなっていた。
「大丈夫ですか?」
ジークハルトがおずおずと尋ねると
「大丈夫です。泣くなんて女の武器で泣き落としているみたいですね。この願いはウーラントに取ってなんの利益もありません。分かっています。でもほかに頼る人がいないのです」
そう言ってエレーナは姿勢を正してユリウスをじっと見た。ジークハルトはその姿を見て『自分を見てほしい!』と強く思った。あれ?女はこりごりだったはずではと自問自答するが……心惹かれることには逆らえない!などとジークハルトの心の中が嵐が吹き荒れているとユリウスが口を開いた。
「よくわかってらっしゃった上で我が国に頼りたいとおっしゃるのですね。でしたら一王女でしかないあなたでなく国王陛下ときちんと取り決めしたいですね」
冷たい!とジークハルトは思ったが、国と国との話し合いだったら当たり前か。もう少しでユリウスに抗議するところだった。危なかった。そこにノックの音が響いた。従者が扉を開けてやってきた人物に対応した。従者が渡された封筒をユリウスに手渡した。
「失礼」
と言って渡された手紙に目を通す。そしてエレーナに向かって
「こちらの手のものから報告がありました。早速国王陛下と話してきます。カール」
従者を呼んだ。
「国王陛下に面会を求めて来てくれ」
「私が国王の元に行くことになっています。一緒について来て下さい」
そう言うエレーナを見てから、ユリウスがジークハルトに振り返り手に持っている手紙を渡す。さっと開いて中を読むとルイーザ王女が拘束されたことにより前国王派=側妃の父親の侯爵の手のものが密かに私兵を集めているとあった。裏から操るのでなく、クーデターを起こすつもりかとジークハルトは思ったが声に出さずにエレーナに従って、ユリウスとオットーと共に国王に会いに足を運んだ。
国王の私室にはバタバタと人が出入りしていた。エレーナがそれを見て国王の私室に駆け込んだ。
「お兄様、何がありましたか」
「エレーナか。ルイーザが押し込められていた部屋から連れ去られた」
「それは無理矢理ですか?自ら付いて行ったのですか?」
「報告では自ら付いて行ったと言うことだ」
「お姉様。なんて愚かな……」
「失礼します。我らの手のものから侯爵が私兵を集めていると報告がありました。侯爵側はルイーザ王女を旗頭にするつもりなのでは?」
ユリウスが部屋の扉をきちんと閉められたことを確認してそう言った。
「お姉様は麻薬中毒にされていて逆らえないのではないでしょうか」
「いや。エレーナがルイーザを信じたい気持ちはわかるが、先程迎賓館から拘束されて戻ってきた時に私が会ったがが、亡くなった父の様に目が虚ろでもなかったし、しゃんとしていた。麻薬を服用している恐れはないだろう」
国王の言葉にエレーナは唇を噛んでいた。
「本人の意思であろうとなかろうと王族を旗印になどされては面倒です。近衛以外に我らの騎士団を動かされてはいかがですか?本拠地は我らの密偵が突き止めてあります」
国王とエレーナは希望を見つけた様にこちらを見た。
「…但し、我が国の情報と騎士達を貸すのです。見返りをいただきましょう」
ジークハルトは悪役ーーー悪役がここにいるーーーと思ったが賢明にも口には出さなかった。
「どの様なことでしょう」
青い顔で国王がこちらを見る。
「食糧不足で難民が我が国の国境を越えようと追い返しても追い返してもやって来ます。入り込まれて治安が悪化して困っています。今回の使節団の交渉の主目的です。我が国が援助しますので、ボーウ王国側に難民収容所を作って下さい。難民に仕事を与えますのでそこでしばらく働いて現金を得て元の土地に送り返す。そう言う風に制度化していただきたい
「いや こちらからお願いしたいことです。ありがとうございます。援助までしていただくなどと申し訳ないほどです」
「それでは文官入れて調印致しましょう」
国王が文官を呼ぶために立ち上がった時にエレーナが叫んだ。
「調印よりお姉様を!!」
それをちらりと見てユリウスは言った。
「とっくに指示してあります。報告があったらすぐ出れるようにさっさと調印すませますよ」
エレーナがへたへたと座り込んだ。ジークハルトもこの人凄すぎと思った。
碧い綺麗な瞳からぼろぼろと涙が落ちてくる。泣いているのにその綺麗な瞳に見惚れてしまう。エレーナは唇を噛み締めてきっと前を向いた。その姿にジークハルトは胸が高鳴った。なんて健気な姿なんだと……思わずポケットに入っていたハンカチをエレーナに差し出した。でもエレーナは首を振り自分のドレスの隠しポケットからハンカチを出し涙がゴシゴシ拭いた。あまりに強く拭いたので目の周りが赤くなっていた。
