すまない。私は真実の愛に巡り合ってしまったんだ。君とは白い結婚になる。

ぐう

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第二部

16



 次の日の早朝 使節団は全ての仕事を終わらせて帰国の途に着く。見送りには国王だけでエレーナの姿は無かった。帰りは前国王派の残党の襲撃があるかもしれないために、ダンドリーが率いる近衛騎士団が国境まで護衛する事になった。ユリウスとジークハルトも襲撃に備えて剣を携え騎乗の人になった。

 王都を出る辺りで、ダンドリーがジークハルトの方に馬首をめぐらして近づいて来た。

「昨夜は失礼いたしました」

 本当に失礼だよなーと思ったがまさかそのまま言えないと思っていたら、隣にくつわを並べていたユリウスが

「本当に失礼でしたね」

 そのまま言うのですか。さすが悪役令息ユリウス!

「お恥ずかしい限りです」

 恥ずかしいなら人前でいちゃつくな!人を当て馬にするんじゃない!

「あれからエレーナ王女殿下に納得してもらえましたか?」

 ジークハルトがそう聞くとダンドリーが情けなさそうに

「あんなにはっきり縁故で援助しないと言われたのに、ウーラントがダメなら援助目当てに他国の王族に嫁ぐと言い出しまして」

 うわー恋人にそんなこと言われてお気の毒。いや気の毒じゃないか。人を当て馬にしたんだから。

「他国の王族にと簡単に言いますが、周辺各国の皇太子や王太子には全員婚約者がいますよ。それ以外の王族なら婚約者のいない人もいるかもしれませんけれど、援助目当て持ち込む縁談に他国も利益を見出せなければ断られるだけだと思いますよ」

 相変わらず辛口なユリウスである。この国は王権が弱まってる上に飢饉による貧困が深刻だ。そんな国から援助することが前提の王女を王妃に据えるとは思えない。ユリウスの言うことが常識なのだが、悲劇のヒロイン化したエレーナには通じない。

「その通りです」

 ダンドリーは思い悩んでる風だ。

「お見送りが済んだら国王陛下にエレーナ王女殿下と呼ばれています。昨夜の騒ぎを誰かが報告したらしくて」

 あんなに騒げばそりゃそうなる。

「それでもエレーナ王女殿下は私との婚姻は受けて下さらない」

 ダンドリーは泣きそうである。ジークハルトは恋人っていても大変なんだなぁと思った。う、うらやましいわけじゃないからね!と強がってみた。ジークハルトは話を変えるために聞いてみた。

「エレーナ王女殿下といつからなのですか?」

「私達兄弟とルイーザ、エレーナ王女は幼馴染なのです。お二人の生母の王妃様は私達の父の妹なので幼い頃から交流がありました」

 従兄弟ということか。そんなに血が近いのに婚姻して子供は大丈夫なのか?我が国ではあまり親族間での婚姻は勧められていない。駄目ではないが。

「前の国王陛下が側妃の宮に入り浸りになってからは、私達の父が先頭立って王妃様とお子様方を守って来たのです。その流れで兄とルイーザ様が婚約をし、エレーナ王女殿下と私も婚約する予定だったのですが、国王陛下が同じ家に王女の降嫁は認められないと言われて、側妃の姪を王太子殿下の婚約者にし、キッシュ侯爵の一派の貴族の息子とエレーナ王女殿下を婚約させたのです」

 確かに同じ家に二人の王女の降嫁は権力の集中になるから望ましくないだろう。

「私達は思い合っていましたからショックでした。でもキッシュ侯爵派のエレーナ王女殿下の婚約者になった男はエレーナ王女に興味が無く、舞踏会でもドレスも装身具も贈って来ず、ファーストダンスが済むとさっさといなくなっていましたから、いつかは婚約破棄できるのではと思っていたのですが、兄がルイーザ様に婚約破棄を突きつける騒ぎを起こしたので、我が家は立場が悪くなりました」

「クラリッサが面白半分にやったことが、ヒュベック公爵家の権力を削いだわけだ」

 ユリウスが淡々と解説した。

「そうです。そのために私とエレーナ王女殿下との婚姻は絶望的になりました。が……」

「前の国王陛下の急逝ですか」

 ユリウスがまたも淡々と切り込む。

「キッシュ侯爵の権力も翳りが出て、エレーナ王女殿下の婚約破棄ができるのではないかと希望を持ってしまったのに……」

「今度はエレーナ王女殿下本人がごね始めたと」

 うーんユリウスの合いの手は実に的確である。まあこれ以上ダンドリーの愚痴を聞いても仕方ないし、エレーナが他国に嫁げるとも思えないのでどうでもいいかとジークハルトは思った。僻んでるわけじゃないからね!と誰かに言い訳するジークハルトであった。
 
 
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