39 / 60
第二部
15
そして母国への帰還前日の夜更け。
ジークハルトの自室の前で男女が潜めた声で言い争う声がする。
「お…く…い」
「は…て」
「だめ…も…」
「だ…」
「犠牲に…」
なにを言ってるのかさっぱりだが、ジークハルトの自室で最後の夜に何かあるだろうと待っていたユリウスとジークハルトは扉を大きく開けてみた。開けてみたらそこにはダンドリーとエレーナがいた。ダンドリーはエレーナの腕を掴んでいた。エレーナは王女なのに寝間着にガウンと言う淑女としてはあり得ない姿だった。
扉が開いてエレーナとダンドリーは驚愕で目を丸くしていた。
「おや 意外な人もいるけれど、何か御用ですか?こんな夜更けに。我らは明日朝出立ですので睡眠時間を削られたくないのですが」
おお!悪役令息ユリウス最高潮!と心の中で拍手するジークハルト。
ダンドリーがエレーナを後ろに庇って
「うるさくして申し訳ありませんでした。なんでもありません。失礼します」
と言ってエレーナの腕を掴んだままで立ち去ろうとする。エレーナはダンドリーに掴まれた腕を無理矢理振り解き、ジークハルトの方に向かってきた。
「ブリーゲル伯爵 私と結婚してください!」
ジークハルトに抱きつこうとしたが、ジークハルトはさっと避けた。エレーナは勢いが付いて転がりそうになったがダンドリーが抱き止めた。
「奇妙なプロポーズですね。この国は夜更けにそんな格好で女性がプロポーズするのが流行りなんですか」
申し込まれたのはジークハルトなのに悪役令息ユリウスが返事をした。
「エレーナ王女殿下止めて下さい。御身を犠牲にするのはやめて下さい」
え、なんですか。私と結婚するのは自身を犠牲にする事だと?失礼だなーーーとムカつくジークハルト。
「でもダンドリー。ウーラントに援助をしてもらわないとこの国はやっていけないわ。難民保護への援助だけじゃ足りないわ」
なんか図々しいな。またもムカつくジークハルト。
「ジークハルトと結婚するとなぜ援助してもらえると思ったのですか」
悪役令息ユリウスが冷たい顔で言った。ジークハルトのことなのに全部ユリウスおまかせでいいのか!
「ウーラントの王族の適齢期の男性は王太子殿下だけですが、先日結婚されてしまった。だったら側近の方と結婚すればウーラントから援助してもらえる」
エレーナは震える声で言った。ダンドリーがエレーナを抱きしめて
「それで私を捨てると言うのですか!」
あのー痴話喧嘩?なんだか知りませんが人の部屋の前では止めて下さい。
「だって だって ルイーザが王女で無くなったら私が我が国のために政略結婚しなくちゃだめでしょう?」
「あなたが犠牲になる必要はありません!」
エレーナとダンドリーが手を握りあって見つめ合ってる。
「あーはいはいもう馬鹿らしい。側近が王女を娶ったとしても援助なんてそんなことで決めません。我が国の国王陛下と王太子殿下は情に左右されません。援助しても見返りがある事業や施策を持ってきて下さい。我が国に利が有れば援助もありえます」
ジークハルトにはっきり言われてエレーナはようやくジークハルトを見る事にしたようだ。
「駄目なんですか?」
「駄目ですね」
ジークハルトに突き放されて、エレーナはダンドリーの腕の中でぐったりした。
「ジークハルトの言う通りです。援助目当てで夜這いを掛けるなんて、冷静さをかいていますよ」
他国の王族に散々な言い方だがダンドリーはエレーナを抱きしめて
「申し訳ありませんでした。国を思う気持ちが強い方で一途に援助をと思い詰めてしまって。どうかこの事は御内密にお願いします」
と言い訳をした。言い訳としか思えないよ。
「我が国を軽く観ていらしたようですので恋人のあなたからも諭しておいて下さい。この事は国王に報告しませんのでさっさとお帰りください」
そう言ってユリウスは扉を閉じた。
「国王に報告した方がいいのでは?」
ジークハルトがそう言うとユリウスはふっと笑った。
「ここは王族のプライベートな居住部分だ。我らは声を潜めなかったからあの二人も釣られて声が大きくなっていた。私達が国王に報告しなくても、すぐに国王に報告が上がるさ。あの二人が秘密にしていたとしても、これで明るみにでるんだ。国王もエレーナを我が国に嫁がせたいと思ってたとしても、我々がこの件を知っている限り言い出せないだろう。面倒が減って助かるな」
「婚約者がいても恋人がいて、婚約者がいなくなったら恋人を捨てて政略結婚をしようなんてなんだかなぁ」
ベッドに腰を掛けながらジークハルトがぼやくと
「まあ女心はジークハルトでは察する事はできないな。悲劇のヒロインになったつもりでジークハルトに嫁いで来るつもりだったのだろう」
とユリウスが言った。ええーー自分は悲劇のヒロインになって我慢しないと結婚できない相手に見えたんだーーーショックである。
ジークハルトの自室の前で男女が潜めた声で言い争う声がする。
「お…く…い」
「は…て」
「だめ…も…」
「だ…」
「犠牲に…」
なにを言ってるのかさっぱりだが、ジークハルトの自室で最後の夜に何かあるだろうと待っていたユリウスとジークハルトは扉を大きく開けてみた。開けてみたらそこにはダンドリーとエレーナがいた。ダンドリーはエレーナの腕を掴んでいた。エレーナは王女なのに寝間着にガウンと言う淑女としてはあり得ない姿だった。
扉が開いてエレーナとダンドリーは驚愕で目を丸くしていた。
「おや 意外な人もいるけれど、何か御用ですか?こんな夜更けに。我らは明日朝出立ですので睡眠時間を削られたくないのですが」