「大丈夫ですか?」
ジークハルトがおずおずと尋ねると
「大丈夫です。泣くなんて女の武器で泣き落としているみたいですね。この願いはウーラントに取ってなんの利益もありません。分かっています。でもほかに頼る人がいないのです」
そう言ってエレーナは姿勢を正してユリウスをじっと見た。ジークハルトはその姿を見て『自分を見てほしい!』と強く思った。あれ?女はこりごりだったはずではと自問自答するが……心惹かれることには逆らえない!などとジークハルトの心の中が嵐が吹き荒れているとユリウスが口を開いた。
「よくわかってらっしゃった上で我が国に頼りたいとおっしゃるのですね。でしたら一王女でしかないあなたでなく国王陛下ときちんと取り決めしたいですね」
冷たい!とジークハルトは思ったが、国と国との話し合いだったら当たり前か。もう少しでユリウスに抗議するところだった。危なかった。そこにノックの音が響いた。従者が扉を開けてやってきた人物に対応した。従者が渡された封筒をユリウスに手渡した。
「失礼」
と言って渡された手紙に目を通す。そしてエレーナに向かって
「こちらの手のものから報告がありました。早速国王陛下と話してきます。カール」
従者を呼んだ。
「国王陛下に面会を求めて来てくれ」
「私が国王の元に行くことになっています。一緒について来て下さい」
そう言うエレーナを見てから、ユリウスがジークハルトに振り返り手に持っている手紙を渡す。さっと開いて中を読むとルイーザ王女が拘束されたことにより前国王派=側妃の父親の侯爵の手のものが密かに私兵を集めているとあった。裏から操るのでなく、クーデターを起こすつもりかとジークハルトは思ったが声に出さずにエレーナに従って、ユリウスとオットーと共に国王に会いに足を運んだ。
国王の私室にはバタバタと人が出入りしていた。エレーナがそれを見て国王の私室に駆け込んだ。
「お兄様、何がありましたか」
「エレーナか。ルイーザが押し込められていた部屋から連れ去られた」
「それは無理矢理ですか?自ら付いて行ったのですか?」
「報告では自ら付いて行ったと言うことだ」
「お姉様。なんて愚かな……」
「失礼します。我らの手のものから侯爵が私兵を集めていると報告がありました。侯爵側はルイーザ王女を旗頭にするつもりなのでは?」
ユリウスが部屋の扉をきちんと閉められたことを確認してそう言った。
「お姉様は麻薬中毒にされていて逆らえないのではないでしょうか」
「いや。エレーナがルイーザを信じたい気持ちはわかるが、先程迎賓館から拘束されて戻ってきた時に私が会ったがが、亡くなった父の様に目が虚ろでもなかったし、しゃんとしていた。麻薬を服用している恐れはないだろう」
国王の言葉にエレーナは唇を噛んでいた。
「本人の意思であろうとなかろうと王族を旗印になどされては面倒です。近衛以外に我らの騎士団を動かされてはいかがですか?本拠地は我らの密偵が突き止めてあります」
国王とエレーナは希望を見つけた様にこちらを見た。
「…但し、我が国の情報と騎士達を貸すのです。見返りをいただきましょう」
ジークハルトは悪役ーーー悪役がここにいるーーーと思ったが賢明にも口には出さなかった。
「どの様なことでしょう」
青い顔で国王がこちらを見る。
「食糧不足で難民が我が国の国境を越えようと追い返しても追い返してもやって来ます。入り込まれて治安が悪化して困っています。今回の使節団の交渉の主目的です。我が国が援助しますので、ボーウ王国側に難民収容所を作って下さい。難民に仕事を与えますのでそこでしばらく働いて現金を得て元の土地に送り返す。そう言う風に制度化していただきたい
「いや こちらからお願いしたいことです。ありがとうございます。援助までしていただくなどと申し訳ないほどです」
「それでは文官入れて調印致しましょう」
国王が文官を呼ぶために立ち上がった時にエレーナが叫んだ。
「調印よりお姉様を!!」
それをちらりと見てユリウスは言った。
「とっくに指示してあります。報告があったらすぐ出れるようにさっさと調印すませますよ」
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