おお!悪役令息ユリウス最高潮!と心の中で拍手するジークハルト。
ダンドリーがエレーナを後ろに庇って
「うるさくして申し訳ありませんでした。なんでもありません。失礼します」
と言ってエレーナの腕を掴んだままで立ち去ろうとする。エレーナはダンドリーに掴まれた腕を無理矢理振り解き、ジークハルトの方に向かってきた。
「ブリーゲル伯爵 私と結婚してください!」
ジークハルトに抱きつこうとしたが、ジークハルトはさっと避けた。エレーナは勢いが付いて転がりそうになったがダンドリーが抱き止めた。
「奇妙なプロポーズですね。この国は夜更けにそんな格好で女性がプロポーズするのが流行りなんですか」
申し込まれたのはジークハルトなのに悪役令息ユリウスが返事をした。
「エレーナ王女殿下止めて下さい。御身を犠牲にするのはやめて下さい」
え、なんですか。私と結婚するのは自身を犠牲にする事だと?失礼だなーーーとムカつくジークハルト。
「でもダンドリー。ウーラントに援助をしてもらわないとこの国はやっていけないわ。難民保護への援助だけじゃ足りないわ」
なんか図々しいな。またもムカつくジークハルト。
「ジークハルトと結婚するとなぜ援助してもらえると思ったのですか」
悪役令息ユリウスが冷たい顔で言った。ジークハルトのことなのに全部ユリウスおまかせでいいのか!
「ウーラントの王族の適齢期の男性は王太子殿下だけですが、先日結婚されてしまった。だったら側近の方と結婚すればウーラントから援助してもらえる」
エレーナは震える声で言った。ダンドリーがエレーナを抱きしめて
「それで私を捨てると言うのですか!」
あのー痴話喧嘩?なんだか知りませんが人の部屋の前では止めて下さい。
「だって だって ルイーザが王女で無くなったら私が我が国のために政略結婚しなくちゃだめでしょう?」
「あなたが犠牲になる必要はありません!」
エレーナとダンドリーが手を握りあって見つめ合ってる。
「あーはいはいもう馬鹿らしい。側近が王女を娶ったとしても援助なんてそんなことで決めません。我が国の国王陛下と王太子殿下は情に左右されません。援助しても見返りがある事業や施策を持ってきて下さい。我が国に利が有れば援助もありえます」
ジークハルトにはっきり言われてエレーナはようやくジークハルトを見る事にしたようだ。
「駄目なんですか?」
「駄目ですね」
ジークハルトに突き放されて、エレーナはダンドリーの腕の中でぐったりした。
「ジークハルトの言う通りです。援助目当てで夜這いを掛けるなんて、冷静さをかいていますよ」
他国の王族に散々な言い方だがダンドリーはエレーナを抱きしめて
「申し訳ありませんでした。国を思う気持ちが強い方で一途に援助をと思い詰めてしまって。どうかこの事は御内密にお願いします」
と言い訳をした。言い訳としか思えないよ。
「我が国を軽く観ていらしたようですので恋人のあなたからも諭しておいて下さい。この事は国王に報告しませんのでさっさとお帰りください」
そう言ってユリウスは扉を閉じた。
「国王に報告した方がいいのでは?」
ジークハルトがそう言うとユリウスはふっと笑った。
「ここは王族のプライベートな居住部分だ。我らは声を潜めなかったからあの二人も釣られて声が大きくなっていた。私達が国王に報告しなくても、すぐに国王に報告が上がるさ。あの二人が秘密にしていたとしても、これで明るみにでるんだ。国王もエレーナを我が国に嫁がせたいと思ってたとしても、我々がこの件を知っている限り言い出せないだろう。面倒が減って助かるな」
「婚約者がいても恋人がいて、婚約者がいなくなったら恋人を捨てて政略結婚をしようなんてなんだかなぁ」
ベッドに腰を掛けながらジークハルトがぼやくと
「まあ女心はジークハルトでは察する事はできないな。悲劇のヒロインになったつもりでジークハルトに嫁いで来るつもりだったのだろう」
とユリウスが言った。ええーー自分は悲劇のヒロインになって我慢しないと結婚できない相手に見えたんだーーーショックである。
あなたにおすすめの小説
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
「では、ごきげんよう」と去った悪役令嬢は破滅すら置き去りにして
東雲れいな
恋愛
「悪役令嬢」と噂される伯爵令嬢・ローズ。王太子殿下の婚約者候補だというのに、ヒロインから王子を奪おうなんて野心はまるでありません。むしろ彼女は、“わたくしはわたくしらしく”と胸を張り、周囲の冷たい視線にも毅然と立ち向かいます。
破滅を甘受する覚悟すらあった彼女が、誇り高く戦い抜くとき、運命は大きく動きだす。
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません
黒木 楓
恋愛
子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。
激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。
婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。
婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。
翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。